「スーパーサイズ・ミー」

これも月曜に見に行ったもの。
もうこの時点では結果が出ているが、
残念なことにアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門を逃した。
去年獲得した「フォッグ・オブ・ウォー」程ではないが、優れたドキュメンタリーだと思う。
割と話題になったと思う。
監督であるスパーロックが自ら出演し、1日3食マクドナルドを食べて1ヶ月過ごすというもの。
あっぱれだよなあ。
こういうアホらしい企画を思いついて自らを実験台にして、
作品として仕上げるだけの行動力。
表現に携わる人だけでなく、あらゆる人が見習わなくてはならない。


自分が太ったのはマクドナルドのせいだと
ティーンエイジャーの女の子2人が訴訟を起こしたという事件がきっかけとなり製作される。
(↑んなわけねえだろ!!自分か親のせいに決まってるじゃないか)
成人人口の実に6割が肥満か肥満予備軍というアメリカ社会。
マイケル・ムーアの映画により「銃社会アメリカ」「右傾化するアメリカ」という
病んだ大国の姿が暴き出されたが、
もうこれだけじゃなくていろんな姿があるんだね。肥満大国アメリカ。
日本人の監督もこういうポップな社会派ドキュメンタリーを撮る(撮れる)監督が
そろそろ出てきてもいいものだが、どうなんだろうな。
(なれるものなら僕がなりたいぐらいだ。前にも書いたが今温めているのはゴルフ映画)


もう1つあっぱれなのはしっかり1ヶ月3食マクドナルドを完食というか達成するところ。
体内のあらゆる指標がおかしくなり途中から医者に中止を勧告されるも、主人公は諦めず。
ひたすらビッグマックを食い、スーパーサイズのコーラを飲み続ける。
いくら身体にとっては危険とはいえマクドナルドのハンバーガーを食べるということは
常識から考えて誰にとっても緊張感ゼロの行為。
なのでいくら危険と言われても見てるほうも恐怖感を感じない。
ハラハラしない。応援する気にもならない。つまり、感情移入しない。
その分完食したところで見てるほうの達成感はゼロ。「よかったねー」と思うぐらい。
見てて「しょうもないことやってんなあ」と苦笑するだけ。
ここがポイント。この時点でこの映画勝ちだろう。
最初に苦笑したまま最後までそれを持続させることに重点が置かれている。
軽快な音楽が終始流れ、あの手この手で注意をひきつけ、
ライトでポップなまま。悲壮感ゼロ。
(完食できるかどうか、体力の限界に挑戦することをに力点を置いてる映画でもないしね)


つまり、全編通して伝わってくるのはマクドナルドを食べることのバカバカしさ。
これを見た後でその日の食事としてマクドナルドに行く気がなくなったならば、
たった1回でも足が向かなかったならば、スパーロック監督の勝ちだろう。
まあマクドナルドに喧嘩を売りたくて作った映画ではないんだけど。
(とはいえありがちな展開として、マクドナルドに取材を申し入れても
 明確な返答が返ってこないというシーンが出てくる)
人間の3大欲求の1つである食欲を大多数の人に対して
映画という媒体を利用してコントロールできたならばそれは快挙と呼ぶにふさわしい。


それにしても初監督作品でこういうの撮ってしまうと
次の作品で困ってしまうことになるんだろうな。
これより面白いネタってそうそうないだろう。
ほんとアイデアの勝利。そしてそれを語る映画人としてのなにげに基礎体力の勝利。
映画に限らずどんな芸術・アートも人を唖然とさせる突拍子も無いアイデアってかなり重要。
そのことを痛感させられた。


・・・見終わった後、僕としては逆にビッグマックを食べたくなった。
・・・最近ずっと食べてないから。