「ブラスト!」

会社の秋のイベント。これまでは劇団四季の劇場が近かったせいか
ライオン・キング」や「マンマ・ミーア」だったのがようやく四季から脱却。
今年は東京国際フォーラムにて「ブラスト!」を見ることになった。
あんまり予備知識のないまま見に行って
「あれー?思ってたのとなんか違うなあ」と首を傾げる。
・・・僕は「ストンプ」と間違っていた。

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開場時間より少し前に東京国際フォーラムに着くとロビーの一角に人が集まっている。
「前の方に詰めてお座りください」と公演スタッフが呼びかけている。
どうもプログラム開始の前におまけで演奏が行われるらしい。
僕も座って始まるのを待つ。
やがて6人のパーカッションが拍手と共に登場。
4人が椅子、2人が大きなポリバケツを持っている。
もちろん打楽器として使用する。
(この辺が「ストンプ」と誤解してしまった理由の1つ)


これがすごい。一糸乱れず打ち鳴らして、なおかつアクロバティック。
それでいて1人ずつ自己紹介するとコミカルな面を披露。
小川直也の例の「3、2、1、ハッスル!ハッスル!」をやりだす人とか。
演奏してても「1、2、3、ダーッ!!」が出てきたり、
モー娘。のあの曲の「フゥァフゥア」(文字に置き換えるのが難しいですね)が出てきたり。
そもそもパーカッション乱れうちってのは誰だって盛り上がるじゃないですか。
これは面白いものが見れるんだろうなあとワクワクした気持ちになる。
会場で会った後輩にも「これはすごいぞ」と語る。

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・・・のであるが、本編が始まってがっかりした。
僕にとってはひどく退屈なものだった。


前述のパーカッションと、金管楽器、ダンサー(ヴィジュアル・アンサンブルと呼ばれる)
3つの要素が絡み合って飛んだり跳ねたり躍動感溢れるステージを披露。
前半・後半50分ずつがいくつかのパートに分かれていて、それぞれが色をテーマにしている。
ヴァイオレットに始まり、ブルーが続き、グリーン、ブラック。


何が退屈かと言えば挙げていけばキリないんだけど、
□そもそもこのヴィジュアル・アンサンブルが平凡。
 色に合わせて旗を振ったり、杖のようなものを持ってたり、
 なんか蛍光のバトンのようなものを回したりするのだが、
 このご時世、余り刺激的な出し物ではない。
 テーマの色をモチーフにした衣装を着て踊ってるのを見てると
 どこの場面を切り取っても一頃のGAPのコマーシャルみたいだった。
金管楽器の人たちも一輪車に乗ったり側転したりあれこれやってくれるのだが、
 これも「だから何?」という感じ。
 どの曲にも振り付けがあってみんなで動きを合わせたり体を激しく動かしたりする。大変だ。
 でも、なんかこれ切れ味がなくて、
 会社員が週一で集まって定時後に半年練習しましたって程度のシロモノ。
 これぐらいならないほうがいい。演奏に専念してほしい。
 見る側もエンターテイメントとかショーマンシップとか
 そういう言葉を思い浮かべればいいんだろうけど、どうなんだろう。
 わざわざアメリカから来るんだからすごいものなんじゃないか
 という期待をかるーく裏切ってくれる。
 これなら踊ってくれなくていい。北朝鮮マスゲームの方がよほど芸術的に見るものがある。


つまるところ、どこをどう見ても僕にとっては中途半端。
踊りなら踊りを突き詰めるべきだし、
音楽なら音楽を突き詰めるべきだし、
クロバットならアクロバットを極めるべきだ。
それでいて、個々のパーツが「それなり」のものであっても
組み合わせた時のアンサンブルがすごい、ってことでもない。


いろんな音楽を聞き漁ってライブにも足を運んで、
今年は世界のいろんな有名なダンス・カンパニーの舞台を見てきた僕からしたら
ここで繰り広げられたものは「物足りない」では済まされない。薄味すぎて眠くなる。
歌あり踊りあり演奏あり、客席の通路を練り歩いて、素っ頓狂なパフォーマンスありなら
渋さ知らズオーケストラの大規模なライブを見た方が絶対心に残る。


結局何よりも音楽的にイマイチ何だよな。
確かにパワーがあったかもしれんが、純粋な音楽として「おお!」と唸らされる個所は一切無し。
前半部分ラスト近くのパーカッションだけになって横一列で打ちまくる場面、
天井からもスルスルと打楽器が下りてきて乱れ打ち、
さすがにここは気分が盛り上がる。原始的な感覚に訴えるものがある。でもここだけだったな。
前半と後半のラストの曲は「盛り上がろう」という雰囲気があってまあまあよかった。
あのテンションで最初から最後まで押してくれたらよかったのに。


つまるところ演出なのだと思う。そこに尽きる。
脚本がつまらん、というか脚本無しなんだろうな。

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他の人たちには面白かったのだろうか?
面白かったんだろうな。
僕の周りには部門の新人たちが座っていて、盛り上がっていた。


素直に楽しめない自分を悲しく感じた。