潜水艦

不審な潜水艦が日本近海を潜航中。自衛隊のヘリが今も追い続けている。
国籍不明とされているが中国という説が濃厚。
(僕は最初、北朝鮮の潜水艦かと思った。
 もしかしたら彼の国は原子力潜水艦をたくさん持っていて、
 世界中をバシャバシャと泳ぎ回っているのかもしれない)


潜水艦って言うと思い出すのであるが、
僕が中学校に入るか入らないかの頃、80年代末のことだ、こんな話を聞いた。


ソ連の潜水艦が津軽海峡から陸奥湾に入りこんでいて、いつも監視している」
「何隻も何隻も潜行している」


米ソはまだ「冷戦」中にあった。
ソ連というとなんだか冷酷な怖い国という印象があった。
共産主義ってのが得体が知れなくて、青森よりもはるかに寒そうで。


中学生の僕は釣好きの友人と一緒に自転車に乗って近くの港に出かけると
防波堤を走っていって陸奥湾を眺めた。
青森を訪れたことのある人ならば雰囲気がわかると思うが、陸奥湾は大きな湖のようだ。
目の前には確かに灰色の波が寄せては返しているものの
その向こうには下北半島がなだらかに広がっている。
「ああ、この狭苦しい領域を潜水艦がひしめき合っているのか」


僕は暗い海の底で真っ黒な潜水艦がソナーを飛ばしあっている光景を思い浮かべた。
ソナーを飛ばすっていうのがどんなのかよくわからんので
アニメっぽい音波が僕の中で水紋のように広がっていった。


目の前の海の底では言葉の通じないロシア人たちが
何十人・何百人といて、みな黙々と軍隊っぽく持ち場についている。
どこかの部屋ではウオッカを飲んで陽気に騒いでいる。
肌の白くて茶色い髪をした、屈強な男たち。
(なぜかわからんが僕らの中で彼らは青い横縞のシャツを着ている)


その後僕は潜水艦に乗って世界を一周する旅のことを考えた。
普段は深い深い海の底にいて、時々海面に浮上してハッチを開けて新鮮な空気を吸う。
波間をプカプカと漂ってサンサンと降り注ぐ日の光を浴びる。


どうしたら潜水艦に乗れるのかな、と思った。
僕も乗せていってよ、連れて行ってよ、と。


今ではさすがにそう思わない。
映画だと例えば「Uボート」なんかを見ると過酷な生活環境のようだし。
でも、乗れるのなら1度乗ってみたい。
そういうツアーってないのかな。
アメリカだと前、ニュースで聞いたことがある。
自衛隊の訓練船にぶつかって問題となった例のやつ)