「29」会社撮影(前編)

前の晩は会社の人たちと焼肉を食いに行ってその後遅くまで飲んでいた。
帰ってきたら1時近く。撮影のために6時に起きる。眠いったらありゃしない。
会社近辺で撮影ってことになっているので会社に8時集合ということにしてある。
決めたのは僕であるが、もう1時間ぐらい遅くてもよかったのではないかと後悔する。
とはいえ今日の撮影内容は会社の中・お台場海浜公園・東京タワーと盛りだくさん。
日もまだ暮れるのが早いし、開始を早くするに越したことはない。


7時30分には会社に着く。
まあ要するにいつもの出社時間だったりする。
ビデオカメラにマイクをくっつけるとさっそくこっそりと会社のビルの中で撮影を始める。
1階のエントランスホールからエレベーターに乗って5階のオフィスまでのショット。
どこもかしこも人がいなくてがらーんとしている。
こういうのが撮れると嬉しくて嬉しくて仕方なくなる。
こんな僕って変なんだろうな。


8時を過ぎて皆集まりだす。
イマナリから借りたセミプロ用の大型DVカメラ、
ヨドバシで買ったセミプロ用の大型ガンマイクを机の下から引っ張り出して後輩たちに預ける。
「すげー」という声が上がる。
こういうアイテムがあるといかにも映画の撮影をしてますって雰囲気が出ていい。
ヘッドホンをしてガンマイクを手に持っているとそれだけで録音技師っぽくなるのだから不思議だ。


後輩の女の子に着てもらうために
わざわざ貸衣装屋から借りてきた女子高生の制服を披露。歓声が上がる。
着替え終わってみんなの前に出てくると男性陣「うおーっ!!」と叫ばんばかりにヒート。
デジカメや携帯で撮影会が始まる。
「振り向いてー」「もっと上目遣いに!」などと
グラビアアイドルを前にしているかのようなノリになる。


ゆりかもめに乗ってお台場海浜公園へ。
海辺へと降りていく。9時前だというのに予想外に人がいる。驚く。
近くにマンションも立ってるし、朝の散歩をする人たちが多い。
遠くから観光で来たって感じの人たちも同じぐらいいる。
「DECKS」も「AQUA CITY」も「パレットタウン」もまだまだ開店前の時間帯なのに、
これらの人たちは海を見に来たのだろうか?


映画の撮影、しかも女子高生の制服を着ているってことで人目につかないことが好ましい。
人のいない方に行こうとすると今度は鳥の声が大き過ぎてとうまくいかない。
砂浜の方が確かに絵的には無難なんだけどまあ仕方ないなと諦めることにする。
ボードウォークを歩き回っているうちに
岸から細長ーく張り出した通路の先に
柵で囲まれた小さな展望スペースを発見、ここで撮影を行うこととする。


機材をセッティングして、役者たちが演技をして。リハーサル。本番。
その光景の一部始終を僕はカメラに収める。
女子高生役の子が通路を走ってきて、先生役の先輩の胸元へと飛び込む。
ひしと抱きしめあう。そんな場面。
一通り撮り終わると僕は1人通路をボードウォークへと引き返し、
現場で楽しそうにしている5人の姿を遠くから超望遠で撮影する。
恐らく今回の映画のラストで使用されることになる。
もっともっと遠くから撮れないか、高いところから撮れないかと
あちこち走り回るのであるがちょうどいい場所は見つけられず。


撮影が終了するもどこもまだ開いてなくて中に入れず。
開いてたロイホに入ってみんなで遅めの朝食を食べる。
1人暮らしが多いから何も食べずに来たって人が多かった。


ゆりかもめに乗って竹芝に戻り、会社にて後片付けをして解散。
手間のかかる撮影を1つ片付けたのにこの時点でまだ12時にもなっていない。
「1日が長いなあ」という普段とは逆の感想を抱く。