本を出します その9

10日前に出版社を訪れた際に、初稿のゲラを受け取る。
作者による校正作業を行うため。
期限は3月7日。ゆっくりやってる暇はなし。
なのに先週末は京都旅行だったため何もできず。
原稿は270ページもある。この土日で全てできるとは到底思えず、
今週は会社で朝早くだったり昼休みにずっとその作業をやっていた。


270ページにびっしり赤入れされている。
誤字脱字や表記のチェックや、章がおかしい箇所の修正、レイアウト(文章の配置)の変更など。
自分で書いたものならまだしも他人の書いたものについて
細かく読み込んで突合せしていかなければならないのだから、編集者という職種は大変だ。
何が大変かと言えば上記以外に本文中に記述されている事実関係の確認という作業があって、
例えば、フェズのメディナ(旧市街)を歩いていたときの部分があったとする。

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この神学校のすぐ近くに「カラウィン・モスク」がある。
9世紀にファーティマ朝の指導者の姉弟
(兄妹?英語でbrother , sister としか言われなかったのでどちらかわからず)のうち
兄の方により建てられた。
妹の建てた方のモスクはメディナを流れる川を隔てて反対側にある「アンダルース・モスク」となる。
こちらは名前の通りアンダルシア地方の影響が濃い建築物であるようだ。
この「カラウィン・モスク」はたぶん僕の聞き間違えではないかと思うのだが、
12万2千人というとんでもない規模の収容能力を誇るという
(世界3大モスクであるカサブランカのハッサン2世モスクよりも多い?)。
なんにしてもこのモスクが北アフリカ地方で最も古く、最も大きなものであったのは確か。

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こんな指摘がなされる。
□カラウィン・モスクを建てたのはファーティマ・フェヘリーヤ(女性)で
 アンダルース・モスクを建てたのは妹メリアムなので、姉妹では?
□ネットで調べると(12万2千人ではなく)2万人となっていますが…


僕がうろ覚えのまま書きとばしていった物事の1つ1つがチェックされている。
ドアーズの幻のアルバム「Cerebration of the Lizard」は先頭に「The」が付くのか付かないのかとか。


こういうのの1つ1つに対して、作者の方からOKやNGを出して、
NGだったのなら作者としてどうするべきか書き込んでいくわけだ。
文章として今ひとつな箇所は全て「ここはこうしては」と直されている。
たいがいは「ま、それでいいんじゃないか」と受け入れる(実はあんまりこだわりがない)。
時々「いや、それはちょっと」というのがあって、
「じゃあどうしよう」と腕を組み、考え込むことになる。
編集者との孤独な戦いである。

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金曜の時点で110ページのところまで来ていた。
昨日(土曜)、一気に片付けてしまおうと思う。
家にいるとウダウダしてしまうから、会社に原稿を持っていって作業することにした。
午前中は自席で原稿に目を通し、
午後になってプロジェクトの人たちが休日出勤して仕事しだすと
さすがに気が引けたのでノートPCや付箋の赤のボールペンといった一式とともに会議室に移動した。
ブラインドを開けるとお台場やレインボーブリッジが見える。
眺めがいい場所で1人きり「仕事」するというのは気持ちのいいもので、思いの他はかどる。
夜までかかるかなと最初は思っていたのが夕方には全て終わってしまう。
日が差し込んでくると部屋の中も温かくなってついついうたた寝


とりあえず締め切りには間に合った。
今から原稿を宅急便で送る。


今回は「後書き」を書くという作業もあった。
もちろん書き下ろし。原稿用紙にして7・8枚ぐらい。
こういうのを書くのは非常に楽しい。
著者プロフィールなんかも書いた。

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それにしても余りの誤字脱字の多さに我ながら驚かされた。


コンテストに応募するのならもっと気をつける
というか推敲に推敲を重ねて出すべきなんだろうけど、
僕の原稿は余りにも無様/杜撰だった。
よくもまあこれで選考を進んでいったもんだ。
コンテストの締め切りまで時間が無くて一度さらっと眺め回したぐらいで応募。
本文中の単語を一括置換したら余計なものまで変換されていたというのも気付かずに。
恥ずかしいったらありゃしない。


6月に帰ってきてガーッと入力して
日記として掲載していた時点であれこれ多々おかしいということになる。
みっともないのでモロッコ・ドバイ旅行記の部分は削除しようと思う。
出版社側からも削除を求められてるし。