下部温泉

先週先々週と会社の周りの人たちが1週間のリフレッシュ休暇を取っている。
1年に1回取得できる。年度末までに取得できなかった場合
次年度に持ち越しということができないため、この時期に慌てて取る人が多い。
このプロジェクトでは3月なんて火の車で休みどころではないのではないかと考え
早々と昨年6月に取得したのであるが、
そして「俺って先見の明があるなあ」なんて心の中でニヤニヤしていたのであるが、
周りのみんながこの時期に取ってしまうとなんだか損した気分になる。
既に取得しているのに「俺にも休みくれよ!不公平だ!!」とすら思ってしまう。
人間とはなんとまあ身勝手な生き物であることか。


いっそのこと、来年度は4月や5月にさっさと取ってしまおうかと考える。
プロジェクトの都合とかそういう現実的な制約を取っ払い、あくまで単なる空想として。
さて、今年はどこに行こうか。
海外。昨年行くことを考えたオーストラリアのエアーズロックか。
それとも頑張って中南米を攻めるか。北欧の都市を回ってみるか。
ハワイやグアムやサイパンでのんびりするというのも捨てがたい。
なにげにニューヨークも見てみたい。
ナイアガラ瀑布とセットのツアーなんてのがよくある。


というのが次々と出てくる一方で最近よく考えるのが
山奥のしなびた温泉宿で何もせず1週間かそこら過ごすというもの。
このところ、むしろこっちに惹かれている。
1週間の休みを取らなくても、3連休に休みを1日つけて4日も過ごせたら十分。
宿ではひたすら何もしない。温泉に入って、上がってきたら本を読むだけ。
これこそリフレッシュではないか。
ふらりと一人旅。ローカル線を乗り継いで、ガタゴトと揺られて、
山奥の川が流れてるような温泉郷へ。


時期は別にして、プランを考え始める。僕の中に今、具体的なイメージがある。
学生時代の最後の方で訪れた山梨の温泉宿。
「下津温泉」と覚えていたのであるが検索してみたら出てこなかった。
そもそも下津という地名は和歌山の方のようで、どうも「下部温泉」が正しいらしい。
どこに入ったのか旅館の名前は思い出せないが、
そのうちの1つで僕等は空いている部屋で休憩をして、温泉に入って、
ほうとうの入ったカレーを食べた。ほうとうなのでかぼちゃともやしが入っていた。


あと10日もしたら入社式という時期。季節はちょうど今ごろ。
「山中湖のほとりのドライブインにトランポリンがある。撮影で使いたい」ということで
後輩たちが夜、車を出してロケハンに出かけるというので僕はくっついていった。
徹夜して走って青木ヶ原近くまで行って樹海を見て、夜明けの山中湖を見て、
その帰りに温泉に行きたいねえという話がどこからともなく出てきて、
道路地図を見て見つけたのが下部温泉
川沿いに宿が並んでいて、ものすごくひなびていた。
午前9時ごろか。適当に入った旅館にて物置のような部屋に通された。
3時間か4時間で1人3000円ぐらいだった。
残念なことに温泉そのものの印象は全くない。
鮮明に記憶に残っているのは「ほうとうカレー」と徹夜してぐったりした雰囲気。
カレーは最初3000円に含まれていたのではなくて、
僕等が部屋でゴロゴロしてると旅館のおばちゃんが部屋に入ってきて、
「あんたたち学生?おなかすいてる?ご飯食べる?」ということで持ってきてもらったものだ。
たぶんまかないか前の日の残りで作ったものなのだろう。
あと覚えているのは帰りにたまたま立ち寄ったコンビニにて
バドワイザーのクラシックとかライトとか珍しいのが売られていたので
買って帰り道ずっと飲んでいたこと。


ドライブインは見つかったもののトランポリンは夏のみということで撮影には使えず。
「樹海の近くにお化け屋敷がある。道路工事中で行き止まりになったところに建っている」
ただそれだけの情報だけで真夜中に地図を見ながら探し回ったり。
あれはもう7年前のこととなるのか。早いなあ。