宇都宮餃子ツアー 2/4

テクテクと長いこと宇都宮の大通りを歩く。
空は晴れていて外に出るにはとてもいい日。
なのに青森に負けず劣らず閑散としている。
ゴールデンウィークなのにどこの店も閉まっている。人通りも少ない。
恐らくこの辺が目抜き通りだろうという箇所に差し掛かるとさすがに人の流れが増えた。


「みんみん 本店」のある路地裏に入っていく。
付近を歩いている人がいないので「ああ、並ばずに入れるものなんだな」と思った次の瞬間、
・・・「本日定休日」の札が。ありえん。ゴールデンウィークらしくない。
駅ビルの店舗では営業していたようだが、さすがに戻る気にはならず。
ふと見ると目の前には行列ができていて、宇都宮で行列と言ったら餃子以外にありえないと並んでみる。
「シンフー」だった。
大阪の餃子スタジアムでついこの間食べたばかり。でもまあいいかと思う。


行列はなかなか前に進まない。
大通りに出てすぐ近くにパルコがあったので「るるぶ」を探しに行く。
上の階の本屋までエスカレーターで上っていく
さらにその上にはタワレコがあったが、長居しそうになるのでやめておく。
るるぶ」がようやく見つかる。
・・・のであるが、宇都宮の餃子は2ページぐらいしか紹介されていなかった。そんなもの?
「ガイドのとら」というのを見つけて、こっちは4ページ割いていたのでこれにする。
写真入の紹介を見るとどこの餃子もおいしそう。
きつね色にパリッと焼けた餃子にふわっと羽根がはえている。
具沢山のスープの中にふかふかの餃子がぷかぷかと浮かんでいる。


「みんみん 本店」「シンフー」の近くに「正嗣 宮島本店」というのがあって、
ガイドブックを見ると「みんみん」と人気を2分する店だという。
「みんみん」に向かう途中通り掛かったんだけど
店は開いているのに客が入っていないので
「ああ、これは卸しの店なのだな」と僕は思ってしまった。
開店は14時からとなっていて、僕らは仕込みをしているところを見たわけだ。


行列に戻ってみると全然進んでなくて驚く。何人分か進んだだけ。
向かいにある総菜屋は忙しそうに店主のおじいさんとおばあさんが
あれこれおかずを作っているのに誰も買いに来ない。かわいそうに思う。
空腹を堪えて待ってる人がちょっとつまめるものを作って売ったら売れるのにな、
と後輩の1人が言う。


ガイドブックを見て、他によさげで空いてそうな店がないか探す。
「輝楽」という店をよさそうに思う。
偵察に出かける。そこが空いてそうならそっちに切り替えるつもりでいた。


パルコの裏へ。アーケードのある商店街となっていて、ここがどうも中心部の繁華街のようだ。
「ばるち亭」というカレー屋があって客がたくさん入っている。
「おお、食べてみたい!」と思う。
その後後輩たちに「気になる気になる」と力説したのだが、
後でもう1度見てみたらなんてことはない、「バルチック」カレーの系列店だった。
よく見たら例のロゴマークが看板に入っていた。
その近くには「宮たこ」というたこ焼き屋があって
女子高生や若者たちが群がっていてこれはこれでおいしそうだった。


アーケードの商店街の中に「輝楽」を見つける。
創業昭和35年というだけあってものすごく店構えが古い。
早い話小汚い。地震があったらすぐにもぺしゃんこになりそう。
が、行列こそできてないものの、中は満員。
小汚い店で客が入ってなければどうしようもないが、
満席というならばその店には何かがある。何がどうあろうとうまいに決まっている。
後輩に携帯で「ここはなかなかよさそうだ」と電話する。
すると後輩が言うには、シンフーは今団体のお客さんが出て行って行列がかなり進んだとのこと。
だったらせっかく並んでいたのだからシンフーがいいねということに決まる。
シンフーへと戻る。


戻ったはいいもののまだまだ中に入るには程遠い。
日は高くなり、気温も上がっている。プチ炎天下。
その後さらに30分は待っただろうか?
店に入って食べ始めたのは13時30分頃だった。
4人用の簡素なテーブルに簡素な椅子があるだけ。
6人がけの丸テーブルが1つだけあって、うまいこと僕ら6人はそこに座ることができた。
ここのメニューは豊富で、いろいろな具材を用いた餃子がある。
普通のニンニク入りの餃子、カレー餃子、海老餃子、イカ餃子、タコ餃子、わかめ餃子、
明太子餃子、ピリ辛餃子、渡りがにの餃子、1日限定30食までのふかひれ入りの餃子、などなど。
全種類を一皿(6個入り)ずつ注文する。一皿だいたい200円ぐらい。安い。
あとスープと、僕だけご飯。
生ビールで乾杯。


壁には宇都宮と餃子の歴史を記したポスターが貼られている。
曰く、餃子の餃とは「食に交わる」と書くと。
「ははぁー」ともうこれだけでありがたい気持ちになる。
宇都宮が何で餃子の町となったのか?
これは実は90年代の初めに、宇都宮市役所が
かんぴょう以外に何の特産もない宇都宮に名物を作ろうとしたとき、
調べてみたらたまたま宇都宮の餃子消費量が全国で1位だという事が分かり、
ならばこれで売っていこうということになったとういだけのもの。これが始まり。
よく考えてみると餃子という食べ物は
どこでも作ることができてどこでも食べることができる。
水の良し悪しに大きく左右されるとか、材料の制約もない。一定の鮮度を保てるならば。
日本のどこか全然別な場所で「うちは餃子の町だ」と言い出していたら、
そして大々的に展開されていたら、早い者勝ちで負けていたことになる。
そう考えると不思議なものである。
その後宇都宮の餃子という認識はあれよあれよというまに
しっかりと根を下ろし、全国的にも定着した。
そもそもなぜ宇都宮で餃子がたくさん食べられていたのか?
これは太平洋戦争中に中国東北部の大連に駐屯していた部隊が宇都宮に引き上げてきたときに、
戦時中に食べた餃子が忘れられないと持ち帰ってきたことがきっかけらしい。


そんな餃子の町宇都宮であるが、実際訪れてみると僕の中で思っていたイメージは全然違っていた。
餃子専門店は確かに宇都宮にたくさんあるけど、宇都宮市全体に散らばっていて
月島のもんじゃ商店街のようにどこもかしこも餃子屋ということはない。
僕は餃子屋しかない餃子横丁のような、ものすごく濃ゆいものを想像していた。
ブラブラ歩きながらとある店先で6個入りの焼き餃子を買って食べたら
向かいの店で今度は水餃子を、みたいな食べ歩き。
大阪の道頓堀でたこ焼きでも食べているかのような。
今回初めて訪れて、ここまで並ぶものだとは思ってもみなかった。
もっと手軽に食べられる方がいいなー。


シンフーの焼きたての餃子が皿に盛られてイッキに出てくる。
どれがどの餃子なのか、素人目には何も分からず。
辛い系のは見た目が赤いので分かるが、それ以外のは食べてみないと分からない。
食べてみても、僕はラー油をドバッと入れて辛くしてしまったので細かい味の違いが分からない。
というか「うまい」「おいしい」というだけで大満足なので
どの餃子だろうと細かいことにこだわる気になれず。
生ビールをゴクゴク飲み干すと2杯目は宇都宮の地ビール「餃子浪漫」にする。
地ビール特有の濃い目の茶色い色と苦味の利いた味をしていた。
とにかく目の前の皿の上の餃子をバクバクバクバクと口に運び続けて、ご満悦。


窓の向こうは切れ目なく行列。
腹をすかせた子供たちがガラスにおでこをくっつけて僕らが食べるのをじっと見つめていた。