人類は実験室の中で作られた

人類は実験室の中で作られた。
もちろんその実験室とは宇宙船の中だ。
温暖湿潤な惑星を見つけると彼らは、より大きな実験室として
後に自らを「人類」と呼ぶ種をそこに置き去りにした。


宇宙船の中、保育器のガラスの向こうに立つ彼らのおぼろげな記憶がDNAに刷り込まれ、
その後何千年・何万年とかかって「神」という形質へと形作られていった。
自分たちの住む場所の外にあって、自分たちを超越したもの、そういう位置付けとなる。


アダムとイヴは抽象的な概念などではなく、実際に存在した。


人類は見捨てられた実験室/惑星から自ら離脱する可能性を常に求め続けてきた。
夜空の星を見つめて神話を語ることから始めて、
打ち上げられた探査機が太陽系を離れるまでになった。
その金属の筐体の中にはまだ見ぬ「神」へのメッセージが託されている。
人類のこれまでの歴史は、「神」への憧れの歴史と言ってもいい。


我々人類はその神様に会いに行くことこそがその使命である。
彼らの何十年・何百年も前の行いに対して報いなくてはならない。
彼らなしには我々人類は存在し得なかったのだから。

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例えばこういうようなことをもっと長大に発展させたものをネット上のどこかに公開しておく。
「お告げ」と称して。気が遠くなるほど長くて、文章が難解だといい。
1パラグラフだけで10万字あるというようなパラノイア的なもの。


これを宗教として始めたら、信者ができたりしないかな。あくまでいたずらだけど。


「フハハハハ。この人マジで信じてるよー」って笑い飛ばしたいだけなのだが、
中には非常に狂信的な人も出てくるんだろうな。
「私も前世では同じことを考えていました。あなたのような同志と出会えて、
(中略)この星を、いや、銀河系を我々の手で正しい方向に導きましょう。
戦士としての私の名前は(後略)」
とお手製のパンフレット(あるいは自作のマンガ)を送ってくるような。

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半年に一回ぐらい、「お告げ」を更新する。
どんどんヒステリックなものにしていく。


うまくいったりして。


いつの日か一人歩きを始めてしまう。
現実的な活動を取り仕切る人があらぬところから出てきて宗教活動として定着するとか。
僕が書いた「お告げ」を
「あれは私が瞑想に耽っていたところまばゆい光と共に超越者が私の目の前に現れ」
とかなんとか勝手に言い出す人が出てきて教祖におさまったり。
(僕はもちろん陰で眺めてて「ブハハハハ」と笑う)


儀式の制定。
年に1回、真夜中に山奥で執り行う祭りとして、火を囲んで
「古来より綿々と受け継がれてきた宇宙への憧れを表す踊り」だとか。
適当な日付を選んで(6月12日とかすさまじく当り障りの無い日)
この日、人類は宇宙船から地球へと播種された、とか。


ロケットをかたどったペンダントや、
「宇宙力」を秘めたミネラルウォーターの販売。


UFOとはなんだったのか、
どのようなメッセージを人類に伝えようとしたのか、・・・に関するシンポジウム。


東京ドームで教祖の聖誕祭が行われたら、本物。