10月の日曜、雨

目が覚めると雨が強く降っている。屋根を打つ音が聞こえる。外は寒そうだ。
布団の中でまどろみながらとある女の子のことを考えた。
なぜ思い出したのかは分からない。
夢の中に出てきたのかもしれない。
ここ何年か思い出しもしなかったのに、
なぜか今日の朝になって急に磁力のようなものを感じる。


今、どこにいてどうしてるのだろうと思う。
考えたところで答えは何も出てこないんだけど、とりあえず考える。
会社変わったんだよな、とか
何年か前に名前を見かけたときは苗字が変わってなかったな、とか。
結婚してるよりもしてない確率の方が若干高そうだ。
そういうこと。特にこれと言って意味を成さない情報ばかり。


どこにも行き着かなくなって、このまま考え続けることがばかばかしくなる。
しばらく他の事を考える。考えようとする。だけどすぐ戻ってきてしまう。
これまでの接点について考えだす。
あったようななかったようなこれまでの接点。
あのときこうしてたらどうなっていただろうか、というようなことも思い巡らしてみる。


ああ、今、どこにいてどうしているのだろう?
東京にはまだいるのだと思う。
・・・偶然会うようなことってあるだろうか。
あるのかもしれないし、ないのかもしれない。
偶然会ったとき、彼女は僕のことを覚えているだろうか?
僕は何を言うだろうか、何を言うべきなのだろうか。
僕はどうするだろう。


平日か土日か、昼間か夜かで違うんだろうけど
彼女に時間があったらとにかく僕は近くにコーヒーの飲める場所があったらそこに誘って
お互いの近況の話をして共通の知人の消息を聞きあって
その間に手探りでいろんなことを知ろうとするだろう。
話の流れを「いやーなつかしいねえ」だけでは終わらないようにするだろう。
そしてまた会おうとするだろう。


もう1度書くけど、ここ何年か思い出しもしなかったのに、
なぜか今日の朝になって急に磁力のようなものを感じた。
いったんその人のことが気になりだすといてもたってもいられなくなった。
これはどういうことなのだろう?
そのうち会うことになるってことだろうか。そんなわけないよな。


どういう友達がいてどういう話をして、
例えば休みの日にはどういうことをしているのだろう。
職場ではどういうポジションで、周りの人からはなんて呼ばれているのだろう。
どういう鞄を持っていて、どういう靴を履いているだろう。
映画は見るのだろうか。何を見ただろう。


朝からずっと雨が降っていて、外に出られない。
部屋の中で1人きり過ごしていて今日は特にすることもない。
ぼんやりとしている。



全て、忘れてしまおう。