青森帰省4日目

(本来ならば5月1日日曜日のこと)

ケンが泊まったので3人で朝食。
僕が友人を連れてきて泊めるのは大変珍しいことで
大学のときに映画サークルの後輩ヤマダ君が
東京から何日か泊まりに来たとき以来、これで2回目。


家中に掃除機を掛けて、部屋の中の埃を雑巾で拭いて、
荷物を整理してボストンバッグに詰めて東京まで運んでいくものと
宅急便で送ってもらうものとを選り分けた頃には家を出る時間となっている。
あっという間の4日間だった。
せっかく1年ぶりに戻ってきたのだからもっとゆっくりしたいところなのだが、仕方ない。
明日は仕事で、新しいプロジェクトに加わる初日だ。


ケンの車で青森市街まで送ってもらう。
時間があったので「ラビナ」の新星堂に入ってブラブラとCDを眺める。
The Velvet Crush 「Heavy Changes」がなぜか「新譜」として売られていた。
97年発売。青森のこういう店は商品の回転が鈍い。
他にも古い古い、東京では既に廃盤で入手不可な物も新譜として売られていた。
「Heavy Changes」はもしかして8年間ここで眠っていた?
定価で買う必要はないんだけど、せっかくだからと不憫に感じて買った。
東京に戻って部屋の中でさっそく聞いた。


青森駅で駅弁を買う。ホタテ釜飯。
青森〜八戸間では食べず、八戸から新幹線に乗ったときに食べる。ビールを飲みながら。


岩波文庫の「20世紀アメリカ短篇選」の下巻を読む。
主に第2次大戦後の作品が並ぶ。
巻頭の作品はウラジーミル・ナボコフの「ランス」
元は亡命ロシア人であるのにアメリカの短篇選に選ばれるのが嬉しい。
ユードラ・ウェルティ、バーナード・マラマッド、ソール・ベロウ、
ジーン・スタフォード、カーソン・マッカラーズといった
日本の読者には比較的馴染みの浅い名前が続いた後で、
J・D・サリンジャーカート・ヴォネガット・ジュニア
トルーマン・カポーティフラナリー・オコナージョン・バース
ドナルド・バーセルミジョン・アップダイクフィリップ・ロス
最重要作家たちが並ぶ様は目次を見ているだけでも圧巻。ため息が出る。
やはり印象に残ったのはサリンジャー
ナイン・ストーリーズ」にも収録されている「笑い男
どうしてこうも活き活きと少年たちを描けるのだろう?
どうやったら人生のささやかなほころびをここまで繊細に描けるのだろう?
僕は大学合格の電報を受け取って東京に向かう新幹線の中で
ライ麦畑で捕まえて」を初めて読んで、
大学2年生の夏、語学研修生として1ヶ月過ごしたモスクワの空の下で
ナイン・ストーリーズ」を、
特にその冒頭の「バナナフィッシュにはうってつけの日」を読んで
僕は「正式に」小説家になろうと決意した。
その日のことが思い出された。


新幹線は何事もなく東京に到着した。
中央線に乗って荻窪へ。
部屋に入って荷物を片付ける。大家さんにお土産を持っていく。
11時に青森を発って、15時には東京について16時には部屋の中。


ブラックジャック全巻制覇するぞ!」と意気込んで帰ったものの
10巻から17巻までを読んだだけ。
残りをまた青森に戻って読まなければ。
秋ぐらいにはまた青森に戻りたいもんだ。