東北の3枚

東北を代表するロックの3枚を選んでみる。
…選んだが、ロックというよりもなぜか
フォーク後のパンクというか、パンク後のフォークとなった。
一人ギターをかき鳴らし、泣き叫ぶ。
そこにあるのは情念のうごめき。
それが雪深い、貧しい、東北なのだと思う。


例えば人間椅子はどうか。
青森、津軽を代表するかもしれないが、それが東北の、というと違うように思う。
例えば SUPERCAR はどうか。青森どころか日本といった地域性とは無縁の音楽性だ。
この世界の同時性の中で鳴らされた音楽。


1)三上寛『夕焼けの記憶から』(1977)
東京で一旗揚げた後での凱旋ライブなのだろうか。
それにしては青森市本町の今はなき「だびよん劇場」は余りにも小さすぎる。
青森で三上寛を知っている、聞いている、というのは恥ずかしい事のような感覚があったように思う。
皆、知ってても触れないようにするというか。近所の変な人、みたいな。
だから僕も最近になるまで聞こうとしなかった。
ここまでアナーキーアバンギャルドな人だったとは。避けてきた自分がむしろ恥ずかしい。
時代からか明日のジョーに絡めた「夢は夜ひらく」は絶唱。泣く。
世間の無理解を超えて、一人、男は故郷で叫ぶ。


2)友川かずき『犬/秋田コンサートライブ』(1979)
70年代初めのフォーク全盛期に秋田から上京。
これも凱旋ライブなのかな。バックバンドの名前は「ピップエレキバンド」
和気あいあいとしつつ、筋の通し具合に背筋が伸びる。
ジャケットの裏側は田んぼのあぜ道に浅く雪が積もっている写真。
小学校で習う「どじょっこふなっこ」を織り交ぜつつ、代表曲「生きてるっていってみろ」を。
これは今思うと不思議だが、TBSのドラマの主題歌に使われたのを覚えている。
余談ながら友川かずきには中原中也の詩に曲をつけて、
J・A・シーザーがアレンジしたというアルバムがある。


3)遠藤ミチロウ『FUKUSHIMA』(2015)
ジャパニーズパンクの極北、ザ・スターリンを知るのも僕らの世代までか。
客席に向かって臓物を投げるなど、記号としてのパンクの純度をどこまでも高めた。
それが今やギター弾き語りで全国のライヴハウスを回って
年間200本以上というのを続けているわけで。
信頼できるミュージシャンって彼のような人だと思う。
「オデッセイ・2014・SEX・福島」「STOP JAP音頭」など往年の名曲をアップデート。
「NAMIE(浪江)」は東日本大震災後の福島を歌った曲としては一番の名曲だと思う。
福島出身の彼にしか歌えない。震災後は同じく福島出身の大友良英と活動を共にした。