落ちていく

この1年を振り返れ、とのお達しが来る。
そんで「やったこと、わかったこと、次にやること」を発表しろと。
まあ要するに会社の行事としてそういうのがあるわけですよ。
かったるいことこのうえない。


正直な話「振り返りましょう」と言われても、もう何も思い出せない。
健忘症なのかもしれない。
精神のメカニズムってのはよくできたもので、
無駄に辛かったことやただただ疲れるだけだったこと
なんてのは忘れてしまえるようになっているのかもしれない。
少なくとも最近の僕はそうだ。
「おまえがこの日の行動記録はこうなっている」
と誰かに突きつけられたら嫌でも思い出すんだろうけど。
そんなファンタジーを想像しなくても、
会社のPCから送ったメールの送信履歴を開いてみるだけで十分辿り直せる。
でも、そんなことは絶対にしたくない。
もう何も思い出したくないのだから、忘れるがままにしておきたい。
どこにその扉があるのか僕は知っているはずなのに、
そこに近付くことをひたすら避けて、
「知らない、僕は知らないんだ」と言い張ろうとしている。


記憶。
年末や正月の頃ですら危うい。
去年の春や夏のことなんてもっての他。
仕事からほんの少し離れたちょっとした物事ならかろうじて覚えている。
大阪に向かう新幹線の中で日差しが温かく気持ちよかったこと。
時間の感覚が狂ったままホテルとデータセンターを往復する毎日が続いている中で
午前3時に川面に映っている満月を眺めたこと。
しばらくそこに立ち止まってどうしようもない気持ちになったこと。
川面に映る月はゆらゆらと動いていて、
その小さな白い光の固まりはやがて溶けて消えてしまった。

    • -

年を追うごとにどんどん追い詰められていって
自分の居場所も行き場所もなくなりつつあるように感じられる。
そこには何もない。どこまで行っても何もない。
でも他に仕方がないから、そこにいるしかない。
凡庸な暗闇に呑み込まれて手探りで辺りの雰囲気を探る。
ただそれだけの毎日が続く。


目の前の仕事をこなして給料をもらって食事して寝る。
それを永遠に繰り返していくうちに肉体と精神が擦り切れていく。
残されたものは何もない。
より正しく言うならば、目の前に残されているものは何もない。
人はなぜ働くのか、働けるのか。
今の僕には不思議なことこのうえない。

    • -

頑張れホリエモン
僕はライブドアを支持します。


既成の秩序なんてぶち壊してしまえ。
そしてこの国をおかしなことにしてくれ。


疲弊しきったこの社会を一瞬でいいから、誰でもいいから、
切り裂いて塗り替えてくれ。

    • -

今の僕は奈落の底に向かって、為す術もなくただただ落ちていくだけだ。