僕が20代最後に訪れた惑星では海はピンク色に染まっていた

僕が20代最後に訪れた惑星では海はピンク色に染まっていた。
砂混じりの大気は赤茶けた紫色だった。
僕らが乗っていたグライダーが真夜中に砂漠に不時着すると月が白く輝いていた。
(この惑星のもう1つの月はそのとき地平線の反対側に浮かんでいた)
まだ幼生の砂虫がブーツにまとわりついていた。
ベージュ色の半透明の体の中を鮮やかな血液が流れていた。
僕はヘルメットを脱ぎ捨てると酸素の薄い空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
友人たちも同じように赤い砂漠の上に立っていた。
そのうちの1人は歩いて、既にはるかかなたまで到達していた。
彼女が手を振るので僕も手を振った。
月の光が彼女をうっすらと照らしている。
別の1人がグライダーの中からオーディオを取り出すと、
ものすごく大きな音で音楽を鳴らした。
衛星回線を介してラジオはここまで届くのか、彼はそんなようなことを言った。


エアポート周辺のホテルに1週間閉じ込められていた。
僕らは採取すべきサンプルの保存手段に関して最終的な確認を行い、
最上階のバーで年代もののサッカーゲームに明け暮れていた。
ピンボールマシンに接続すると僕は銀色の球体となって弾かれた。
笑いながら彼女がプレイしている。
彼がちょっかいを出して僕は暗闇の底へと落ちていく。
ベッドの上で僕は銃を撃つ真似をした。
右腕をすらりと前に突き出し、銃声は口で代用する。
その部屋にいた5人の男女を撃ち殺し、僕はこの星の王となった。
派手に笑い声を立てながら僕はその日の女王を選んだ。


ハイウェイをもう1度走りたいと思った。
空を飛ぶことは簡単だ。
スピードをどこまでも上げて、地面を掴むタイヤが白い煙を放つ。
ハンドルを切ったその先にはまだ何万キロものコースが広がっている。
新しい感情を試してみたくなった。
0/1の河底を転がっていたそいつは日の光を浴びてキラキラと輝いていた。
スクリーンにはオレンジ色のカプセルが描かれていた。
体中に広がって僕は目を閉じた。
「時間が来た」と彼は言う。
「ピンク色の惑星」「懐かしいだろ?」


僕らは海辺に立つとしばらくの間押し寄せる波を眺めた。
揺れる水面が反射する光。「イチゴジャム」と僕は思った。
ヴァニラアイスの中を漂うクラッシュされた大量のキイチゴの群れ。
僕らは裸になって海に飛び込んだ。
深く深く潜っていった。
砂でできた平面以外そこには何もない。
燃え尽きそうな太陽が空に白く浮かんでいる。
グライダーは置いていこうか。
歩いていくうちに砂がどんどん細かく砕けていく。
掬い上げると風に吹かれて、手の平の間を零れ落ちていく。