恐怖症

女性というものがよくわからない。
思春期から今に至るまでずっとそう。
怖いがゆえに近づけない。
まともに話ができない。手を握るなどもっての他。
そこから先のことなんて、何をどうしていいものやらさっぱり。
もっと若い頃は何かしら知ってたかもしれないけど、もう忘れました。


最近は女性に関するあらゆる物事に関して、中学生並にドキドキしてしまう。
たまに話しかけられたとき、その内容がどういうものであれ、
「その資料を取ってもらえますか」というものであっても、ドキドキしてしまう

平静さを装って「ああ、これ?」と手渡すものの心の中ではしっかりと怯えてい
る。
満員のエレベーターの中で僕の体のすぐ側に女性の体が近付いてたりすると
どうしていいかわからなくなる。
その人のつけている香水の類が感じ取れたりするともうだめだ。
夜眠れなくなってしまう。罪の意識に苛まれて。


それでいて常に気になっている。仕事も手につかない。
どんなふうに話したら、どんな内容のことを話したら、
女の人たちは喜んでくれるのだろう?
どんなことをしたら、どんなことをしなかったら、
女の人たちは嫌がるのだろう?


僕は毎晩テレビを見て、
テレビの向こう側のきれいな女の人たちは
どんなことをされたら嬉しいのだろう?と考える。
この僕に何ができるだろうと考える。
この僕を見てどう思うだろうと考える。
そこから先、僕はいつだって絶望しる。
きれいな女の人たちは僕のことを肯定的に捉えはしないこと。
そして現実の世界ではそういうテレビの向こう側のきれいな人たちが
この僕となんらの接点もないのだということ。


いっそのこと、この世界は僕みたいな男ばかりになってしまえばいい。
みんな1人きりでポツンと生きていけばいい。
そうなったら(コウノトリが運んできてくれない限り)子供というものが生まれ
なくなって
そしたら、この世界は滅びてしまえばいい。


こんな世界なんて、なくなってしまえばいい。


神様はどうして男と女を作ったのかと恨めしい気持ちになる。
そんなややこしいものを作るべきではなかった。
アメーバのように分裂するだけでいいじゃないか。
何百万年か前にこの地球にいた誰かってのは僕そのものであって、
今この地表を覆いつくす大勢の誰かってのもみんな僕だ。
永遠にみんなみんな僕だ。
そういう方がいいじゃないか。


女性というものがよくわからない。
思い返してみれば思春期どころの話じゃなく、幼稚園からしてそうだった。
僕は誰とも話ができなかった。
ぬいぐるみと植物とブロックを相手に架空の会話を交わしていた。
基本的に僕はその頃の自分とあんまり変わっていない。


こんな僕はいったい何が欠けているのだろう?