(Scene17)

(Scene17)


回想/イメージ/あるいはそれ以外の断片。


舞台装置なし。何もない空間だけが広がる。


暗闇。


子供たちが輪になって「かごめかごめ」で遊んでいる。
円の中心には少女。両手で目を隠して、所在なげに立っている。
子供たちは歌いながら、笑いながら、無邪気にクルクルと回る。


かーごめ かーごーめー
かーごのなーかのとーりーはー
いーつーいーつーでーあーうー
よーあーけーのばーんにー
つーるとかーめがすーべったー
うしろのしょうめんだーあーれ


(あなたはこれが流産と失われた胎児に関する歌だと知っているだろうか?)


少女は○○ちゃんと名前を言う。
恐る恐る両手を下に下ろして目を開ける。
(その間、子供たちはさーっと音もなく舞台から四散する)


そこには誰もいない。
少女だけが1人取り残された。
不安そうに右を、左を、見る。
泣きそうになる。
何も言わず、逃げるようにその場から消える。

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より分かりやすいイメージ。


舞台の上を大勢の人々(主に大人たち)が歩いている。
左右入り乱れるのではなく、皆が一定の方向に向かって歩いている。
早足で。少女は軽く押されたり、小突かれたりする。
戸惑う。人の流れに取り残される。


人々の群が通り過ぎると少女は一人きりになる。
少女はキョロキョロと辺りを見回す。
その次の瞬間、逆方向からまた人々の流れが押し寄せる。
先ほどよりも人の数が大幅に増えている。
少女は人の波に飲まれる。
最後部の列が舞台から消えたとき、少女の姿も消えている。

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「かごめかごめ」のバリエーションA


大人たちが輪になって「かごめかごめ」を踊っている。
ただし、無言で。パントマイムとして。
出来る限り足音も立てないようにする。
(輪の中心には少女が立っているのではなくて、全然関係のない誰か)


声のない歌が終わると大人たちは舞台から静かに消えていく。

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「かごめかごめ」のバリエーションB

子供たちが輪になって「かごめかごめ」を踊っている。
歌も歌う。
ただし、その輪の中心には少女はいない。
歌い終わると子供たちは舞台から笑いながら消えていく。

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「かごめかごめ」のバリエーションB2


Bの子供たちが輪になって踊っている状態で
舞台後方のスクリーンに、少女の顔を映し出す。限りなくアップで。
少女の顔は意図的にエフェクトがかけられて歪んでいる。
歪んだ顔がグニュグニョと薄気味悪く、うごめく。
「うしろのしょうめんだーあーれ」を歌いきった瞬間、
スクリーンから映像が消える。


子供たちも消えて、暗闇だけが残される。