青森帰省1日目①

昨日をもって1年半在籍していた例の困難なプロジェクトから離脱。
5月の頭からまた同じような大変なプロジェクトに加わることになる。
2日も6日も休めない。というか休んでいいのかどうかよくわからない。
(世間の人たちはこのどっちかを休むというのが多そうだ。
 威勢良く10連休にするのはちょっと控えて、
 とりあえず1日は出ますよみたいなある種の日本人的奥ゆかしさ)
僕の場合4月いっぱいは前のプロジェクトに所属していることになっているから
休みを取るならば4月のうちに。
そんなわけで4月の最終営業日、休みをもらって青森に帰ることにする。
日曜まで、4日間。正月に帰ってないからかなり久しぶり。
前帰ったのは去年の3月に法事で。しかも1泊しただけ。
1年と1ヶ月帰っていなかった。これは今までで1番長いことになる。


朝7時に起きて東京駅へ。
ボストンバッグには着替えや前日に買った手土産の菓子折りが入っている。
空いてるのではないかと中央線の先頭車両に乗る。
なんだかいつもより丁寧にブレーキをかけているように見えるのは兵庫の事故の影響か。
先頭に乗ったので運転席が見える。
レールの上を車両が滑るようにゆっくりと走っていく。
快速電車とはいえ、そんなにスピードが出ているようには見えない。
これが遅れを取り戻すため急ぐと時速100キロを超えて走るようになり、
カーブに差し掛かったところで転覆するのか。
今この瞬間事故が起きてマンションに突っ込んだら僕は確実に死ぬ。


崎陽軒のシウマイが売られていたのでお土産に買う。
高い方。その日のうちに食べなきゃいけない。
4月の頭に大阪へ出張で行った際、行きの新幹線の中でシウマイ弁当の話と
お土産用のシウマイは買ったその場で食べられるものなのか、
やはり温めなくてはならないのかという話をしてた。
それ以来ずっと崎陽軒のことが気になっていた。


東京駅の東北新幹線のホームにはお年寄の団体が多かった。
盛岡辺りは今が桜の盛りだからなー。
なお、4月28日今日の時点で青森(弘前公園)はまだ三分咲きだそうだ。例年より遅い。


新幹線「はやて」が八戸に向けて走り出す。
駅弁を食べながら缶ビールを飲む。
岩波文庫の「20世紀アメリカ短篇選」の上巻を読む。至福の時間。
上巻は戦前の作品を年代順に集めている。
オー・ヘンリーに始まり、イーディス・ウォートン、セオドア・ドライサー、ジャック・ロンドンといった
まだ19世紀リアリズムの影響が色濃い作品群が前半にあって、後半は
ジョン・ドス・パソス、F・スコット・フィツジェラルド、ウィリアム・フォークナー
アーネスト・ヘミングウェイジョン・スタインベックアースキン・コールドウェルとビッグネームが続く。
アメリカ文学好きには堪らない、こたえられない珠玉のセレクション。
フォークナーは相変わらずとんでもないし(「響きと怒り」に繋がる、「ある裁判」が収められている)、
フィツジェラルドは上品で軽快でひねりがきいていて、
ヘミングウェイには「さすがだ」と唸らざるをえない。
でもこの中で1番面白かったのは
タバコ・ロード」で有名なコールドウェルの「スウェーデン人だらけの土地」
1年半前、例のプロジェクトに移る前に青森に帰ってきたとき、
八戸のヴィレッジ・ヴァンガードで見つけ、そのうち読もうと思って買った。
だけど余りにも素晴らしい書物であることは分かっていたから、
会社の行き帰りに居眠りしながら安易に暇つぶしとして読むわけにはいかなかった。
ずっと「寝かせて」いた。読むべき日が来るのを待っていた。
仕事のことを忘れることができて、文学そのものに没頭できる幸福な時間。
そしてそれが今日だというわけだ。実に1年半かかった。
無我夢中でページをめくった。200ページ読んでいたらいつのまにか八戸に着いていた。


仙台を過ぎた辺りからお年寄たちはソワソワしだし、
「向こうに桜が見えた」と誰かが指差すとみんないっせいにそっちを向く。


盛岡の山々にはまだ雪が残っていた。


お年寄以外に今回の移動で目に付いたのは、1歳になるかどうかの小さな子供を抱えた母親たち。
たまたまなのか僕の乗った車両には3組のそういう母親が乗っていた。
1歳になるかならないかという時期の子供を抱えた母親にとって
ゴールデンウィークは実家に帰るとてもいいタイミングということか。
近くの席のお年寄たちは飽きることなくそういう子供たちに話し掛け、あやしていた。


ワゴンの車内販売が通りかかったので缶ビールを買ったら
アサヒのスーパードライの缶に楽天イーグルスのロゴがプリントされていた。


八戸で乗り換える。青森まで直通の特急。三沢や浅虫温泉では止まらない。
なのでなんだか早く着いたように感じられた。
8時28分東京発、11時31分八戸着。11時38分八戸発、12時32分青森着。
4時間で青森に着く。昔は半日がかりだったのがだいぶ近くなった。
三沢や野辺地の辺りでは4月も終わりだというのにところどころ雪の残っている場所もあった。
乗っていると会社の携帯に電話がかかってきて、トラブルが発生したとの連絡。
僕がいなくてもなんとかなったようでよかった。
それまでの担当者がプロジェクトを抜けた途端トラブルが発生するとはなんだかマーフィーの法則的だ。