蕎麦+日本酒

半年ほど前、家の近くに蕎麦屋ができた。
前の店がなんだったのかは今となっては思い出せないが、
ガラス張りだったのが踏襲されて外を歩いていても中がよく見える。
白い和紙に墨で「お品書き」が書かれていて、
窓辺には日本酒の一升瓶が何本も何本も飾られている。
飾られているというよりはゴテッと無造作に並べられているだけで、
内装っていうほどのものでもない。なんつうか無骨な感じ。
日本的情緒、詫び寂びをごっそり排除し
蕎麦と酒だけがそこにあるというような店。
十割蕎麦と書かれているので、材料にはこだわりを持ってそうだ。


通は蕎麦で酒を飲むらしいのであるが、
僕はまだ全然そんな境地には至っていない。
というか蕎麦を食べるにしても立ち食い蕎麦か普通の蕎麦屋にしか行かないから
酒を飲んでる人ってのも見た記憶がない。


店の中はもう「蕎麦+日本酒」の境地に達して長いような人たちばかりで
僕なんかには敷居が高くて入れない。
深遠なオーラを放っているわけではないのだが、
若者がふらっと入るのはなんとなくためらわせるような雰囲気がある。
気軽に「天ぷら蕎麦でも食うか」と入る気にはならない。


恐らく脱サラか定年退職したオヤジが趣味でやってんだろうな。
趣味が高じて店を構えるに至りました、っていうような。
蕎麦を打つのと幻の日本酒を追い求めるってのは
いい具合に年輪を重ねた男が持つべき趣味としては王道だ。

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うまい蕎麦かうどんを食べたいのであるが、東京にはないもんかな。
わざわざ店を探して食べに行ったことってないなあ。そういえば。


僕は鍋焼きうどんが大好きで、
たまに入った店でメニューにあったりすると頼むことが多い。
だけど「これだ!」というものに東京では出会ったことがない。


讃岐うどんを紹介する番組で時々、
「田んぼの中の小屋みたいなところが実はうどん屋で」というのが出てくる。
ゆであがって湯気の立っているうどんに醤油のようなタレをかけて
薬味にちょっとネギや油揚げがあるだけ。
あれってうまそうだよなあ。


都内にも安い讃岐うどんのチェーン店が雨後の筍のようにあちこちにできたが、
たいしたことなさそうで僕は入ったことがない。