「デザート」に関するお伺い

日曜の夕方、下の階の大家さんに5月分の家賃を払いに行く。
大家さんの玄関先を出たところで
自転車に乗ってふらっと現れたおばさんと目が合ってしまう。
そんで「ちょっとそこのあなた!!」という感じでがっちりキャッチされる。
この地区での20代から30代までをターゲットとした市場調査なのだという。
新宿だと西口のヨドバシカメラの辺り、
吉祥寺だと伊勢丹とレンガ館モールの間の通りでよくやってる。
おばさんが白い書類の入ったクリアファイルを持って待ちゆく人を呼び止めている。
僕もこれまで何回かアンケートに答えたことがある。
最初はなんか怪しい感じがしたものの慣れてしまうとなんてことない。
ただ純粋に市場調査のようである。終わったら図書券かJCBのギフト券をもらう。


おばさんはこの仕事のプロなのか有無を言わさずあれよあれよという間に
勢いよく自分のペースに巻き込み、僕を断りきれない状態に持っていく。
「ま、ええか」と僕は思う。自分の住んでる場所の近くで答えるって嫌なもんだし、
それを周囲の人に見られたりするのも嫌なもの。でももう仕方ない。
おばさんはイソイソと年季の入った頑丈そうなノートPCというか専用の端末の電源を入れて
その間質問の記載されたA4サイズの資料を確認している。
ノートPCにてとあるデザートに関するコマーシャルを再生するので
それを見て回答していってほしいとおばさんは言う。


デザート。
あんまり興味がない。もちろん出されたら食べる。喜んで食べる。
だけど自ら買って食べるようなことは少ない。
コンビニに弁当を買いに行った時、同じぐらいの熱意を持ってデザートを選ぶようはことはしない。
なのでまずはデザートと聞いて思い浮かぶメーカーをあげてくださいと言われても
グリコ、森永、明治ぐらいしか思い浮かばない。
具体的な製品名をと言われると皆無。
言われたら「ああ、それ」というのも多々あるはず。だけど自分からは思い出せない。
デザートにもいくつか種類がありますが、どれをどれだけの頻度で食べますか?と聞かれて
ケーキやプリンの類いは皆無、ヨーグルトはほぼ毎朝会社で食べている。朝食代わりとして。
そんなわけで今回の調査ではデザートの中でもヨーグルトが対象となった。


それにしても。ほんと興味がなくただ漫然と毎朝食べているので
お召し上がりになっている商品名は何ですかと聞かれても、ちっとも思い出せない。答えられない。
それぐらいデザートというものに対して関心が薄い。
毎日食べているというのに。不思議なものである。
(今日も会社に向かう途中のコンビニで買って食べたので銘柄がわかった。
 明治の「ブルガリアヨーグルト」のプレーンだ)


その後のアンケートではこの春出たとあるメーカーのとあるヨーグルトに関して
テレビコマーシャルの商品発売前のバージョンと発売後のバージョンとを見せられて
その印象を高級感があるか、知的か、先進性があるか、
などなど様々な観点から質問されてそれを5段階評価で答え、
その次に駅に貼るポスターについて同じような感じで進んでいった。
正直な話どれもあんまりいい広告とは思えず、
「この商品を買ってみたいか」という究極的な質問については
「5.の全くなしです」と答えてしまった。
おばさんは1日のノルマがあるのかとにかく早く終わらせたいようで、
「ハイ次」「ハイ次」とどんどん進んでいった。考える暇を与えない。
僕の回答はあくまでサンプルに過ぎず、
血の通った意見として必要としているのではなかった。


アンケートの回答はおばさんが自らPCに打ち込むかアンケート用紙に記入していったのだが、
最後に署名のようなものを求められた。名前と住所と電話番号。
この個人情報保護の時代にこんなの書きたくないなあと思うが、どうしても書いてくれという。
後でセールスに使うことはありませんからと。
最初にもらったリサーチ会社にて発行した回答依頼書にもそういうことが書かれている。
表札を見ただけで適当に自分で回答を捏造する調査員がいるため、
そういうことがなされていないことの証明として使うとのこと。
表札にて僕の名前は出ているし、住所は番地までは不要とのことだったので仕方なく書く。
電話番号も正直に。今思うと電話番号はでたらめを書いてもよかったよなあと思う。
こういう人間って騙されやすいのかな。用心する度合いが低いお人よしってことで。


先ほど挙げた「個人情報保護」だったりキャッチセールスに対して神経質になってたりで
こういう市場調査もやりにくくなってるんだろうな。昔と違ってかなり。
アンケートを取るだけとはいえ、大変な職業だ。