柏「ボンベイ」・上野「みはし」「蓬莱屋」1/3

6月26日(土)の話。
大学の先輩たちとカレーの会ってことで柏市にある「ボンベイ」に行ってきた。
いつもならカレーの会は半年に1度ぐらいのペースなんだけど
前回巣鴨(千石)の大沢食堂に行ったときに「大辛」を驚異的な速さで間食したA先輩が
「これはまだ人生で2番目の辛さだ」
「人生で一番辛かったのは柏のボンベイで食べた裏メニューのカレーだ」
と語るのを聞いて一堂興味津々。
そもそもカレーそのものがうまい店だというのでこりゃすぐにでも行こうってことになった。


土曜の昼、柏駅に現地集合。都内のバラバラの場所から5人集まった。
「こんなに遠いのか」とみんな口々に言う。
僕の場合荻窪から上野を経由して常磐線快速で柏まで。まだ余裕で通勤圏内とはいえ、さすがに遠い。


さっそく店に向かう。
以前柏近辺に住んでいて、今でも「ボンベイ」のカレーを食べたいがために
電車を乗り継いで柏を1人訪れるというA先輩が道案内。
南口方面をデパート、パチンコ屋、商店街と歩いていって小さな通りに入ると
やる気のない古びたつぶれかかった喫茶店のような店が目の前に。
ボンベイ」と書いてある。おお、これか。
ここまで外観に気を使ってないのはよほどやる気がないか、
それとも自分の勝負するポイントがどこかはっきりとわかっているかのどっちか。
断然後者であるわけなのだからはるばる遠くから人が訪れてくるのだし、
有名な店として多数のカレー本で紹介され続けるのだろう。


小さな店と聞いていたのでもしかしたら並ぶのかなと思っていたのであるがそんなことはなく。
適度に混んでいたが5人1つのテーブルに座れた。
カレーのメニューは確か7種類か8種類あった。
最も辛い「カシミールカレー」を2人、次に辛い「インドカレー」を2人。どちらもチキン。
僕は店の名前がつけられた「ボンベイカレー」を。これは並みの辛さ。
他にも「ビーフ」「ポーク」などがあった。シチューやドライカレーもあったような気がする。
A先輩は常連として顔を覚えられているようで、
「今日は東京から友達を連れてきました」と言うと店員のおばさんがとても喜んだ。


目が慣れだすと店内の雰囲気がはっきりと見えてくるようになる。
インドっぽい飾りや小さな額入りの絵がいくつか壁に飾られている。
店の中は薄暗く、なんだか昭和40年代・50年代の喫茶店のようだ。
もしかしたら時間がそこから止まってしまっているのかもしれない。


カレーが運ばれてくる。
ここのカレーはあっさりとしたスープ系。
インドカレーはまだごく普通のカレーの茶色い色なのだが、
カシミールの方は赤みがかった色をしている。見るからに辛そう。
一番辛い裏メニューはスープが真っ赤なのだそうだ。
僕が頼んだボンベイカレーは野菜のカレーということになっていて
出てきたものを見たら、カレーのあの銀色の容器(これって名前はなんて言うんだろう?)に
山盛りの野菜炒め。千切りのキャベツにピーマン、タマネギ。
先輩たちのカレーがほんとスープみたいなので
肉の小片がつつましく浮かんでいるものなのに対し、こっちはハンパじゃない量。
全部かけたらカレー皿の上のご飯が野菜で埋まってしまいそうなぐらい。
気が付くと先輩たちは額に汗を浮かべながらカレーを口に運んでいる。
「これはうまいね」と言いながら。


確かにこれはおいしい。ものすごく、ものすごく、ものすごーくおいしい。
スープ系のカレーではここ、最高峰なのではないか?
柏まで来てもいいわ、これなら。カレーのためだけに。
食べ終わったらそのまま引き返して荻窪まで戻ってもいい。
それだけの時間と電車代を払うだけの価値はある。
あっさりとしたスープの中には、・・・いや、書くだけ野暮だ。描写しても仕方がない。
書くなら次また来て、カシミールカレーを食べてみてからにしたい。
毎日食べても飽きが来ないだろうってことだけは記しておく。
それぐらい食べ物として完成され、普遍的な価値を持つに至ったカレーなのである。
【認定】カレー部門:生涯ベスト3入り


食べ終わると小さなカップにコーヒーが入って出てくる。
A先輩は「作りおきのどうってことないコーヒーだけど、辛いカレーの後に飲むと妙にうまい」
以前そんなふうに語っていた。
このコーヒーだけ単品で頼んだらイマイチな思いをしそうだが、
カレーの後というポジションでなら絶妙な味わいを発揮する。
コーヒーうまいなあという気持ちになるし、
それ以上にカレーうまかったなあという気持ちにさせられる。
仕上げとしてこのコーヒーがなかったらこの店ここまで有名とはならなかったのでは?
アクセントというものは非常に大事である。
(なお、A先輩は激辛カレーを食べきったとき、
昔コーヒーだけでなくチロルチョコのような小さなチョコレートももらったのだそうだ)


店内にはいろんな客層の人たちがいて、若いカップルが多かった。


店を出る。午後1時。
わざわざ都内のあちこちから現地集合で柏まで来たっていうのに
その日の目的は早くも達成されてしまった。
することがなくなる。


自然と「柏って何があるんだ?」って疑問が出てくるのだが、誰も答えられず。
昔住んでいたはずのA先輩ですら「知らない」って言い出す始末。
柏レイソルって柏?(当たり前か)
今日試合やってる?
駅に戻って案内用の地図を見たらグラウンドがあったんだけど、ものすごく遠そうだった。
そもそも行ったところでなにもやってなさそうだった。


なお、この日は欧州選手権でフランスがギリシャに敗れるという日だった。
朝早く中継された試合を見てから来た先輩も何人かいた。
「スタープレーヤーが何人いるかじゃなくて、
チームのコンディションがいい国が勝つ時代になって云々かんぬん」
と食べながらもどこか移動しながらも話題は常にサッカー。


引き続き案内板を見てみるのだが、ほんと何もなし。
右側に沼のようなものが広がっていてその周りが公園っぽいのだが、
A先輩いわく「日本一汚染がひどいって教科書に載ってた」とのこと・・・。
デパートだけは高島屋、そごう、丸井とたくさん揃っている。
地元の人たちにとっては便利なところなんだけど、
外の人たちからしてみれば訪れる機会がない、そんな町のようだ。


このままここにいても仕方ないと常磐線に乗って上野まで引き返す。
吊革に揺られて窓の外の風景を眺める。
「川を渡って亀有に入ると急に東京っぽくなるね」とS先輩が言う。
風景ががらっと変わる。
東京に入った途端、なんというか隙間がなくなってしまう。


北千住を通り過ぎるとき、
「北千住って地名としてよく耳にするけどここには何があるんだろう?」
誰も答えられない。
唯一出てきたのがこれ。
「・・・女子高生コンクリート詰め殺人事件の現場」


(続く)