「The September Sessions」「Thicker Than Water」

Jack Johnson 監督「The September Sessions」
土曜に「Step Across The Border」に続けて見た。
これはこれでドキュメンタリーなんだけど、対極の作品。
何も語ってない。すがすがしいぐらいに。
Jack Johnson や G.Love のオーガニックでメロウなアコースティックサウンドに合わせて
プロのサーファーが波に乗ってるだけ。
ただそれだけの70分。
なのにこれが見ていて飽きない。心地よい。「あれ?もう終わり?」と思ってしまった。
こういうのって永遠に見続けたい類の作品ですね。


太陽の光を反射して波飛沫がキラキラと輝いている。
映像の美しさとそこにシンクロする音楽のレイドバックした感覚ってのが重要なんだろうな。
サーフィンに関しては何にも知らないのでうまく言えないんだけど、
とんでもない角度で迫ってくる波をすり抜けて神業的なテクニックでターンする様子だとか、
チューブというんだったか、波が空洞になってそこをくぐり抜けていくだとか。
美しい映像でプロのテクニックを披露するというのは
テレビ番組だろうと映画だろうとみんな目を奪われますよね。
もうずっとそんな感じ。
素直に「いいなあ」と思ってしまう。


「Thicker Than Water」も見なきゃと思って、日曜の夜に見てみた。
こっちの方が先ということもあって、映像作品としてはなんとなく拙い。
インドやアイルランドに仲間のサーファーと出かけて波を待ち、波に乗るというもの。
「The September Sessions」の方が断然いいね。


映画を撮ってきた人間として気になるのは、
フィルムの終わりに差し掛かると映像が白く飛んで黄色や赤に変色するという例のあれを
そのまま作品の中に取り込んでいるところ。
かなり頻繁に出てくるし、1つながりのシークエンスの途中でも出てくるので
たぶんフェイクなんだろうと思うんだけど、この変色処理が何気にかなりリアル。
映画撮影を知ってる人でないと思いつかないよな、こんなこと。
なんなんだろう。波を待つ、素晴らしい映像が撮れるまでじっと待ち続ける、
気長にカメラを回し続ける、そのスタンスの象徴なのか。
実は僕としては、こういうところに一番グッと来る。

    • -

サーフィンって僕の人生から余りにも遠すぎるので語れること何もなし。
周りにもいない。
ハワイで生まれ育ったら僕もサーフィンをやっていただろうか?
学生時代、後輩が茨城の海辺に別荘を持っていて、
撮影にかこつけて毎年のように訪れていた。
別荘にはボディボードが置いてあって、僕もトライしてみた。
でも何をどうやっていいものなのか分からず。
「波に乗れた!」と思える瞬間は後にも先にも1回だけ。

    • -

星新一のエッセイを読むと何度か娘がサーフィンに熱中していることが出てくる。
大会で日本一になったこともあるようだ。
サーフィン雑誌に関わるようになり、親子とも文章に関わる仕事をしているのに
娘は私の本を読むことがないとぼやいていた。
(そういえば星新一を全然読まなくなったなあ。中学・高校時代貪るように読んでたのに)


恐らく「Q」の頃のインタビューだったと思うが、ミスチル桜井和寿
今は何もしたくない、サーフボードを抱えて湘南の海に行きたい、
というようなことを語っていた。なぜか印象に残っていて、ことあるごとに思い出す。

    • -

それにしても、サーフィンの世界大会に出るほどの腕前の持ち主でありながら
映像に興味を持って仲間がサーフィンをしている映画を撮り出し、
その作品で使うための音楽を作り出したら、今ではビルボードの3位とかになってしまう。
Jack Johnson 恐るべき才能の持ち主というか、
僕の知る限り最近のアメリカで最高のサクセス・ストーリー。
素直にうらやましい。

    • -

ついでに星新一の娘、星マリナについて調べてみた。
ハワイ在住で反戦団体 World Map の代表を務めるとのこと。
世界ふしぎ発見」のリポーターをやっていた時期もあるらしい。