Frozen Beach (revisited)

目が覚める。
いつものことながら体中が軋むように痛む。喉の奥がざらついている。
眠りともつかない眠り。
電源がオフになって切れた後、何時間かしてまた電源を入れられたかのようだ。
今日もまた僕は死ぬこと無くこの世界で目を覚ました。
ありがたいと言えばありがたいし、最悪と言えば最悪だ。
ダイスケは死んでしまったのに、僕はまだ生きている。
ダイスケが死んでしまって何もかもがよくわかんなくてわけがわかんないのに、僕はまだ生きている。
虚脱感であるとか、憤りであるとか、どのように言っていいか難しいこの薄暗い気持ちであるとか、
そんなのをどれだけ抱えていたところでいつものようにこの体は朝を迎えようとする。
不思議なもんだ。そう思った。


ダイスケの体をトランクに移したので後部座席は広くなった。
だけどその分その開いたスペースには
停滞した、澱んだ、うっすらとした死の匂いが漂っているような気がした。
だけど実際には気温の低さから、
車の中にも否応なしに忍び込んでくる冷たい外の空気のおかげで、何の匂いも感じられない。
むしろ何の関係も無い、イチゴのジャムのような甘ったるい匂いだけがした。
(この匂いはどこから入り込んできたのか、1週間近く染み付いていた)
僕は昨日の夜からヨウコと席を変えて、ダイスケがもう何日もうずくまっていた辺りで眠った。
ダイスケの体がここにあったかと思うとぞっとした気持ちにならなくも無かったが、
すぐにもどうでもよくなった。
だけど「ダイスケの肺が最後に吸い込んで吐き出した空気を僕は今呼吸している」
そんなことを考えた瞬間、何かが、名前の呼びようのない何かが、
たまらなく恐ろしいものとして感じられた。


寒さに体が震えた。
指の先を動かすことから始めて、全身をもぞもぞさせた。
外はなんだかわずかばかり明るかった。
僕は毛布を脇に押しやり、ジープの窓ガラスを袖で拭った。
厚い雲の重なりに隙間ができて、太陽が弱々しい光を放っていた。
「おい、見ろよ」僕はヨウコを揺り動かして窓の外を見せようとした。
ヨウコは「・・・」と何かを呟いたんだけど、聞こえなかった。
ヨウコが目を開けてその焦点が定まるまで、とんでもなく長い時間がかかったような気がした。
いつもそうするように右手の甲で顔をぬぐって次に左の手で顔をぬぐった後、
「フアー」と小声であくびをした。
起き上がるとヨウコは「んー・・・?」と言いながら僕の側の窓へと体を伸ばす。
その次の瞬間「わー!!」と声を上げた。
この声で運転席のリョウジと助手席のミユキも前を覚ました。
「どうしたんだよ?朝っぱらから」
太陽、と僕は言う。
「出てるよ」


4人で外に出た。風も無かった。
「何日ぶりだろう。や、何ヶ月ぶりだろう」リョウジが呟く。
砂の上に僕らの影がうっすらとできていた。灰色の上の灰色。
引き伸ばされて形と言えるものはなくなっている。
白い光が、空に浮かんでいる。