「TERRAIN VAGUE vol.55 カーニバル漂流」

水曜の夜、神保町の温室へ。
今週は「TERRAIN VAGUE vol.55 カーニバル漂流」
http://onshitsu.com/2017/01/12-083212.php
今回は世界に二人しかいないカーニバル評論家のうちの一人、白根全さん。


トリニダード・トバコ、ドミニカ、ハイチ、コロンビア、ベネズエラエクアドルボリビアなど
中南米各地のカーニバルの模様を豊富な写真で語る。
独創的にカラフルなところもあれば、伝承芸能の色濃いところもある。
世界3大カーニバルはヴェネツィア、リオ、ニューオリンズマルディグラ
しかしこの3つとも実は世界遺産に登録されていないのだという。
逆に登録されたとある町のカーニバルは登録を狙って過去から受け継いだものを捨てて
受けがいいように作りかえってしまった…
そんな裏話がたっぷり。


白根さんが博識かつ経験豊富で話があちこちに飛んで面白い。
日本人でカーニバルを最初に見たのは16世紀末、天正少年使節の四人であって、
その頃既に日本人の奴隷はアルゼンチンにまで送られていた。
鉄砲の伝来から10年で近江の刀鍛冶は鉄砲の銃身を作るまでになったが、肝心の火薬がない。
ポルトガルの商人から買うしかなく、銀山の銀で支払ったが、
足元を見られてどんどん値を吊り上げられていく。そのうちに銀も底をつく。
どうしたか? 戦で勝った国は負けた国の若者たちを奴隷として商人に売ってしまう。
そういった日本人たちが当時、マラッカやあちこちに。それが遠くアルゼンチンに。


カーニバルの王に選ばれた者は4日間町の鍵を与えられ、
その町を好きにしてよいが最後には民衆によって殺される、
という話にジェームズ・フレイザーの『金枝篇』を思い出す。
前にも書いたけど、ミハイル・バフチンのカーニバル論も、そう。
社会や現実に抑圧された若者たちが、
都市の片隅にある小さな地下のライブハウスで楽器を手にするときだけは自分を解放することができる。
そんなところが明後日の自分のイベントで話すパンクに通じる。
Sex Pistols のわざと破いて安全ピンでつないだTシャツや
New York Dolls のけばけばしい女装は実は、カーニバルの衣装なのかもしれない。
僕はそんなことを話した。


脱線に告ぐ脱線に喋りっぱなしでリオのカーニヴァルに辿りつけず。
白根さんは今年のカーニバルは西アフリカのを訪れるとのことで
次回4月ぐらいに続きとのこと。


紹介された本は
篠山紀信『オレレ・オララ』
若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ』
チャールズ・マン『1491』『1493』など。