初めての京都 その1(1日目)

金曜、大阪出張。会議は午後。その後はフリー。
月曜から木曜なら黙ってそのまま東京に帰るところなんだけど
今回は次の日が土曜。なんだかもったいない。
行きと帰りの新幹線を指定されてるわけでもないし、
戻って土日も出勤しなければならないような忙しさでもない。
帰る日を1日ずらしてこっそり一泊して帰ることにする。
大阪観光?いや、この際京都でしょう。
これまで行ったことがないんですよね。
日本人たるもの1度ぐらいは京都を訪れてみなくては。ねえ、そうでしょ?


大学の寮の友人であるジンが京都の実家にいるので連絡を取る。
土曜は仕事があるので相手できないが、金曜の夜ならいいよということになる。
京都市街にホテルを取る。
京都情緒溢れる旅館にすべきなんだろうけど、
そういうのはまた別の機会に、と普通にビジネスホテルにする。
出張で来ているのを利用して、というのがまだちょっと気が引けるわけなんですよね。
出張慣れしてない。
土曜のみならず日曜もいてもいいんだろうけどそこまで豪遊する気の大きさはなく。

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そして今日、出張当日。
東京を出発して12時に大阪到着。
一緒に打ち合わせに出る先輩と落ち合う。
「なんだそりゃ」と言われる。本来ならば日帰りの出張のはずなのに
僕は大きめのボストンバッグとスーツを入れる平べったい鞄を持っている。
前者にはジーパンやセーターなど大阪を出た後の服装が入っている。
後者には何も入っていない。打ち合わせが終わったらスーツを脱いでしまっとくため。
「いやー、初めての京都で」みたいなことを僕は言う。
梅田駅地下のレストラン街にて串カツの店に入る。
大阪だからなのか串カツ(串揚げ)の店ばかり並んでいる。
カウンターだけの席では誰もがビールかサワーを飲んでいる。
隣に座っている50代ぐらいの男性は「ビン、もう一本」なんて言ってる。
真昼間からビンで2本?これで午後仕事になるのか!?
大阪はすごいところだなあと感心させられる。
串カツはなかなかおいしく、僕もビールを飲みたくなる。
夜飲むんだからと我慢する。


打ち合わせは特に問題なく終わる。夕暮の時間。
次の打ち合わせのある先輩を置いて僕は一足早く顧客のオフィスを出る。
快速に乗って京都へ。調べたら30分ぐらいで着くことになっている。
料金も540円とたいした額ではない。
関西の地理事情に疎い僕は大阪と京都って県をまたぐわけだから
かなり離れててJRも2000円ぐらいするのではないかと思っていた。
540円だったら東京駅から国立や国分寺の駅に行くのとだいたい同じぐらいか。
意外と近くて驚かされる。
新大阪、高槻、京都。あっという間に到着する。
電車は夕暮の中を走っていく。


京都のホームに降り立つ。改札を出る。
すぐにも大阪とは雰囲気が違うなあと思う。
僕が指摘するまでも無いが、大阪のあのエネルギーに満ちた喧騒はなく、
京都は落ち着いた、静かな印象を受ける。
駅だからそれなりにうるさいはずなのに、なんというか大人びている。


巨大な駅の中を歩く。とても大きい。
横に広いのではなく、縦に長い。鉄道の駅とは思えないほどの背の高さ。
空港っぽい。僕は羽田や成田を思い出す。
改札を出た後のメインの空間はホールのようになっていて
逆三角形のような形でものすごく大きな空間が空いている。


まずはホテルにチェックインしようと思うのだが
プリントアウトしてきた地図はホテル周辺しか載ってなくて
どこをどう向かえばいいのかよくわからない。
とはいっても時間があるし急いでるわけでもないのでのんびりと右往左往する。
恐らくこっちだろうと建物の外に出る。
目の前には白いタワーが建っていて、なんだありゃ?と驚く。
京都タワーだということが分かる。
ちょっとだけ覗いてみるとお土産屋の寂れ具合が東京タワーと全くそっくり。
ああ、こういう建物ってどこにでもあるもんなんだなあと思う。


方向的に間違ってないようなので通りをそのまままっすぐ歩いていく。
ひたすらまっすぐ。しばらく歩くと垂直に横切る道路にぶつかる。
京都の街並みは本当に碁盤の目のように作られているようだ。
左手に大きな寺院が見えてきて、東本願寺と書かれていた。
詳しくは全然思い出せないんだけど世界平和への希望を求めてどうこうみたいなことが
スローガンのように大きく書かれていた。
外国からの観光客向けなのか英語でも書かれていた。


駅近辺はそれなりに「都市」「繁華街」という雰囲気があったのに、
歩いているうちにだんだん物寂しくなってくる。
どうも京都で最も栄えているのはJRの駅周辺ではなくて、
さらに北へ北へと歩いていった先の四条というところらしい。
ホテルは1つずれた五条にあって、居酒屋がちらほらと目に止まる他はなんにもない。
初めて訪れる都市であるため、何がどうなってるのかさっぱり分からない。
とりあえずチェックイン。
6階の部屋。窓の外は隣のビルの壁。
さすがビジネスホテルだけあって景色という概念は全く無い。


僕が歩いていた間にジンから着信があったので、掛け直す。
既に京都駅に着いていて、今から僕のいるホテルへと向かうという。
その間僕はスーツを脱いで着替える。
京都という土地柄なのか、部屋の中には聖書だけでなく仏教に関係する書物も置かれている。
「内観」というのがキーワードのようでそういう書物が何冊かあった。
興味を持った人にはテープとデッキの貸し出しまで行うという。
このホテルだけがそうなのか(支配人の趣味?)
それともこのホテルの系列がみなそうなのか。
東京でも有名な私鉄の系列のビジネスホテル。どういうことなんだろう。
それとも僕が知らないだけで「内観」というのは非常にポピュラーな仏教用語なのだろうか?