初めての京都 その4(2日目・清水寺)

坂はどんどん急になり、やがて清水寺へ。
(信じがたいぐらい急なのに上から降りてきたバンが坂道をもろともせず停車した。恐るべし)
まだ9時というのに修学旅行の中学生の団体ばかり。
「川越中学校のみなさーん」と大きな声で誰かが怒鳴っていた。
外国人観光客も多く、もちろん僕のような日本人もたくさんいる。
朱色の門をくぐり、参拝料を払い、中に入っていく。
しばらく行くとかの有名な清水の舞台。
僕の母親は高い食べ物を買うとき、「清水の舞台から飛び降りる気持ちで」とよく言っていた。
さすがに眺めは素晴らしい。
外国人観光客が感嘆するように「オー」とか「ビューティホー」とか呟いている。
はるか遠くまで京都市街を見渡せて、周りの山々も冬で寂しい季節なのに趣がある。
これは初夏や紅葉の季節に来るのなら言葉のなくなるぐらい美しいのだろうな。
デジカメを持ってこなかったことを後悔する。
これが京都か。しばらく立ち止まって景色を堪能する。心に焼き付ける。


その後参拝ルートに従ってブラブラと進んでいく。
やたら中学生のはしゃぐ声が聞こえる一角あってそっちの方を見てみると
「えんむすびの神」「地主神社」と書かれている。
とある中学校の一団が訪れていたのだが、きれいに男女分かれて集団ができていて
それぞれに色めきたってはしゃいでいた。
(地元では付き合っている2人もこういう場所では
 一緒にいるところを同級生たちには見せられないだろう。
 そして後でこっそり2人きりになって
 「おみくじなんだった?」とか言い合うのだろう)
女子中学生たちの興奮ぶりは余りにもすさまじく、
フェロモンとして成熟する前の「女子中学生の匂い」というのが嗅ぎ取れそうなぐらいだった。
原宿でお土産として売ってそうな類のお守りが数え切れないぐらい見本として並んでいて、
みんなしてキャーキャー言いながら「私どれにしよー」と悩んでいた。
縁結びの石ってのがあるようで、何をどうするものなのか僕にはわからなかったが、
韓国から来たと思われる旅行者たちの一団が
その石と一団の中のお調子者らしき人物を取り囲んで大爆笑していた。
その後は女子中学生たちがその石を取り囲んでいた。


中学生たちに混じって僕もおみくじを引いてみた。結果は、
・・・凶。なんとなく予想はついていたが。
専門の神様の下で占ってみてもダメなものはダメってことでちょっとへこむ。
曰く、
「今は自分の思い通りに事が運ばないという悲運の時
 恋愛:こちらから進んで行かなければならないほどの相手ではない
 縁談:今はその時機ではない」
なお、ここ地主神社はパンフレットによると1日に出るおみくじの数は日本一なのだそうだ。


境内の一角にはこの神社にお参りし、お守りを買って身につけた女性が
その思いを遂げて書いた感謝と報告の手紙が飾られている。
「ふーん」と思いながらその1つ1つを見る。
「・・・ええなあ」と思う。神様にすがって何かが何とかなるのなら僕だってすがるよ。
もっと興味深いのは絵馬。
これがまたえもいわれぬシロモノ。
壁びっしりに架けられた絵馬の群れたちにクラクラめまいがする。
これを見るだけでも清水寺(というか地主神社)を訪れる価値はある。
そのほとんどが恋において「負け組」の女性たちによる悲痛な心の叫び。
余りの素直さに、正直な話笑ってしまう。
書いてるパターンはだいたい3種類あって、
 1.ラブラブな2人がこの幸せがいつまでも続くように願う
 2.女性2人組が半分ずつ書く(当たり障りのないことやお茶目なこと)
 3.女性が1人きりで思いのたけを綴る
圧倒的に数が多いのはもちろん3.で、3.の内容もまたいろんなタイプに分けられる。
 a.今の幸福がそのまま続いて、ゴールまでもっていきたい
 b.素敵な人に出会いたい
 c.誰それのことが好きなので、付き合いたい
 d.分かれた彼氏のことが忘れられず、寄りを戻したい
何気にd.の絵馬が多かった。
もしかしたらこの願いをかなえるためにわざわざここまで来て絵馬を書いたのかもしれない。
結構時間をかけていろんな絵馬を見たけど、
男が1人で書いたc.やd.の絵馬ってのはなかった。
ここを1人で訪れる男って、・・・僕みたいなやつか。


その後は普通になんとかの滝とかなんとかのかんとかをコースに従って眺めていく。
桜の植樹を行ったばかりのようで、斜面に「入らないでください」という立て札が立てられ、
地肌がのぞいているのは痛々しかった。でもいつか春には桜の木が満開になるのだろう。
茶屋の1つにてきつねうどんが食べられる店があって小腹が空いていたんだけど、
あとでもっとうまいものを食べようと我慢する。


行きとは別な坂を下りていく。
どうもこちらが本来旅行客が辿るべき道だったようだ。
小奇麗な店が並んでいて、盛んに観光客に声をかけている。
八橋の店がいくつもあって、そのうちの1つに入って青森の母にと一箱買って送る。
お茶があったりダンゴがあったり。
外国人観光客の心をくすぐるエキゾチック・ジャパンな小物の数々。
中学生目当てなんだろうけど、
芸能人の生写真やジャンクな玩具やTシャツの類を売る店もあった。
案の定わらわらと中学生が群がっていた。