ハヤカワ文庫SF

最近のハヤカワ文庫のSFは毎月の刊行数が減った上に、
スタートレック」か「ローダン」の固定客のついたシリーズものばかり。
たまにそれ以外のものが出てきてもオースン・スコット・カードの作品がほとんど。
オースン・スコット・カードって今人気があるのだろうか?)
あとはフィリップ・K・ディックのとか。
ディックを信奉している僕からすれば何かしら刊行されるのは嬉しいのだが
過去に出ている短編集の編み直しみたいなもんで実はそれほどありがたいものではない。
(死後20年以上経過しているので、既にほとんどの作品が翻訳されているのではないか)


シリーズで言えば「デューン」(砂の惑星)の続編を
フランク・ハーバートの息子がもう1人作家と組んで続けていてこれまた毎月のように新作が出ている。
なんだか「筋肉マン2世」やコミック・バンチの「蒼天の拳」みたいで読みたいという気がしない。
ファウンデーション」の続きも
デイヴィッド・ブリングレゴリイ・ベンフォードグレッグ・ベア錚々たるメンツ、
SF界の重鎮たちが健筆を奮っているようであるが、やっぱ読む気がしない。
これらの作家も結局は20世紀の人たちって感じだし。
(ベンフォードなんて特に。まだ創作活動続けてたのか!?ぐらいに思った)


一頃「最近のハリウッド映画は当たった作品の2作目・3作目ばかり作りたがる」
ってことでなんだかなーとみんな思っていたのと少しばかり似ている。
シリーズ化してるもので囲い込んでなんとか売上を確保したい。
大丈夫か!?ハヤカワ。
とにかく今売れないんだろうな。SFって。


何年か前に出た河出文庫オリジナルのアンソロジー「20世紀SF」(これはとにかく素晴らしい)や
同じく河出書房の「奇想コレクション」シリーズ
(「ハイペリオン」のダン・シモンズシオドア・スタージョンエドモンド・ハミルトン
それにテリー・ビッスン。個人的にビッスンはとても嬉しい。今、スタージョンのを読んでる)、
最近だと国書刊行会の「未来の文学」シリーズ
(トーマス・M・ディッシュ、R・A・ラファティジーン・ウルフなど)、
というようにハヤカワ以外の方がSFとしては読むべきものがあるように思う。
文庫で言えば創元社のピンク色のSFの方が勢いがあるかもしれない。
過去の名作の復刻が多いが、通好みなものをピックアップしているように感じられる。


昔のハヤカワ文庫は海外の話題作や有望な新人の作品や話題作がずらーっと並んだ
「文庫」の名に値する立派なものだったのに。
去年だとコニー・ウィリスの「ドゥームズ・デイ・ブック」と
グレッグ・イーガンの「しあわせの理由」と
テッド・チャンの「あなたの人生の物語」ぐらいかな。「おお!」という作品は。
別にスタートレックがダメなわけではないんだけど(とは言っても読んだことはない)
なんだか寂しいわけで。


古本屋を見つけるたびにハヤカワの絶版になっているのでなんか珍しいのがないか探している。
そんなことを3・4年続けていて、今部屋の中には100冊以上、未読のが積まれているはずだ。
アーサー・C・クラークのかなり昔のやつとか、
今も昔もあんまり聞いたこともないような作家の1冊だけ翻訳が出たのとか、
そんなのを会社の行き帰りに細々と読んでいる。
「他にすることがない」「他に読みたいものがない」って感じで惰性でSFを読み続けている。
抜け出せない。抜け出そうという気力がない。


そんなわけである意味僕の頭の中はいまだに20世紀のままだ。
20世紀のどこかの年代で夢や現実と思われたものに対する着想を
味のしなくなったガムのように噛み続けている。
僕が今暮らしているこの現代社会においてこれらの小説ははっきり言って何の役にも立たない。
実用的な価値をもつことはなく、ただの暇つぶし程度のものにしかならない。
読んだ感想を誰かと話し合うことすらできない。


・・・だからそれゆえに僕は次の作品を手に取ってしまう。
1人きりの時間と空間に閉じこもるために。


ちなみに、ハヤカワ文庫SFの作品一覧を調べるのなら以下のサイトが便利。
http://homepage1.nifty.com/HAG03057/
新しいのが出版されるたびにこまめに更新されていて、この人偉いなあと思う。
だけどディックを一切評価してないようだ・・・。