歯医者その後

歯医者に行く。先週に引き続き、歯石を取る。
先端が針のように先の尖った器具で歯茎と歯の隙間を抉るようにして歯石を掻き出す。
口をゆすぐ度に血が混じっている。


隣の席に座っている人も同じような治療を受けているようで、
会社に戻ってここの歯医者に通っている先輩に聞いてみると
先輩もまた歯石を取っているのだという。
しかも6回かかるうちのまだ3回目。道のりは遠い。
あーそういう歯医者だったのか。
削って詰め物をして終わりかと思いきや。「しまった・・・」という感じ。
でも、よくわからないけど、歯の健康を思えばたぶん必要なことなんだろうな。
将来的に総入れ歯になるよりは今時間をかけて、やれることをやっておいた方がいい。

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一通り今日の分の歯石を取った後で例の美人な女性歯科医師
僕の歯並びの映ったレントゲンを見ながら、いきなりこんなことを言い出した。


「上の親知らず、両方とも抜きませんか?」


いったい何を言い出すんだ!?


抜きませんかって、あんた!
そんなホイホイ抜くものなのか!?


前回も書いたが、下の親知らずは学生時代に2本とも抜いてるのであるが、
2本目の時には


「歯を砕いて欠片を歯茎から取り除いた」


わけであって、痛い痛くないの以前にそもそも「とんでもないことをしてる」感があった。
(そしてもちろん、もーのすごーく痛い)


終わった後は虚脱感と身体的な不快感でいっぱい。
それが何日も何日も続く。もちろん食事は取れない。取る気がしない。
腹が減るんで食べるんだけど、何を食べたところでおいしいわけがない。


歯を磨いていても奥まったところにあるため上の親知らずまで歯ブラシが届かなくて、
隣の歯の間との歯茎が重い炎症を起こしているのだという。
そして食べ物のかけらも詰まりやすい。
下の方はもう抜いてあるので今のところ上の方は何の役にも立ってない。
だったら抜いたほうがどうですか、というサジェスチョン。
言われてみるともっともな気がするのであるが・・・。


レントゲンを見ると親知らずは牙のように深く深く縦に突き刺さっている。
こんなの抜けるのかよ?すんなりと。
これはこれで激痛だろうなあ・・・。


注射を刺して、ペンチを突っ込んで、ギリ、ギリ、ギリ。ゴキ。


ひー。想像しただけで気が遠くなってくる。しかも2回。


もう来週にでも抜きましょうという勢いではなく、
しばらく検討してみてくださいとのことだったので十分に考える余地はある。


やろうかなあ。やったほうがいいのかなあ。
どこまで何が改善されるのだろう。
術式後と、その後の人生と。
トータルでみたらプラスってことになるのだろうか。
それとも保険のようなものでしかないのか。
あれこれ手は尽くしてみたものの、うまくいかなくなるときはうまくいかなくなる。
そういうものなのかもしれない。
これがなんらかの確率の問題であるならば、僕はそこに賭けを行うべきなのだろうか?


仕事は山を越してるだろうし、やるなら5月6月はタイミングとしてはいい。
でも平日にやったら2・3日は仕事にならないのではないか?
だったら金曜の夜に?で、土・日は何もせず寝てる?


うちの親は以前こんなことを言っていた。
歯の治療をしているうちに抜くことになったんだけど、
下手な歯医者にかかっていたために1時間近く口を開けっ放しにしなくてはならなくて、
それ以来顎がおかしくなった。


あー悩ましい。
客観的に考えるならばかなりどうでもよくて小さな問題なんだけど
精神的なダメージがそこにはなにがしかあって、重くのしかかる。
ハムレットではないが、「To be or not to be. 」
大袈裟に言うと今そんな心境。
他のことを考えている余裕がない。

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僕は口を開けて涎を垂らし、中は血まみれ。麻酔が効いていて感覚がなくなっている。
ペンチ失敗。激痛だけが残る。


「岡村さん、ちょっと難しいみたいなんで×××でやってみようと思います」


歯医者、×××を取り出す。
頭上のライトを浴びて×××がキラーンと光る。


ひー。