Tuxedomoon

amazon.co.jp でオーダーした中古CDが届く。
『the night watch an LTM compilation』
前から探していた。Tuxedomoon のアルバム未収録の珍しい曲が入っているから。
「Shelved Dreams」
「I Was an Apple in the House of Orange」


なお、このCDには他には Josef K とその中心人物 Paul Haig の曲が収録されていて、
ウイリアム・バロウズジャン・コクトージャック・デリダの語りも入っている。
LTM というレーベルは去年知ったのだが、
Tuxedomoon 関係の再発をよく行っている。メンバーのソロとか。
Crepuscule とレーベルとしてなんらかの関係がありそうだ。
Tuxedomoon は Crammed Disc からアルバムを発表していたが、
Crepuscule からもシングルの発表を行ったりしていた。


このCDが手に入ることによって、Tuxedomoonの珍しい曲の収録されたCDで
手に入りそうなものはたいがい手元に揃った。
ここに至るまでかなりの年月を要した。


他に僕が持っているものを挙げると、


□V.A. 『Made To Measure Vol.1』(Crammed Disc)
 「Fanfare」
 「No One Expects The Spanish Inquisition」
 「Driving To Verdun」


Crammed Disc の「Made To Measure」シリーズの記念すべき1作目。
当時の Crammed Disc の代表的なグループの曲が集められていて、
他には Minimal Compact / Benjamin Lew / Aksak Maboul この3組。
このCDの3曲も一昨年出た「Soundtracks / Urban Leisure」(2002 / LTM)
に全て収録されたので、Tuxedomoonマニアにとってのお宝度はかなり下がった。



□V.A. 『Ghosts of Christmas Past』(Les Disques Du Crepuscule)
 「Weinachts Rap」


クリスマスをモチーフにしたオムニバス。ネオアコ系が中心。他には、
Aztec Camera / The Pale Fountains / Paul Haig /
The Durutti Column / Cabaret Voltaire / Michael Nyman
などなど。
※Tuxedomoonのディスコグラフィーとなると
 http://www.joeboy.de/ が詳しいが、
 ここで挙げられている同じ Crepuscule の『The fruit of the original sin』収録の
 「The next best thing to death」はTuxedomoonではなく、
 ヴォーカルの Wintong Tong のソロだった。
 これも中古屋で見つけて即買ったのだが、
 DNAの曲やマルグリット・デュラスの朗読が入っていてなかなかいいオムニバスだった。

 

□Blaine L Reininger 『Broken Fingers』(LTM)
「Birthday Song」(demo 1983)
「Nur Al Hajj」(live 1988)
 ※『ten years in one night』収録の
  「Courante Marocane」と同一トラックと思われる。
「Broken Fingers」(live 1982)


Tuxedomoon 中心メンバー Blaine L. Reininger の1982年発表のファーストソロ。
Peter Principle / Steven Brown の2人も参加している。
ボーナストラックとして Tuxedomoon の曲が追加収録されている。



□(Soundtrack) 『Downtown '81』
 「Desire」(アルバムとは別バージョン)


ジャン=シェル・バスキア(本人)がニューヨークのダウンタウンを徘徊し、
アンダーグラウンドなロックシーンを紹介するというドキュメンタリーのサントラ。
映画の方では DNA, James Chance, Kid Creole & The Coconuts といったバンドの
演奏している姿を見ることができる。それだけでも一見の価値あり。
Tuxedomoon も「Desire」を演奏している。
動くTuxedomoon を見ることのできる唯一の公式な作品かもしれない。



その他珍しいところでは僕はこんなのも持っている。
□V.A. 『Ralph Records 10th Anniversary Radio Special with Penn Jillette』


初期 Tuxedomoon の作品を発表していたサンフランシスコのレーベル Ralph の
その名の通り10周年記念のラジオプログラムをCDにして復刻したもの。
Tuxedomoon の曲もかけられるが、ここでしか聴けない曲というわけでもない。
(何の曲かは忘れた・・・)


他のアーティストは The Residents / Snakefinger / Fred Frith /
Yello / Renaldo & The Loaf / MX-80 Sound / Chrome / Art Bears
と非常に豪華。
Ralph にはTuxedomoon, Residents, MX-80, Chrome
それぞれ「思い出のサンフランシスコ」をカバーした
『Subterranean Modern』の再発を何よりも望む。
まあどのバンドもアルバムのボーナストラックに入ってたりして
なにげに全曲持ってはいるのだが。
再発されたら『No New York』なみの出来事だと僕は思うんだけど。



あと、これも目新しい曲は入ってないんだけど、
□(Soundtrack)『Wings of Desire』
 「Some Guys」


いわゆるヴィム・ヴェンダースの「ベルリン天使の歌」
ヴェンダースの音楽フリークぶりは
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」や「Blues Project」を見るまでもなく
サントラに選ばれた曲からわかるのは有名な話。
このサントラで他に使われてるのは、
Minimal Compact 「When I Go」
Nick Cave & The Bad Seeds 「From Her To Eternity」
Crime & The City Solution 「Six Bells Chime」
Laurie Anderson 「Angel Fragments」
Nick Cave の演奏シーンが出てくるのは必見。吠えるように歌っている。

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日本でここまで揃えた人ってあんまりいないんじゃないかな。
(もしかして僕と評論家の大鷹俊一ぐらいか!?)


オカムラ君たくさんCD持ってるらしいけど何が1番好きなの?」
みたいな質問をたまに受ける。
その日の気分や聞いてきた人の好みや詳しさに応じて
U2 だったり Sonic Youth だったり The Doors だったりと答えるんだけれども
実は本当に心の底から好きなのは Tuxedomoon という普通の人は絶対知らないバンドだったりする。
高校2年の冬に「Holy Wars」のジャケットに惹かれて買って以来不動のNo.1で
たぶんこれからもずっとそう。
割と深くロックに詳しい人ならけっこう知ってるんじゃないかな。名前だけは。
その手の音楽が好きな人ならかなりはまる。
岡崎京子の漫画「東京ガールズブラボー」でも
夜の東京を歩く主人公に「タキシードムーンいいのう」と言わしている。
ジャンルで大きく括っちゃうと80年代ニューウェーブってことになるのかな。
70年代にサンフランシスコ界隈で活動して
80年代に入ってからは大西洋を渡りブリュッセルに活動の場を移す
という特異な経歴を持ったグループ。

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ついでなんで、ディスコグラフィーを。
日本では渋谷のHMVぐらいでしかたくさん扱ってないのが残念。


『no tears』(1978 / Crammed Disc)
 初の12"ということもあって、個別に再発されている。


『Half Mute / Scream With a View』(1980 / 1971 / Crammed Disc)
 1stアルバム。初期の12"を追加収録。
 恐らくメンバーのたちの間で最も気に入られてるのでは。
 後代のライブではこのアルバムからの曲を演奏することが多いようだ。


『Desire / No Tears』(1981 / 1978 / Crammed Disc)
 2ndアルバム。初期の12"を追加収録(上に掲げたものと同じ)。
 初期の集大成。代表作とされることが多い。
 昨年 Crammed Disc が代表的なアーティストの代表的な作品を
 1枚ずつピックアップして再発するというシリーズを行っていたが、
 Tuxedomoonで選ばれたのはこのアルバムだった。


『Suite En Sous-Sol』(1982 / Crammed Disc)
 80年代前半に発売された3枚の12"を1枚のアルバムにしたもの。
 「Courante Marocane」「Time To Lose」「Music #2」「The Cage」
 など代表曲が多い。
 室内楽的な曲、中近東風の曲などなどバラエティーに富んでいて
 Tuxedomoon の特異な世界観が非常に強く現れているのでお薦め。
 全般的に漂うのは「放浪」のイメージ。
 (Tuxedomoonのアルバム全てがそう言えるが)


『Divine』(1982 / Crammed Disc)
 モーリス・ベジャールのバレエのために書き下ろした作品を集めたもの。
 Tuxedomoon の耽美的な色彩が最も色濃く出たアルバム。
 バレエはグレタ・ガルボの生涯をモチーフにしたもので、
 グレタ・ガルボの声を曲中にサンプリングしているのが印象的。


『Holy Wars』(1985 / Crammed Disc)※
 創立メンバー Blaine L. Reininger 脱退後の作品。
 スケールの大きさ、この世界のどこにもない音楽の確立という点では
 僕はこれが最高傑作だと思う。
 1曲目「The Waltz」の最初の1音だけで好き嫌いがはっきりすると思う。
 それぐらい個性の強い音の群が現れては消えていく。


『Ship of Fools』(1986)※
 Winstong Tong も去り、Steven Brown 色の強くなったミニアルバム。
 前半はファンキーで、後半は Steven のピアノソロ。


『Pinheads on the Move』(1987 / Crammed Disc)※
 初期のサンフランシスコ時代を集めたコンピレーション。
 「I Left My Heart in San Francisco」
 「I Heard It Through the Grapevine
 「In Heaven」
 といった他のアーティストのカバーが入っているのがその後と比べて珍しい。
 「In Heaven」は pixies もカバーしているが、
 デヴィッド・リンチの「イレーザー・ヘッド」から。


『You』(1987 / Crammed Disc)※
 ラストアルバム。
 映像担当の Bruce Geduldig が中心となって作られた
 「Box Man」という組曲が収録されているが
 これは阿部公房の「箱男」にインスパイアされたもの。


※のアルバムは80年代終わり頃に徳間ジャパンから日本盤が発売された。


『The Ghost Sonata』(1991 / Crammed Disc)
 『Divine』の経験を元に、1982年、Tuxedomoon 自ら音楽劇を試みる。
 そのときにサウンドトラックを再録音したもの。
 舞台にはメンバー自ら出演し、演奏はオーケストラを伴っていたらしい。


『ten years in one night (live)』 (1992 / Les temps modernes)
 1988年の再結成ツアー(日本も訪れている)の録音を中心とした2枚組ライブアルバム。
 「The Waltz」「In a Manner of Speaking」「The Cage」
 「Desire」「Pinheads on the Move」「No Tears」
 「In Heaven」「Nazca」など代表曲を網羅している。
 なお、jimco より発売された日本盤は1枚組で3曲少ない。
 ちなみにカットされたのは、
 「Reedin' Rightin' Rhythmatic」「Dark Companion」
 「In the Name of Talent (Itallian Western Ⅱ)」


『solve et coagula the best of Tuxedomoon」(1993 / Crammed Disc)
 ベストアルバム。『ten years ...』とだいたい同じような選曲で、
 『Half Mute』からの曲が多いという印象を受ける。
 「Dark Companion」「59 to 1」が Peter Principle によるリミックス。
 恐らく、1980年に Ralph から 出されたシングルではないか。
 「you(chrstmas mix)」 は後期 Tuxedo Moon に在籍していた
 マルチ・ホーン・プレイヤー Luc Van Lieshout によるもの。


『Joeboy in Mexico』(1997 / Opcion Sonica
 突然メキシコのレーベルから発売されたアルバム。
 Steven Brown を中心にメキシコで録音されたようだ。
 アルバム上には特に Tuxedomoon の名前はない。
 解散後 Tuxedomoon のメンバーは全世界に散らばって
 それぞれ音楽活動を続けている。これはその一環か。


『No Tears / What Use Remixes & Originals』(2000 / Gigolo
 初期の曲をリミックスしたもの。
 「オリジナルの方がいいよねえ。。。」という感想以外なにもなし。


『Live in St.Peters』(2002 / Neo Acustica)
 2000年に行われたサンクトペテルブルクでのライブアルバム。
 メンバーは Steven Brown, Blaine L.Reininger, Peter Principle の3人。
 2003年の復活を見越したリリースか。
 曲目は『Half Mute』が中心。
 「Desire」「Fifth Column」「Nite And Day」「Nazca」
 「59 To 1」「The Cage」「Litebulb Overkill」など。
 5000枚限定。(僕は768番)


『Cabin in the City』(2003 / Crammed Disc)」
 昨年突然発表されたニューアルバム。
 ゲストは John McEntire , Aksak Maboul, DJ Hell など多彩。
 Tortoise や Sea and Cake での活動で有名な
 John McEntire の名前を見ると、ああ、Tuxedomoon は
 いろんなミュージシャンに影響を与えているのだなあと感慨深くなる。
 このときのレコーディングを撮影したDVDが発売されたようだ。



メンバーのソロまで行くときりがないので、ここでは割愛。
1つだけ紹介すると、


Crammed Disc のオムニバス/サントラで
『Fuck Your Dreams, This is Heaven』
 シド・ビシャスに関する映画だったようだ。
 Peter Principle, Steven Brown, Bruce Geduldig が曲を提供していて
 各々コラボレーションをやっているのだから、
 Tuxedomoonでやればいいのに!と思うのは僕だけじゃないはず。
 Minimal Compactも曲を提供している。
 Germany盤のみ Winston Tong のソロがボーナストラックとして収録されている。


【参考にしたサイト】
http://www.crammed.be/tuxedomoon/index.htm
http://www.joeboy.de/