千鳥ヶ淵で夜桜

昨日の夜は会社の後輩たちと仕事の後、千鳥ヶ淵の夜桜を見に行くことになった。
後輩の1人が去年仕事帰りにふらっと見に行って、
余りの美しさに今年も見に行くことを決めたというもの。
(去年はその「ふらっと」の前に別の後輩と3人で一緒にラーメンを食べていたのであるが、
 僕は仕事に戻って彼女たちは千鳥ヶ淵へと向かった。
 「あの当時落ち込んでいたオカムラさんを連れて行けばよかった」とその後よく言われた)


定時ちょっと過ぎに会社を出る。
会社の他の人たちもみんなそれぞれ飲み会や花見の予定があるようだ。
駅へ向かう途中の公園では桜の木もないのに花見っぽい宴会が行われていた。
思うに花見という行為は桜が咲いたからどうこうというのもあるが、
春になって暖かくなり、外で酒を飲んでもOKな季節になったことを喜ぶためのものではないか。


直接千鳥ヶ淵というか九段下まで行くのではなく、
せっかくだから皇居を半周散歩するのはどうかと僕は提案する。
東京駅で下りて丸の内オアゾで待ち合わせる。
オアゾの地下にフォー(ベトナムのヌードルですね)が立ち食いで食べられる店があるというので
「見に行きましょう」とか言ってたのが結局「食べよう食べよう」ということになる。


※同じメンツで昼は会社の裏のインターコンチネンタルホテルのアジアンな店のバイキングで
腹いっぱい食べている。(曜日で内容が変わってて、きょうはタイの日だった)
今週は月曜の飲み会に始まり、大阪食い倒れ出張もあって、ひたすら飲み続け・食べ続け。
胃が壊れてしまってずっと満腹なのに「でももっと食べたい!」そんな感じ。
これは確実に太るね。


オアゾのB1Fの「コム・フォー」という店。
「スパイシーフォー」に温泉卵をトッピング。
揚げ玉やもやしとコリアンダー(?)の炒めものが入れ放題。
他にもナンプラーみたいな調味料やレモンの果汁、チリソースといろんなものが置いてあって
それ全部たくさん入れて食べる。うまい。これはうまい。
「333」という名前のベトナムビールも飲む。
なんかもうこれだけで腹いっぱいになって、満足してしまう。


オアゾに来たので丸善手塚治虫の漫画を買う。(「きりひと賛歌」を。先週は「奇子」を読んだ)
行列が出来ていたので何かと思ったら林真理子サイン会だった。
初めて間近で見る林真理子はかなりなところふてぶてしかった。


永代通りから大手門まで歩いていって、そこから皇居に沿って神田方面に向かって歩く。
この辺も桜が咲いてるかと思ったらそうでもない。
枝垂桜がいくつか。そもそもまだ咲いてない。
夜。外国人観光客がカメラ片手にポツリポツリと立っている。
歩いているとたびたび、走っている人たちに追い抜かれたりすれ違ったりする。
ランニングをしている集団がオールシーズン、どの時間帯でも見られる。
あと、お堀の中の白鳥か。することもなくフラフラと水の上に浮かんでいる。


真向かいの三井物産のビルからカルガモの親子が引越しをするという例のポイントに差し掛かると
「そういえばこの辺に将門の首塚があるよね」と寄り道をして見に行く。
この辺は大企業や官公庁ばかり。そんで金曜。
入社して間もない新入社員たちがワラワラと群れ集って酔ってたりこれから酔おうとしたり。
三井物産のビルの前ではまだ僕よりも若いと思われる既に酔っ払った「先輩」社員が
それら新入社員たちの前でタクシーを捕まえて乗り込むところだった。
まだ8時だというのに家に帰るのか、別な店に行くのか。
日本を代表する大企業は羽振りがいい。
将門の首塚の周りでは蛙の石像が鎮座している。
何も知らない後輩たちに対して「この右手前のが『一の蛙』、奥のが『二の蛙』」と
その場の思いつきで適当なことを教える。「へー。そうなんですか」と感心される。


皇居に戻ってまたテクテクと歩き、一ツ橋の辺りでいったん離れて神保町の方に向かって歩く。
(大学入学当初、ここから小平まで終電後走らされるという寮の行事があって
 もちろん僕も参加させられたのであるが、
 最初から最後まで歩いただけでちっとも走らなかったことを思い出す)
靖国通りに出るとその通り沿いに九段下へ。
この辺りから人通りが増えてきて、武道館を過ぎると大混雑で完全に人の流れがストップ。
警官がうじゃうじゃいて交通整理をしていて、
千鳥ヶ淵に入る人は列に並んでくださいと街行く人にひっきりなしに呼びかけている。
僕らも列に加わる。・・・最後尾からじゃなく、途中から。よくわかってないフリをして。
ここでひたすら待たされる。
万博じゃないのに、ただ桜を見るというだけでこれほどまでに待たされるとは。


でも待った甲斐があって確かにここ、千鳥ヶ淵の夜桜は見事なものだった。
ライトアップされていて、それが場所によっては白だったり黄色だったりで桜の色が変わる。
歩道の右側に生えている桜の木が頭上はるか高くで咲き誇り、
そのまま歩道の左側にまで枝が枝垂れかかる。お堀の下の方まで枝が、桜の花びらが伸びている。
枝の向こうに果てしなく枝が連なり、桜の見える光景がいくつもいくつも折り重なる。
そんな桜並木がずっとずっとどこまでも続く。
桜で覆われたトンネルを歩くかのよう。トンネルと言ったら風流じゃないな。
とにかく桜の花びらで作られた「屋根」が僕らを包み込んでいて
風がそっと吹きぬけるとその屋根がふんわりと揺れ動く。
花びらが舞い下りる。
強い風が吹いたときには吹雪のようになり、粉雪の中を歩いているかのようになる。
お堀の対岸も桜でいっぱいで、咲き誇った白い枝の連なりは雪山のようだった。
それが真夜中の水面に映って、漂う。移ろう。
日本人でよかったと思う。
こういう景色を観ることができて、それを美しいと思うことができて。


ゆっくりゆっくり人の流れに沿って桜並木の下を歩き、終点まで行ってしまうと隣の歩道を引き返す。
靖国通りに戻ってきて、靖国神社に入る。
花見をしている人たちでものすごいことになっている。
立ってる屋台も数え切れない。
たこ焼き、フランクフルト、チョコバナナ、といった定番だけではなくいろんなのが集まっている。
屋台という枠組みを通り越して大きくて立派な店構えをしているところも要所要所にある。
これはすごい。まるで屋台のワンダーランドだ。


串焼き系が多く、海老の串焼きが去年はあったよと聞いていたので
「食いてえ!」とワクワクしていたのであるがどこを見ても海老は売り切れ。
その代わりにホタテの串焼きを食べる。
後輩の食べていた牛タンの串焼きを一切れ分けてもらう。
その後鮎の塩焼きの屋台で1串、焼き立てが出来上がるのを待って買う。
屋台では「鮎の塩焼き」と書かれたおじさんがひたすら鮎に串を刺して、
粗塩をこすり付けて、炭火の周りに並べていって時々串の向きを変えたりと大忙しで、
もう1人「マグロの塩焼き」(だったかな)のゼッケンだったおじさんが
ひたすら炭をかき混ぜて熱の通りをよくしようとする。
いくら屋台の食べ物とはいえ、こんな塩焼きがまずいわけがない。
焼きたてのジュワーッとした鮎に塩がほどよく滲み込んでいて。
鮎は魚の王様だな、ほんと。


他に食べたものとしてはベビーカステラにシャーピンという中国風おやき。
このシャーピンの店があちこちにあった。
最近の都内の屋台情勢では1つの勢力をなしつつあるのだろうか。
野菜や肉がはいっているということでおやきというよりは平べったくした餃子みたいだった。
ドイツのソーセージの店があったので、バイエルンソーセージを買ってみる。
中で焼いていたのはドイツから来たと思われるきれいなおばさんだった。


身も心も腹いっぱい。桜に食に。すっかり堪能しました。
これが今年の花見のピークではなく、実はまだ前夜祭。
今日の夜は屋形船に乗って隅田川の夜桜見物ということになっている。
念願の屋形船。天ぷら食い放題。