「ターミナル」

14日の土曜に映画部の第2回映画鑑賞会を行う。
この週は新しいプロジェクトでの仕事が本格的に忙しくなってきて
週の後半は毎日、常駐先のビルを出るのが23時。
そんなわけで無茶苦茶疲れていた。
金曜はずっと肩凝りがして、土曜にはそれがひどくなっていた。
(僕は体質的にめったに肩凝りにならない)
今回は集まるメンバーも少ないし、やめようかなあとも思うが、
「火を絶やしてはならない」という気持ちも強くあって、予定通り見に行くことにした。
ただ、見に行くものは直前になって変えた。
5月は「交渉人 真下正義」にしますと前々から言ってたんだけど、
かなり混んでそうだったのでまたの機会に。
池袋の新文芸座にて「ターミナル」「ボーン・スプレマシー」の2本立てを
やってるということがわかって「見てー!」と部長権限でそっちにする。
どっちも1月2月の「地獄」の時期だったので思いっきり見逃した。
顧客の新システムが稼動開始直後。
あれやこれやの対応で死にそうに忙しく、
時間をやりくりして見に行けたところでたぶんずっと寝てた。

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「ターミナル」


トム・ハンクス扮する、東欧の小さな国からニューヨークに来た主人公が
祖国のクーデターの関係でパスポートもヴィザも無効になって入国できなくなり、
空港から出られなくなったまま空港の暮らし始める。
最初はあれやこれやトラブル続きだったのが空港職員の友達も増えて
その生活も楽しくて前向きなものになる、という話。
やろうと思えば空港から脱出したり亡命もできたはずなのに、
みんなにそのことを勧められるのに、
「自分には約束がある」「そのためには待たなくてはならない」と主人公は一歩も譲らない。
ヴィザが下りる日のことをひたすら待ち続ける。


恥ずかしながら泣いてしまいました。
(20代後半から涙腺が緩くなって、30代に入ってさらに緩くなった)
主人公ビクターが「ピーナッツの缶の中身」、ニューヨークまで来た理由を
キャサリン・ゼタ・ジョーンズ扮する恋多きスチュワーデスに説明する部分。
「そりゃ待つよ!」と思ってしまう。


泣ける映画かというとそういうわけではなく、どっちかというと圧倒的にコメディー。
大人が見て十分に笑えるコメディー。
トム・ハンクスの演技もいいんだけど(「レディ・キラーズ」なんかよりはよっぽどいい)
これって監督のスピルバーグの仕事が素晴らしいんだろうな。
この人はある意味映画界の長嶋茂雄みたいなもんだから
作ってる自分がワクワクした気持ちで撮っていたら
出来上がった作品にもワクワクした温かい気持ちが宿ってしまう。
そのキラキラした感覚がフィルムのあちこちで光っていて心地よく映画が見れてしまう。
今回の映画では実際の空港での撮影が困難なため、空港そのものをセットで作成して
その中にマクドナルドや yoshinoya や Hugo Boss などの本物の店舗を出店させたのだという。
なのでどこからどう見ても空港そのもの。
ものすごく大きなおもちゃを与えられてニコニコした気持ちでいっぱいのスピルバーグ
それがスクリーンを通して伝わってくる。見てるこっちもニコニコしてくる。
こういうのが何の臆面もなく撮れるというところにスピルバーグの天才を感じる。
70年代から00年代に至るまで、フィルムにマジックを宿らせる才能、
映画というものに夢中になれる才能はスピルバーグがずっとナンバーワンだったのだと思う。
今、最も信頼できる監督なのではないか?
「稀代のフィルムメーカー」という呼び名は今でこそふさわしい。


同じくトム・ハンクスが出演した「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」も面白かった。
ものすごく面白かった。
スピルバーグは今が旬?そう言われてみるとずっと旬だった。
プロデュースした作品のことを考慮すると特にそう思う。
60近い今に至ってもずっとその勢い衰えないのには舌を巻くより他にない。


劇場で観ることができてよかった。
思う存分楽しい気持ちに浸ることができた。


今回見ていて気が付いたのは、
良質な映画となるキーポイントの1つに「小道具の活かし方」というものがあるんだなと。
役者とその背景だけではなくて、
スクリーンに持ちこめるもの全てに意味とこだわりを与える、考えてみるのだということ。
粋な小道具はストーリー展開にちょっとしたひねりを、ユーモアを、もたらす。
「ターミナル」で言えば、トム・ハンクスの手形のコピーであるとか。
こういうのがサラリと書けるようになったら、脚本家として一人前なんだろうな。