Chris and Cosey 「Songs of Love and Lust」 (\2410)
Thomas Barlett &
Nico Muhly 「Peter Pears: Balinese Ceremonial Music」 \700
2021/06/29: tower.jp
Blackpink 「The Show」 \3221
Danny Elfman 「Big Mess」 \1701
Grace Potter and the Nocturnals 「This Is Somewhere」 \1999
Violeta Parra 「Las Ultimas Composiciones」 \376
Soul Syndicate 「Was, Is & Always」 \2030
Beth Gibbons & Rustin Man 「Out of Season」 \650
Coil 「Astral Disaster sessions unfinished musics vol 2」 \2090
Grace Potter & The Nocturnals 「Grace Potter & The Nocturnals」 \2090
Doopies 「Doopee Time」 \780
The Smith 「A Group Called Smith & Minus Plus」 \1900
Grace Potter & The Nocturnals 「Nothing But The Water」 \380
Grace Potter 「Midnight」 \1197
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高校の演劇部が県大会に出場することになって
泊まりで八戸に行ったときのこと。
自由時間が少しできたので
まだ聞いていないCDに出会うことに飢えていた。
僕の担当は音響で、効果音やBGMを録音したテープを
場面に合わせて流すことだったので
部室に置いてあったダブルカセットのCDラジカセを持ってきていた。
練習で使っていた控室でダビングしてすぐ店に返した。
年代順に並んでいる。聞いてすぐ夢中になった。
冒頭、1971年の ”Virginia Plain” や ”Pyjamarama”、
ボブ・ディランのカバー ”A Hard Rain's A-Gonna Fall” (激しい雨が降る)に
こんなロック聞いたことがないと。
40年代や50年代の往年のポップスやキャバレーソングを
しかも地方の洋楽初心者の高校生にもわかるぐらい演奏が下手で、
好き勝手にちぐはぐやってますという
どこか危うい、いかがわしい感じも絶妙だった。
(アルバムで言えば2作目の「For Your Pleasure」まで
それが中盤、”Love Is The Drug”(恋はドラッグ) や
”Smoke Gets In Your Eyes”(煙が目にしみる)のカバーに差し掛かる頃には
どんどん堂に入るようになっていつの間にか本格派に。
”Dance Away” や ”Oh Yeah” では唯一無二の存在感を放つ、
洗練された、なんともアダルトなナンバーとなっている。
そして終盤、1982年の ”More Than This” と ”
Avalon” の高みへ。
押しも押されぬ本物となっていた。
しんみり、いや、ムーディーに締めるというのも
大人の余裕が感じられた。
何よりも曲がいいから全然飽きないんですよね。
どんだけこのベストを聞いたことだろう。
曲が選ばれていない。
素人音楽集団
Roxy Music の何たるかを示した前者の ”Re-Make/Re-Model” や
3作目「Stranded」の必殺の黄昏名曲 ”A Song for Europe” が入っていない。
彼らのキャリアを代表するバラード ”While My Heart Is Still Beating”も入っていない。
ブライアン・フェリーのソロだとキムタク主演のドラマで使われた ”Tokyo Joe”が、とか。
でも、それでもこのベストなんだよな。
時代を遡っていくかのような流れが完璧なのだと思う。
というわかりやすい美意識もぐっときた。
アーサー王伝説にて語られる幻の島、アヴァロンを見下ろすジャケットと相まって
あのシックでゴージャスな音の広がりは80年代屈指の名盤だと思う。
2001年の再結成ツアーで日本に来た時も見に行った。
ブライアン・フェリー、ギターのフィ
ル・マンザネラ、サックスのアンディ・マッケイ。
今調べるとドラムはオリジナルメンバーのポール・トンプソンだった。
サポートのギターは名手、クリス・スぺディング。
”In Every Dream Home A Heartache” や ”Editions of You”
”Both Ends Burning”といったライブの定番曲に
”More Than This” や ”Dance Away” ”Oh Yeah” などの代表曲を散りばめて、
という選曲だったと思う。
あくまで再結成なので多くは求めず、彼らもほんと年取ったなあ……、と。
ブライアン・フェリーもかつては英国一の伊達男と呼ばれていたのが、
ほどよく枯れていた。
あれこれ語りたいことがあるんだけど、またの機会に。
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Danny Elfman 「Big Mess」
先々月の Rockin'on (6月号)をパラパラとめくっていて
腰が抜けるほど驚いた。
元 Oingo Boingo のヴォーカル、というよりも今は
そんなまさか。
Rockin'on に大々的にフィーチャーされるなんてこと、あっていいのか。
サントラを除けば、ソロとしては37年ぶり、
Oingo Boingo からも27年ぶりの作品だという。
引用します。
ダークで不吉でカオティックで禍々しい、異形の狂気。』
『この37年間の間にダニーがその内奥に溜め込んできた、
怨念に近いような思いをヒシヒシと感じることができるだろう。
普通なら枯れてもおかしくない、
当年とって68歳の男の抱えている闇の大きさに戦慄する。』
誕生と言っていいだろう。全18曲入りの大作。震えて待て。』
これは絶対買わねばなるまい。
入手は少し遅れたけど、家に帰ってきてすぐ聞いた。
いや、ほんと、その通り。
広大な地下迷宮のように入り組んで
次から次に音の波状攻撃をかけてくる。
いろんな架空の映画のサントラだ。
クライマックスへの導入部から
全てが終わった後の寂寥感までが脈絡なく押し寄せてくる。
この人の頭の中はいったいどうなっているのか。
ゴシックなホラー・ファンタ
ジーを想像していたんだけど、
それはごく一部分の要素にすぎなかった。
そのはるか先に行っていた。
ひとつこれは絶対新しいんじゃないかと思うことがあって、それは、
映画音
楽家に転身したアーティストがちらほらといるけど、
それなりにキャリアを積んで老年期に差し掛かった今、
本気でロックに戻ってきた人は恐らく他にいないだろう、ということ。
映画音楽寄りのソロアルバムを出すことはあったとしても。
トランプが、新型コロナウィルスが、止むことのない差別や虐待が、
というよりももっと根源的な。やむにやまれないもの。
だけど厭世的になってそこに距離を置くのではなく、
立ち上がり、こぶしを握り締め、それを焼き尽くそうとした。
ロックはまだまだ、死なない。
Oingo Boingo を僕が初めて知ったのは
Rock'in on のディスクレビューで
Chickasaw Mudd Puppies「8 Track Stomp」が取り上げられていたとき。
1991年の作品。
なんだこれは、こんな変な音楽聞いたことがないと書こうとして
選者が引き合いに出していたのが Oingo Boingo だった。
青森駅近く、古川の古本屋(ブックサプライ)でひょっこり
ベスト盤の国内盤を見つけた。思わず買ってしまった。
B級ど真ん中の音だった。カラッと陽気な奇人変人の集まりというか。
ブラスが入って賑やかだけど、地下室や押し入れに閉じ込められて
もう長いこと地上に出ていない骸骨たち、みたいな。
実際、解説を読むとこのベスト盤の曲はいろんなB級青春映画に使われていた。
(柳の下の続編というところに採用されるのが彼ららしい)
このベストアルバムの確かに唯一無二の、ここでしか聞けない音楽が忘れられず、
上京後中古で見つけてはアルバムを買い揃えた。
そんなときに彼らの「Farewell」と題されたライヴアルバムを
HMV で見つける。
1995年のハロウィンに行われた彼らの解散コンサートを収録した2枚組。
湿っぽくもなく、枯れてもなく、むしろこれが最後とハイテンションに突っ走る。
1曲目の大曲 ”Insanity”から剛球が繰り出され、
2曲目の初期楽曲 ”Little Girls” は全然別の曲にリビルドされていた。
僕はこの曲以上に溜めて溜めてエネルギーが大爆発する曲を聞いたことがない。
以後、泣きの名曲 ”We Close our Eyes” がまさに青春映画の1シーンのようであったり、
代表曲 ”Wild Sex (In the Working Class)" や "Dead Man's Party" で大盛り上がりと。
バンドヒストリーを走馬灯のように駆け巡る、豪華絢爛一大絵巻。
僕個人としても非常にお薦めのライヴアルバムです。
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Grace Potter and the Nocturnals 「This Is Somewhere」
前回、27日の InterFM 『Lazy Sunday』の最後に流れたのが
このアルバムからの1曲目、”Ah Mary” という曲で、
うわー、この人の声いいなー! と思った。
Grace Potter and the Nocturnals というバンド。
2作目、3作目のジャケットがなんともかっこいい。
2作目は夕暮れ時の海辺だろうか。
船の上でシルエットになった5人が皆協力して何かを引っ張りあげている。
(バンドメンバーと友人かスタッフ?)
3作目はバンドメンバーたち。
ヴォーカルがスーツケースの上に座っているのでツアーに出たところなのか。
残りのメンバーは壁際に並んでいる。ライブハウスっぽい。
こういう女性シンガーが前に出て
バックの
メンガーが一歩下がって並んでるという王道の構図、
たまたま同じ頃にオーダーして届いた60年代末のグループ、
Smith の1作目のジャケットを見て思った。
イギリスだと Pretenders がバンドだった頃は
クリッシー・ハインドも一緒に横並びだしなあ。
最近だと Wolf Alice の新作もそうだった。
これは絶対当たりだとジャケ写買い。
ついでに1作目も、とイッキに3枚。
1作目「Nothing But The Water」(2006)
2作目「This Is Somewhere」(2007)
3作目「Grace Potter and the Nocturnals」(2010)
どれも輸入盤。1作目こそ DiskUnion で380円だったが、
2作目、3作目は
amazon で中古でも3,000円越え。
たまたま
ヤフオクにどちらも出ていて、2,000円前後で入手することができた。
2作目は国内盤が出ていたようだが、見つけるのは難しいだろう。
とにかくすぐ聞きたかったので輸入盤でOKとした。
グレース・ポッターという女性シンガーソングライターが歌っていて、
曲もこの人がほぼ全曲書いている。
(1作目は一部作曲がバンド名義で、
3作目はプロデューサーと共作した曲がいくつかあった)
バックはギター、ベース、ドラムの男性3人。
3作目でメンバーチェンジがあってベースが女性に。
ギターの男性も一人増えた。
アーシーで、ブルースが根っこにある。
どこかで聞いたことのある、どこでも聞くことのできる。
70年代のアルバムと言われたら誰だって信じるだろう。
かといって古臭いわけではない。新しい音でもないが。
よく引き合いに出されているのも納得。
アメリカのロックの『普遍』ってここなんだな、と思った。
3作とも甲乙つけがたい。
3作目の方がより洗練されているが、
1作目の荒削りなところが残っているのもいい。
これはグレース・ポッターのソングライティングや
歌い手としての存在感が最初から完成されていた、
ということなのだろう。
バンドとしてはもう一枚アルバムを出して解散。
グレース・ポッターは今、ソロで活動しているようだ。
いや、ほんと久々にグッとくるジャケットだった。
ジャケ写買いできるうちはまだまだ僕は現役だな、と思う。
追記。
その後もっと聞きたくなって
ソロになってからの「Midnight」も入手。
グリッターでビッチな雰囲気にイメチェン。
これまたジャケットがかっこいい。
曲を共作、プロデュースした男性が旦那さんのようだ。
音もグラマラスに今風になっている。
引き続き他のアルバムも探してみよう。