交通事故を目撃する

昨日というか今日、夜間の仕事が一段落ついて
午前3時にデータセンターを出てホテルに戻ろうとトボトボと歩いていたら
キキーッと大きな悲鳴のような音がした。
見ると暴走した車が植え込みをまたいで反対車線に突入。
そのまま曲がり続けて道路と直角になった瞬間、何かに激突。
ガシャーンとかバリバリとかズドーンとかそういうのが全て入り混じったような
とにかく何かが壊れてダメになるような音が聞こえてきた。
僕には止まっていた車にぶつかったように見えた。


即死だろう?


と僕は思った。こんなときとっさに体が動いてなんかをするのって難しい。
現場に近寄るとか携帯で警察を呼ぶとか。
あっけに取られてそのまま立ち止まって口を開けて眺めていたら
いきなり事故った車がバックして反対車線をそのまま逆方向に走って消えていった。
白い大型のジープ。


なんだあれは?


すぐ側にはコンビニのトラックが止まっていて、
配達の人が同じように口を開けて眺めていた。
どうしようかと思う。
視線を合わせるようでいて、微妙に反らす。
一度目が合ったが最後、
「何があったんでしょうね?」「警察に連絡しましょう」ということになりそうだったからだ。
午前3時という時間。この1週間ほとんど寝てない。


「関わりたくない」


と僕は思った。背を向けると何事もなかったかのように歩き出した。
ホテルに帰るとシャワーを浴びて寝た。
明日もまた普通に仕事だ。


寝ながら、どうしようかと思う。
普通だったら通報するべきなんだろうな。
でもたぶんあのコンビニの配達の人がしてくれたんじゃないだろうか。
僕が付け加えるようなことは何もない。


次の日の朝起きて、「そうだ」と事故のことを思い出す。
データセンターに向かう途中、現場の近くまで行ってみる。
植え込みがメチャメチャになっていて、割れたライトの破片が散らばっている。
どうやら事故は本当にあったようだ。
だけどそういった残留物を除けば付近一帯はまるで何事もなかったかのように見える。
いつも通りの朝、いつも通りの一日。
僕はそのまま歩き去ってデータセンターの中に入っていって、仕事を始めた。
届いたメールを読んで、データの確認を行った。


善良な一般市民として僕は警察に連絡するべきなのだろうか?
だけど何かにぶつかったという他、特に被害は無さそうだった。
無謀な運転をしていた例のジープに乗っかっていた人たち以外には。
法律的に罰せられるとしたら器物破損?


どうするべきなんだろう。