暗闇を見る

昨日1つトラブルが片付くと入れ替わりでまた新しいトラブルに巻き込まれる。
昼間疲れきってホテルで寝ていると携帯が鳴ってあれこれ聞かれたり言われたりする。
この日は何度か立て続けにかかってきて精神的にぐったりきた。


15時に眠って18時に誰かから叩き起こされた。
それが誰だったのかは今となっては覚えていない。
18時。外は既に暗くなっている。部屋の中も真っ暗だ。
僕は暗闇の中で手を伸ばし携帯を取って話をする。話が終わる。


携帯をどこかにそっと放り投げてそのままベッドの中に横たわる。
目は開けたまま。
僕は暗闇の中に1人取り残されていることを知る。暗闇。
僕はすることもなく部屋の中を見つめる。
どれぐらいの時間の経過が必要となるのか。
やがて目が慣れ始めて事物の輪郭が捉えられるようになる。
天井近くに据え付けられたエアコン。
壁に掛けられたダウンジャケット。
直角に折れ曲がった壁の境目。
その頃には町の喧騒が聞こえ始めている。
信号が青になって車が通り過ぎる。
若者が遠くの誰かに向かって何かを叫んでいる。


あらゆる物音が携帯(とメール)の着信音に聞こえる。
鳴ってると思って携帯を見ることが1日に何度もある。
鳴ってもいない音が聞こえる。聞こえている。