振り返る

カットオーバーから2日経過した。システムはだいぶ落ち着いてきている。
昨日は家に帰って寝た。疲れていたので逆に眠れなかった。
これまでのことを振り返ってみた。


僕は何事も自己否定から入る人間なので、例によって暗いことばかり考える。
一言で言ってこういうことになる。
「今回のPJで俺、あんまりいいとこなかったな」
断っておくが、「いいいことなかったな」ではない。


恐らく、「こいつこれぐらいのことはできるだろう」というラインは超えたと思う。
何よりも「8月15日にカットオーバーまで、アプリケーション開発を持っていくこと」が
僕に課せられた最大のハードルであって、それは曲がりなりにもクリアできたのだから。
でもそれ以外のプラスアルファは何もないし、
そのハードルの越え方もちっともきれいではなかった。
フォームを無視して、自己流で、かなり無理やり。


(このことは前にも何度も書いてきた)
この業界に7年目。もう僕はきれいなフォームを覚えることは無理だろう。
下手にこれまで全て乗り切ってしまってきたから、
よほど痛い目に合わない限り、覚えようとしないだろう。
そしてそれほどの痛い目に合うようなことがあるのなら、
とりたててコンピューターというものが好きなのではないし、
それにまつわるいろんなものと今後も向き合っていきたいわけでもないし、
あっさりと辞めてしまうんだろうな。
「そこまでして働きたくない」と。


雑草のように育って、ゲリラみたいなSEとなってつぶしがきかなくなった。
(SEと呼ぶことすらはばかれるかもしれない)
傭兵のように次もまた大変なところに移って、
ルールなしの無法地帯のような場所で好き勝手やって生き残る。
僕にできることはただそれだけ。
スケジュールのゆったりしたPJできれいな進め方で、
となると何もできなくなってしまうだろう。


僕は今回開発やテストの取りまとめなど担当していたが、
言われて、言われて、言われて、初めてスケジュールの線を引いて、
引いた後もほったらかし。他人にとって目に見える形での進捗管理は一切放棄。
自分の勘と感覚だけで全てを把握して指示を出していく。
頼るべきは臭覚と反射神経。自分の五感しか信用しない。
そういうやりかたしか、できなくなった。
こういう人材は長い目で見て会社では不要だ。いずれ淘汰されるだろう。


この半年で何回か上司と面談したが、
「結局君はどういう分野を伸ばしたいのか、どういう分野に興味があるのか」
という話になって、いつも返答に困ってしまう。
実際のところ、何もない。
僕は傭兵なのだから、明日の食事にありつけていればそれでいい。
何ヶ月か先のアパート代が払えて、時にはおいしいものを食べにいって、
毎月何十枚とCDが買えれば、そして年に一回海外に行ければ、
それ以上のものは何も望まない。


もう一度繰り返す。僕はいずれ淘汰されるだろう。
そしてそのことを僕は「そういうもんだろうな」と受け入れてしまっている。
これから先、行った先々のPJで小手先のテクニックを覚える他は、
成長と呼べるものは何もない。


オカムラ、次も忙しいところでいいか?」と聞かれて、
僕は「はい」と答えた。

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新しいプロジェクトを経験するたびに、どんどん自分との戦いになっていく。


・いかにスケジュールを守るか、懸案やリスクを解決していくか
・お客さんとどのように向き合っていくか、様々な物事を調整するか
・協力会社をどのようにコントロールしていくか、状況を把握するか


そういう一般的に「大事」なことは、進めて行くうちにいつのまにか
二次的なものに思えてきて、たいしたことではなくなってくる。


その都度その都度冷静になって判断を下していって
それを行動に移していけば自然と前に進むようになっているものが、
できなくなってしまう。
忙しくなって、疲れきって、箸を持つことすら嫌になってくる。
自らを追い詰めたり、騙したり、投げ出してみたり、
そういうことをローテーションで繰り返していかないと
自分というものが動かなくなってくる。


そしてその「切れる」期限がどんどん短くなっていくように感じられる。
ただ単に年のせいなのかもしれない。
プロジェクトを1つ終えるたびに、どんどん自分のキャパシティが狭くなっていくようだ。
「経験」という名の曖昧なレッテルと引き換えに。


6月後半から7月の前半にかけての時期が一番ひどかった。
開発工程が終わってそのままスムーズにテスト工程に入っていかなくてはならない、重要な時期。
人一人が受け入れられる分量を明らかに超えていると感じた僕は諦めかかっていた。
目の前の物事を右から左に移すだけで精一杯。しかもそれだけで終電近くになる。
何事も投げやりで、ピリピリしていた。
いろんなことに対して敵意剥き出しで、実際そういう態度を取っていた。
周りの人、周りの物事のほとんど全てに対して、悪態をついていた。
「くだらねえ」とか「ばかじゃねえか」とか。
乗り切れたのがどういう理由によるものなのか、今となっては思い出せない。
時間が解決した、というだけなのかもしれない。


振り返ってみて、「そういうのいけないよな」「やだな」と思うものの、
次にまた同じ状況になったときはまた同じことを繰り返すのだと思う。
そして次は他人を殴るぐらいのことはするかもしれない。
「てめえむかついた」とか真顔で言いながら。


いつの日か、切れてしまうのだろう。
そしてその日が来たら、終わりだ。

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今回のPJでは自らのIT技術の知らなさ、関心の無さがはっきりと露呈。
様々な局面においてボトルネックとなった。
それを今からコツコツと埋め合わせていく気力もなし。
平日遅くまで「仕事」してるのに、土日に技術の本を読むなんて到底できない。
それができるかどうかが、出世する人しない人、
という以前にこの業界でやってける人やってけない人の境目なんだろうな。


これまで僕はギリギリプラスのところに踏み止まっていたと思ってきたが、
もうそろそろゼロを超えてマイナスに後退していく。そしてそこから先は引き返せない。
それがもう目の前に見えているのに、
疲れきった僕はなすがまま、流されていくだけ。


あとは爆弾を抱えて敵陣で自爆するだけか。