「みなさん、さようなら」「ディボース・ショウ」

会社を休む。これで8連休。
ほんとは11連休にしたかったんだけど、明日は一応会社に出る。
根が小心者だもんで気が引けた。


休日に休んでいるので映画を見に行く。一週間ぶりに丸の内線に乗って銀座へ。

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「みなさん、さようなら」


ドゥニ・アルカン監督作。昨年のカンヌで脚本賞と主演女優賞。
今年のアカデミー賞外国語映画賞(「たそがれ清兵衛」と争う)。
などなどあちこちで賞を取っている秀作。
カナダ映画なんだけど、フランス語圏の作品。


余命いくばくもないことを知らされ、病院で最後の日々を過ごす大学教授。
その元に別居中の妻や疎遠にしていた息子、
かつての友人たちや愛人たちが集まり、思い出話やバカ話に花を咲かせる。
みんなに看取られる中、教授は安らかに息を引き取る。
話を要約するともうこれだけ。こうとしか言いようがない。


太平洋をヨットに乗っていてどうしてもモントリオールまで戻れない娘が
衛星を通じてビデオメールを送ってくる。
苦痛を和らげるためのヘロイン入手・投与係となった愛人の娘が
教授とのふれあいを通じて麻薬中毒の治療を始める。
教授は骨の髄まで社会主義者であるのに対し、
息子はロンドンでディーラーとして大成功し「資本主義の申し子」と呼ばれる。
その息子が父に少しでも居心地のいい空間を用意しようと
病院の理事会や組合の買収活動に走る。
ちょっとしたディティールの1つ1つが心地よく過ぎ去っていく。
柔らかな時間が流れる。
こういう最期って理想的だよな・・・、と思う。
観た人誰だってそう思うだろう。


「愛される」ことの大切さ、ありがたさ、ってことなんだろうな。
何をどうしたら人に愛されるようになるのかってことの
秘訣を明かすようなことは全くない。
ただ単に周りの人たちと日々楽しく過ごした、
その思い出を大切にして、今という時間を大切にした、
ただそれだけの積み重ねなのだと思う。
簡単なようでいてものすごく難しい。
笑ってればいいってわけでもないし、
人間関係に波風を立てなきゃいいってもんでもない。
時として心の中のかなり深い部分に突っ込むことが必要だし、
困ったときには一緒になってやばいことに手を出したりもする。


この映画のいいところは、
最後の日々を過ごしている今この瞬間しか描かれないのにも関わらず、
集まった人たちのそれまでの日々がいかに素晴らしいものであったのかが
何も言わなくても伝わってくるというところだろう。
ちょっとした会話の切れ端や仕草の1つで、
その年月の重みがふわりと伝わってくる。
暖かくて穏やかな、重み。


死ぬということ。
その日を境にいなくなってしまうのだということ。
映画の中に描かれていた「死」あるいは「死に方」を身近な人に置き換える。
僕の父は僕が7歳のときに亡くなった。
母のことを思うといたたまれない気持ちになった。
自分にはあの息子のような「側にいてやること」ができるだろうか?
例えばそれが友人であったならどうか。


そしてそれが僕の番になったとき。
僕の側に周りの人たちは集まってくれるだろうか?


死ぬ間際の何日か何時間かに「自分は幸福だっただろうか?」と考える。
最期のときに居合わせて「あの人は幸福だっただろうか?」と考える。
最終的に「Yes」と肯定できるかどうか。
生きることの意味、その答えの1つ。
そのとき僕には何が出来るのだろう。何を思うのだろう。


映画としての手触りはとても優しいのに、考えさせられることは多い。
見ている間は「いい人たちに囲まれてこの人もしあわせだなあ、いいなあ」
なんてゆったりとした気持ちでいたのに、
見終わった後自分の状況に置き換えたとき、ずしりと重いものを感じた。

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ディボース・ショウ


コーエン兄弟監督の離婚騒動もの。
ジョージ・クルーニーが離婚訴訟専門の敏腕弁護士、
キャサリン・ゼタ=ジョーンズが大金持ちとの離婚で一財産作ろうとする美貌の女性
をそれぞれ演じる。非常にはまり役。
この2人が敵として対峙して繰り広げる駆け引きと恋の行方がテーマのコメディ。


アメリカの離婚事情とそれにまつわる法律事情って
アメリカ人ならばポピュラーな物事なんだろうか?
日本人の僕からすれば全然ピンと来なくて、
「えーと、これってどういう状況なんだろうか・・・?」と何回か悩むことになった。
「婚前契約書」ってのの性質がどうにもわかりそうでわからず。
しかもこれを破り捨てるシーンが2回ばかし出てきて、
「こうなると誰が得するんだっけ?ジョージ・クルーニーの方?どっちだっけ?」という感じ。
・・・楽しめず。


コーエン兄弟なんで中の上ぐらいの出来は必ず見込める。
なので見ていて面白い箇所は次々出てくる。腹抱えて苦しくなるぐらい笑った箇所もあった。
でも根本のところでしっくりこない。
「あーこれって今どんでん返し食らってんだろうなあ」
「さらにそれがまたひっくり返ったんだろうなあ」
という見てて非常に不思議な感覚を味わえる。
文法はわかるのに単語がわからないのでうまく訳せない。
高校時代に英語のテストを受けてるときを思い出した。


この映画のこと知ったのはつい最近。
有楽町マリオンのでかい看板に「コーエン兄弟提供」とあったので
てっきり僕はプロデュースかなんかだとばかり思っていた。
なんだか話題になってなくて、
久々の作品なのになんでかなあと首をかしげていたのであるが、なんとなく納得。
これは日本人向けじゃない。
それに、ジェフリー・ラッシュビリー・ボブ・ソーントンとメンツは豪華なのに
なんとなく作りが地味で小さくまとまっているようにも感じられた。


「オー・ブラザー」なんて銀座で水曜最終回が立ち見だったんだよなあ。
コーエン兄弟も最近ではもてはやされなくなったかと思うと寂しい。
今日の日比谷シャンテも3つあるうちの地下の小さいとこだったし。


今月後半にはさらに新作が公開されるという。
トム・ハンクス主演の銀行強盗もの。「レディキラー」
これもまた小さくまとまっていたらどうしよう・・・。

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そういえば一昨日吉祥寺で「KILL BILL vol.2」を見ようとしたら
ホーンテッド・マンション」が立ち見になっていた。ヒットしてるのかな。
予告編見てるとどうにも子供だましな気がするんだけど、あれって面白いのだろうか。