青森帰省3日目(「津軽」を訪ねて)④竜飛岬 階段国道など

この時点で13時半。昼食をどこでという話になる。
03年版の「るるぶ」を見るとここ竜飛岬では2件の店が紹介されている。
もちろんここ津軽半島の海沿いはどこも海の幸がメインだ。
ホタテやウニが乗った海鮮丼や刺身の定食。
どちらも似たり寄ったりで、ホテルにくっついている方の食堂に僕はNGを出す。
寂れた観光地の一番でかいホテルにくっついている食堂がうまかった試しがない。
そのためもう1軒の方に行ってみようということになる。


ついでにここに書いておく。
僕は「るるぶ」05年版を持ってきていて、ケンは03年版を車に乗せていた。
どっちも同じ厚さなのだが05年版は見た目がきれいでオールカラーの写真ばかりで
03年版の方が情報の扱いが丁寧で各市町村ごとに見所が紹介されている。
それで比較してみるとどうも03年版の方が情報量が多いということが分かった。
03年版だと各市町村について最低でも1つは何かを、無理やりでも紹介していたが、
05年版だとそれがなくなって
県外の人でも知ってるかもしれないかなり有名なものばかり取り上げるようになっていた。
03年版だとあった平舘村、中里町に関するデータがどこにもない。
普通同じもので異なる年の2冊があったら情報そのものが更新されているように思うが、
るるぶ」の場合、似て非なる全く別の情報誌になっていた。
なので僕とケンは03年版・05年版の両方を常に持ち歩いて、
多くの場合03年の場合を参照することとなった。
これってこれでいいのだろうか?
平舘村の人ががっかりするのではないか。
僕らみたいな蟹田から竜飛岬までドライブする人たちが途中通り抜ける平舘について
ちょっと気になったんで調べてみる気になって「るるぶ」を参照しても何も載ってない。
なので素通り。
まあ別に怒ってるわけでもないし、重箱の隅を突付くような話なんだけど。
世の中のニーズは05年版の方に向かっていると言えばそれまでのことか。


るるぶ」にあったもう1軒の店が見つからず、
車を降りて歩いているうちに有名な「階段国道」を見つける。
「おーこれか」と下り始める。
日本で唯一、車が通れない国道。339号線に含まれる。
当時(いつだろう?)の役人がそこがどんな地形かよく確かめもせず
地図にピーッと線を引いしまったがゆえに仕方なく階段を整備することになったとかならないとか。
竜飛岬の上から真下の漁村まで下りていくことができる。
「国道です」と言われなければ、まあいたって普通の階段/遊歩道。
でも目の前には陸奥湾が広がっているので景色はなかなかいい。
(360段近くあって、帰りは大変だった・・・)


下りた先は寂れた漁港。
どこか食べられる場所がないか探してみたら津軽半島の最果てに似つかわしくない
「ミッキー食堂」という名前の、
しかし色褪せた看板にミッキーマウスやミニーマウスが描かれて
古びたところは最果てにふさわしい、そんな食堂があった。
客寄せのカラフルなのぼりが何本も立っている。ガラガラかと思いきや客が入っている。
壁に貼られているメニューには刺身やウニ・いくら丼など。
「これってどうだろうか・・・?」とケンと言い合う。
「思い切って入ってみようか・・・?」
ちょうどそこへ店から食べ終わった客が出てくる。
その後ろからは店を切り盛りしていると思われるおばちゃんが。
この地方では典型的な外見をしている。
パンチパーマっぽいチリチリの丸いパーマをかけてそれを茶色く染めて、
着ているものは紫色のハデハデな、
ところどころラメ入りっぽい薄手のカーディガンみたいなやつ。
僕とケンは無言で、「やめようか」と視線を交わす。


この歩いていった先に太宰治の石碑がある。
やはり「津軽」から取られた、
「ここは本州の袋小路だ・・・」から始まる一節が刻まれている。
石碑があるというだけで他に何もない。
他には誰もこれを見に来ている人はいなかった。
周りに広がるのは護岸ブロックと漁港に繋がれた小さな、使い古された漁船たち。
今も昔もここは確かに袋小路だ。
他にはどこにも行きようがない。後はただ、引き返すだけである。


階段国道を上っていって、上った先で目に入った食堂に入る。
14時を過ぎていてあんまりゆっくりしていられる時間はなかった。
るるぶ」で紹介されていたもう1件の店は夜逃げしたのか、営業していなかった。
ケンは海鮮丼を頼み(「今日はウニとひらめの刺身がつきます」とあった)
僕はツブ貝、海老、ホタテ、イカの入った竜飛岬ラーメンを頼む。
食べている間僕とケンは何も言わない。淡々と口に運んでいく。食後に感想も語らない。
そもそも海老やイカやホタテが一緒に入っていてラーメンとしてうまいものになるのなら
東京のいろんな店でやってるよなー。
やってないってことは個性の強いもの同士放り込んで
味が奇天烈なものになってしまうってことなんだろうな。
まあ、せっかくこういう観光地に来たのだから
冷静に考えてみたらおいしくなりそうにないものでも
なんか「食べなきゃ損」みたいな気持ちになってしまうし、
カレーライスやただのラーメンを食べるぐらいなら、
こういうものを食べた方が少なくとも話題のネタになる。
食べ終わってお金を払って、余計なことは何も言わず、店を出る。
・・・3軒あるうちの「るるぶ」で紹介されていた2軒から外れていた1軒だからなあ。


竜飛岬の展望台へ。
お土産物屋で口直しに味噌おでんを食べる。
青森特有なのか、白味噌に砂糖と生姜が入っていて濃厚なタレになっているものを
おでんにかけて食べる。ゆで卵、こんにゃく、さつま揚げ。1個50円。安い。
そのほかにもハンペンや大根があって、これを全種類食べたほうがよほどいい昼飯になった。
竜飛の水を使った水出しコーヒーをケンが買ったので僕も買う。
青森では最近これがはやっているのか、八甲田の水を使ったものなどいくつか種類がある。
一缶550mlという大きさで缶コーヒーサイズではなく、むしろコーヒーの缶詰。
買ってその場で飲むものではなくて、自宅用。


灯台を見学する。
ここの灯台は中に入ることができる。
内側の壁には日本地図が貼られていて、中に入って見学可能な灯台の印がついている。
そんなに数はないようだ。
後で母にこの話をしたら「竜飛の灯台はいつでも中を見れるのではなく、
普段は閉じられている。いいときに見に行った」と言われる。
大勢の観光客がこの岬の展望台を訪れていた。
竜飛は他の地域とは違って「本州の最果ての地」として昔から多くの観光客を惹きつけてきた。
灯台の中の暗くて狭い空間に人が大勢入り込んでいる。
人一人動くだけで精一杯の狭い階段を観光客同士が身をよじらせてすれ違う。
外に出るとそこには日本海が広がっている。青と灰色とが混じり合った水平線。
灯台の外には海軍の観測所として、
コンクリートで作られた円形の隠れ家のようなものが展望台の地面に半ば埋め込まれていた。


展望台の下には「津軽海峡冬景色」の記念碑まであって、
観光客がボタンを押すと1曲流れてくるようになっている。