うどん県の旅 その6(9/7)

夜中、寒くて目が覚める。タオルケット一枚だと寒い。
押し入れから掛け布団を出して上に掛ける。それだと暑い。
午前7時起き。シャワーを浴びて散歩。
せっかくだから瀬戸内海を見ておこうと。
高速出口側、島の真ん中にある民宿から東側の漁港へ。
歩いて5分もかからなかった。


途中Tさんとすれ違う。6時半に宿を出て歩渡島まで行ったという。
櫃石島の南端にある小さな島。歩いて渡ることができる。
聞くと片道30分。僕も行きたくなるが、食事は8時。
今回は諦める。漁港を見ただけでも満足する。


瀬戸大橋の足元へ。見上げると途方もなく大きい。
しかもちょっとやそっとでは揺るがないようにどっしりと構えている。
橋脚が筋肉隆々の腕のようで、その上に渡された橋桁も分厚い鉄板のよう。
海中から突き出ている橋梁はしなやかな弓のようだ。
茶色がかったコンクリートが腐食したのかところどころ赤茶けている。
1989年開通で今年で25年か。
プロジェクトX』の文庫本にも瀬戸大橋の話があった。
あれを思い出し、日本の科学技術の素晴らしさを思う。


漁港へ。道路に網が包んで並べられている。
捨てられたものなのか積み重ねられたタイヤの上にバッテリー。
「明力丸」や「哲翔丸」「健龍丸」といった名前。
岸に船が20から30は並んでいる。
ひと気はなく、穏やかな波に浮かぶ。
漁を終え何処か別の港に水揚げしたあとなのだろう。
自転車に乗ってきた屈強そうな老人が僕を追い越して行って
観光客と見て「おはよう」とぶっきらぼうに声をかけてきた。
僕はぼそっと「おはようございます」と返した。
漁協の小さな建物があってその前に置かれたプールは水が抜かれていた。
中には小型のリフトが端の方に整然と停められていて
発泡スチロールの箱がきれいに積み重ねられていた。
瀬戸内海だからか、海の匂いがそれほどしなかった。
海そのものの匂いと汚れたものが淀んで発する臭い。後者がなかった。
海本来の海、ということか。


漁港の建物の壁には選挙ポスターが2枚貼られていた。
剥ぎ取られているのも何枚かあって、色褪せて過去になった議員のものか。
港の端の方に船を修理するドックというか
海から釣り上げて乗せておく台があるあるきりで、
小屋の内外に部品や板切れなど雑多に投げ出されていた。
床に塗料がドリッピングされた一画があってまさにジャクソン・ポロックの絵だった。


民宿に戻る。
テレビを見ると錦織圭全米オープンで決勝に進出したと。
東京は大雨。最高気温23℃。
日本テレビをつけたら延々24時間テレビの総集編。城島が101キロ完走とか。
TV局の人たちも夏休みなのか。


朝食は打ちたて茹でたてのうどんに醤油をかけて。
焼き鮭にご飯、つけもの、ノリタマ。それだけで十分美味しい。
今回もまた皆に手書きの旅の栞をつくってもらって、それに皆互いに寄せ書きしあう。
宿を出るまでの間、書き続けた。とてもいい思い出になる。
チェキで撮った写真を丸亀市名産の? うちわに貼ったものまでもらった。


宿を出て車に乗って、少し島を見ようと漁港へ。
道路をカニがサササササッと歩いていた。
漁港へ。2時間の間にかなり日が強くなっていた。
メインの通りを無人のバスが通り過ぎる。
瀬戸大橋を見ると何度か列車が北へ南へ往復していた。
海辺で釣りをしている年配の方がいたが、
僕らのうちの何人かが挨拶をしても無言のまま釣りを続けていた。


島唯一の小学校と中学校を見に行く。
学校通信を貼りだしていて、先生たちは熱心なようだ。
学校の予定を見ると
「英語の○○先生来島」「事務の○○さん来島」とそれぞれ月に2度あったり、
なんだか不便そうだ。
宿の人に聞いたところでは幼稚園は今年から廃止となったという。
島の人口は2005年の時点で236人。今はさらに減ったか。
昔から、高校に上がる時には島を出ることになっている。


小中学校の校歌の2番の歌詞の結び。ほほえましい。
「あたりの海は幸多く
 チヌ ハモ メバル タイ サワラ
 打ち出す黄金 一萬円」


島唯一の店がここにあるらしいのだが朝なので見当たらず。
古びたアイスの冷蔵ケースを置いていた家がそうだったのか。
トレーラーの箱が地面に置かれていて、その横にパチスロ機が置かれていた家もあった。
どの家も総じて古びている。衛星放送のアンテナはあっても。
漁師たち男性は何人か見かけたが、女性の姿、子どもの姿は全く見かけなかった。


宿に戻り、高速のゲートを開けてもらうついでに
宿の人に記念撮影を撮ってもらい、島を後にする。
瀬戸大橋を南へ。
青空の下広がる瀬戸内海。点在する島々。
坂出に入るすぐ工業地帯が広がっていた。


こんぴらさんを目指す。
妙に山の形のいい、讃岐富士が目の前に広がる。
丸亀市に入る。市街地を抜けると田んぼの中に民家が。ため池が。
今日もNHK FMにチャンネルを合わせると
青森、熊本、北海道、日本各地の民謡大会で優勝した
若手民謡歌手の全国大会? の模様が放送されていた。
しばらくそれを聞いて「声の張りがいい」「朗々としている」などと言い合った。