Sonic Youth のビデオを見る

旧体育の日。
台風一過の今日、あちこちで延期になった運動会が行われているのだろうか。
東京は朝から曇りで今にも雨が降りそう。


昨日の台風は東京直撃したものの中では最大級のようだが、
ずっと部屋の中に閉じこもっているとその大きさが分からない。
雨も風もものすごく強かったが、気が付いたら消えてなくなっていた。

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会社の先輩から借りた Sonic Youth のビデオを2本見る。
輸入物の「Goo」と「Screaming Fields of Sonic Love」
前者はメジャーのゲフィンと契約してからの第1作目「Goo」の全曲に映像をつけたもの。
後者はそのメジャー移籍前のクリップを集めたもの。


「Goo」
アルバム全曲に映像をつけるなんて当時(1991年)としては画期的なアイデアなのではないだろうか。
アルバム全曲をライブで演奏して、それを記録したものでない限り。
最近のバンドでは Super Furry Animals がここ何作かでやってる。
(僕も買って見てみた。曲ごとに若手映像作家に好きなように作らせていた)


曲によってはキム・ゴードンやスティーヴ・シェリーが自ら監督している。
プロデュースのほとんどがバンド名義。
その他のはたぶんニューヨークで映像を作っている友人たちに任せたものなのだろう。
正直どれもそんな面白くはなかった。
10年も前ともなると風化してしまうのか。
ニューヨークのアート・シーンにリンクし続けたバンドのクリップなのだから
時代に関係のない普遍的なものになってるかといえば、そんなことはなかった。
基本的にはバンドのメンバーが映ってたり映ってなかったり演奏してたりしてなかったりという映像と
一見関係のなさそうなイメージ映像が
チカチカと数秒単位でコラージュされるというよくありがちなもの。
画像が荒かったりカラフルだったり、
イメージ映像が何のメタファーなのか(ま、たいがいは単なるイメージに過ぎないんだけど)、
出てくる友人たちが誰かの違いがあるだけ。
要するに21世紀の今見ると「おお!」「すげえ」と思う瞬間はなく、刺激的なものではない。


当時の記録として割り切って眺めるなら面白いが、ロックの歴史に名を残すようなものでもない。
ビデオはとっくの昔に廃盤になってる。
この間発売された DVD のビデオクリップ集に全曲収録されているようだ。


まあそんなわけで映像はつまらないんだけど
アルバムとしての「Goo」は Sonic Youth の中では一番好きだったりする。
まとまりすぎてておとなしい作品という扱いになっていて
前後の「Daydream Nation」「Diry」の方が評価が高い。
でも僕はリアルタイムに聞き始めたのがこの「Goo」からで高校2年の冬だった。
初めて「Dirty Boots」を聞いたときの衝撃は忘れられない。


それにしてもアルバム全曲に映像をつけたビデオを製作して販売するって
レーベル側・バンド側どちらのアイデアだったのだろう?
ここまでやる気のあった、トリッキーなメディア露出に取り組む意欲・余裕のあった
Sonic Youth はこれが最後で、
以後はストイックにアルバムの製作とライブ活動に専念することになる。

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「Screaming Fields of Sonic Love」


収録されている曲は初期のアルバムから
「Death Valley '69」「Shadow of a Doubt」「Beauty Lies in the Sky」
「Addicted To Love」「Macbeth」
「Daydream Nation」から「Teenage Riot」「Silver Rocket」「Providence」「Candle」
という構成。
テレビ番組用のスタジオライブを2曲と、ライブの映像を2曲追加で収録している。
どちらも「I Wanna Be Your Dog」を演奏していて、後者はなんとイギー・ポップと共演。
(1987年、ロンドンでのライブ)


クリップとしては稚拙で画質も悪いようなそんなシロモノなんだけど、
こっちの方が見てて面白かった。
演奏してるシーンが長いし。
80年台後半の Sonic Youth の演奏って神がかってたんだろうなーということが伺える。
観てた人がいたらうらやましい。
イギー・ポップとのやつなんてもうとんでもない。
ギターノイズのぶつかり合いが美しくて荒々しいアートとして成立するのだから
すごいとして言いようがない。
放たれるエネルギーの瞬間最大風速で言ったらこの当時世界一だったのかもな。


Kevin Kerslake という人の監督した
「Shadow of a Doubt」「Beauty Lies in the Sky」はどちらも詩的な感覚があってよかった。
調べてみたらこの人、その後ニルヴァーナレッチリスマパンも手がけていた。
ストーンズの「I Go Wild」なんてのも。


本編終了後にまだ幼い子供たちが「Goo」の曲を歌い踊る映像がおまけでくっついている。
スタッフの子供たちなのだろうか。なんだかほほえましいが、ちょっと不気味。

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見てて興味深いのは「Goo」も「Screaming ...」も
サーストン・ムーアはほとんど前に出てくることはなく、
紅一点キム・ゴードンばかりがフィーチュアされているところ。
サーストン・ムーアって普段はシャイな人なんだろうな。