23日16時35分頃の千葉県北西部の地震について

昨日地震が起きたとき(16時35分)、僕は池袋のレコファンの中にいた。
Free Design のラストアルバムの国内盤を中古で見つけ、レジに並んでいた。
そのとき、大きくグラッと揺れた。
揺れ続けるかと思いきやそんなことにはならず、大きな波のような揺れが一度きりだった。
店内がどよめいたものの、すぐにも収まった。
店長らしき男性が入口の自動ドアの手動で調節をした他は
何事もなかったかのように全てが元通りになった。


外に出ると隣のビックカメラの前に人が集まっている。
ワイドスクリーンのテレビが2台置かれていて、大相撲の中継が映っていた。
もちろん人々は相撲が見たくて立ち止まっているのではない。
画面の端に「関東地方を中心に強い地震がありました」とのテロップ。
震度まではまだわからないようだ。


さらにその隣の DiskUnion に行こうとしたらエレベーターが動かない。
「↑」の表示のまま2階で止まっている。
裏の階段から4階に上がる。
後で乗ろうとしたエレベーターを見たらチラシの裏に手書きで「故障中」と貼られていた。
もしかしたら中に閉じ込められている人がいるかもしれなかった。


池袋駅の地下に下りていくと、人だかりができている。
有楽町線が運行を停止していた。
停滞した、ぐったりした雰囲気が広がりつつあった。
扇子で神経質そうに扇ぐ人、深刻そうに顔をしかめて話し合う人たち。
公衆電話には待っている人の列ができていた。
JRは動いているのだろうかと改札をくぐってみると山手線もまた、止まっていた。
確かに強い揺れではあったが長くは続かなかったし、電車が止まるほどのものだろうかと思う。


人々の多くが携帯電話でメールを打つか、誰かと話していた。
「無事だったよー。そっちは?」とか「電車が止まってて移動できない」とかいうものなのだろう。
地震直後、僕は連絡を取りたい、取らなくてはならない人ってのが特にいない。
こんな(プチ)孤独な人たちがどれぐらいいるのだろうと思う。
このホームに、止まってしまった電車の中に、地震に遭った東京の中に。


しばらくホームで待っていると、
埼京線は安全の確認が取れたので運転を再開するというアナウンスが流れる。
皆、階段を下りて移動を始める。
上りの階段へ。誰か先頭の人が走り出すと皆が同じように走り出す。つられて僕も走り出す。
乗り込むとすぐに走り出した。
山手線はまだ止まっている。ホームに立ち尽くす人たちの姿が窓ガラス越しに見える。
徐行運転のため、自転車に乗ってるのと余り変わらないぐらいのスピードになる。
ノロノロと目白、高田馬場、新大久保と過ぎていく。
ゆっくり走っているといつもの見慣れた光景もなんだか等身大に感じられる。
町ゆく人たちもゆっくりと歩いているように見える。


目の前の吊革広告はJRの時刻表の8月号発売というもので、
時刻表って毎月発売されているのか、ということを知る。
地方の駅弁や名所についての記事が掲載されているらしい。


とにかく池袋で足止めされず、新宿まで戻れるのが嬉しい。
でもなんで埼京線だけ動いている?
「電車の中で一番強いのは?」「サイキョウ線」そんななぞなぞを思い出す。


新宿駅で下りて、買い物の続きを。
新南口からそのまま高島屋へ。
「Bエレベーターがただいま、運転を再開しました」とアナウンスが流れる。
12階の HMV でCDを買う。フラッグスの Tower Record へ。
この頃には地震が起きたことの影響も解消されたかのように感じる。
油断した。「さて帰るか」と南口の改札を通ったのが大失敗だった。
中は大混雑。相変わらずどの路線も止まったまま。埼京線すら止まっているようだ。
繰り返し繰り返しJRからのアナウンスがなされる。
外に出るかと改札機に SUICA を当てたらはじかれた。
そうか、地下鉄の定期券なんかと違って同一の駅で出たり入ったりできないんだ、
ということを思い出す。
清算機も改札横のJR職員の窓口も長蛇の列。
人ごみをかいくぐって末尾を探そうとしたらとんでもないことになっていた。
出るに出られなくなる。


諦めて「仕方ない。まあ気長に待つか」と
まずは駅構内の「味彩」にて食券を買い、チャーシュー麺に味付け玉子を追加して食べる。
こちらはこちらで長蛇とは言わないまでも列ができている。席も埋まっている。
空いていた席を見つけて座って食べる。何時間かぶりに腰を下ろすことができてほっとする。
とにかく座って過ごす時間を長引かせたいのでゆっくりゆっくり食べてスープも飲み干す。


階段を下りていって14番線、総武線のホームへ。
階段に座り込んでいる人たちが大勢いる。
途方にくれたり眠ったり、暇そうに携帯を眺めている。
ホームには山手線が止まっていて、
中で立っている人も外に立っている人もぐったりしている。
ピリピリした雰囲気はない。JRの職員を捕まえて意味もなく詰め寄ってるような人もいない。
これって今日がかなり涼しいからよかったんだろうな。
35℃を超えてたりしたら、辺り一面殺気立ってたかもしれない。
目の前を通り過ぎる人々の聞こえてくる会話を聞いていると、
皆割りと冷静に、のんびりと待っているようだった。
ただ一度だけ、ホームの真ん中、人が密集している辺りでギャーッという派手な悲鳴が聞こえた。
僕のいる場所からは何がおきているのか見えなかった。
悲鳴の後、当人や周りの人からのリアクションがなかったことと声の感じからし
何らかのヒステリーだったのではないかと思われる。


僕は柵に寄りかかって気長に文庫本を読んで過ごす。
動く気配なし。
電車は止まっているのに、エレベーターは何事もなく動いていて、人々を乗せて上に流れていく。
考えると、なんだかちょっと不思議な感じがした。
大勢の人々がエレベーターに乗って上に上がり、階段で下に下り、右へ左へと絶えず移動していた。
彼ら/彼女たちはこの状況でいったい何を求めて移動していたのだろう?


どこかで花火大会が行われるのか、浴衣を着た女性のカップルが多かった。


しばらく待っていたら、9番線で高尾行きが発車するというのでそちらに移動した。
ラッシュ並みに混雑するのかと思いきや、かなり空いていた。
もっとも、発射直前になってかなり人が駆け込んで乗り込んできた。
走り出す。埼京線のときのように、ゆっくりゆっくりと注意深げにそろそろと電車が進んでいく。
「線路の状態を確認しながら進んでいます」と車掌より解説が入る。
あくまで快速運転のようで、新宿を出ると中野まで止まらない。
途中の駅で下りたい人はどうしたらよかったのだろう?
近くだから歩いてほしいということだったのだろうか。
中野から先は休日運転とはならず、各駅となった。


中野で下りてブロードウェイに寄りたかったのだが、
何がどうなるか分からないのでそのまま荻窪まで乗っていった。
停まる先々の駅で上りの電車が止まっていた。


夕暮。空が暗くなっていく。
どこかの駅の近くで盆踊りが行われていた。
ピンク色の提灯がにぎやかな光を放ち、人々が踊っていた。
彼ら/彼女たちからしたら地震はとっくの昔に終わった出来事のようだった。
荻窪で下りてしまうと、僕にとっても過去の出来事となってしまった。
西友に入って惣菜や缶チューハイを買う。何もかもがいつも通りだった。


部屋の中は倒れたり落ちてきたCDで大変なことになっていたのではないかと
戦々恐々だったんだけど、それほどひどいことにはなっていなかった。
テレビをつけると、画面の端に各路線の運行開始状況が表示され、
選挙のときのように刻々と変わる状況を伝えていた。
(マウスの上に物が落ちていたので、
 左クリック用のボタンと真ん中のグリグリするやつの調子がおかしくなった。
 今とても文章が書きにくい)


今回の地震は足立区で震度5強マグニチュードは6.0と大型。
そろそろ東京にも大型地震が来るか・・・。