夏を取り戻す、海水浴に行く(その1)

キーワードは「夏を取り戻す」
そんなわけで会社の人たちと海水浴に行く。場所は千葉県外房の御宿。
混むといけないからと朝早く出発する。午前4時起き。
先輩の家に行って車に乗り込んで、
東へ東へと進んでいって途中後輩の家に寄ってピックアップする。
浮き輪を忘れた、お菓子を買いに行かなきゃ、車の中ワイワイはしゃぐ。
でも僕は前日遅くまで飲んでいて寝てない&二日酔い。テンション低い。
ところどころ会話に参加したり、寝たり起きたりを繰り返す。
BGMはスピッツ「スーベニア」に広瀬香美のベスト。ドライブらしさ満点。


首都高速湾岸線に入って一路千葉方面へ。
朝7時だというのに東京方面は渋滞になっている。
「え、もうこんな時間から?」と驚く。
千葉方面もその後浦安を過ぎた辺りだろうか、渋滞になる。
僕らみたいな海へ向かう人たちなのだろうか?
まさかそんな大勢なはずはないか。


内房はこれまで何度か行ったことがあるが、
というか自分の映画の撮影で何度も上総湊に行ったことあるが、
外房、九十九里浜は初めて。
ひたすら東へ東へと向かっていった末に太平洋に出るとワーッと歓声が上がる。
「海だ!!」目の前には海が広がる。
女の子たちは窓を開けて「海の匂いがする!」と喜ぶ。
まるで生まれて初めて海を見たかのよう。
砂浜でサーフィンをしている人たちが砂浜を歩いたり波に向かっている。
海水浴の親子もちらほらと見かける。
8月の最後の土曜日。くらげが出てるだのなんだの不安だったが、まだまだ泳げる。
ただし空は晴れてなくて、灰色のまま。一昨日過ぎ去った台風の影響なのか波も高い。
御宿を目指して、さらに南下していく。
霧が出てくる。走っていて深い霧に包まれる。
富士の樹海のようだという話になる。


御宿到着。6時出発で9時になっている。3時間。
港から入って狭い道路に入ってどこに車を停めようかと物色する。
グルグル回る。ホテルや海の家が立ち並ぶ。
公営駐車場があちこちにあって、だったらぼられないかとその1つに停める。
1日で1000円。


車から降りて荷物を下ろし、砂浜に向かっていく。
海辺には海の家が何軒も何軒も連なっている。
駐車場から一番近くの海の家の周りにいた、真っ黒に日焼けした、
ヒップホップ好きですみたいな感じのふてぶてしそうな若者が寄ってきて、
「海の家、うちにしませんか?」と誘いの言葉をかける。
「温水シャワー使い放題、ロッカーがあるのはうちだけ。ラーメンはうちが一番うまいです」
他を見てから決めます、と振り切って、砂浜をさらに進んでいく。
海の家を通り過ぎるたびに同様の客引きに会う。


砂浜に人はまばら。ほとんどはサーフィンをしている人たち。
海水浴客は少ない。台風が過ぎたばかりで波は高いし、8月も終わり。こんなもんかと思う。
天気もよくない。昼は晴れるらしいけど、今のところ空は分厚く灰色。晴れる気配全く無し。
素晴らしく波が高く、ザッパーン!!と砕ける。「こんなん泳げるのか?」と素直に思う。
でもまあ、せっかくここまで来たんだしと泳ぎに入ることにする。
外れの方にあった海の家に決める。
温水シャワー、脱衣所利用、荷物の預かりなどで1日1000円。
この1000円という値段は公営価格でどこの海の家も一緒のようだ。
どこも同じというのが外から来る人にしてみればありがたい。


着替えて、いざ、砂浜へ。一応全身に日焼け止めを塗る。
浮き輪・ビーチボールは海の家のおばちゃんがサービスで空気を入れてくれる。
ビニールシートを広げて、荷物を置いて、トコトコと砂浜を歩いて波打ち際へ。
冷たい!さすがに水は冷たい。入るのがためらわれる。
でも思い切って波の中に進んでいく。ひ〜。
女の子2人は入ることをためらい、おじさんたち2人(30代男性)が水の中寒々しくはしゃぐ。
こりゃかなわんといったん上がって、缶ビールと缶チューハイで乾杯した後、ウダウダと酒を飲む。
「朝の10時から飲んでるなんて最高だなあ」という声が上がる。


隣のグループは地元かどっかから来たヤンキーたちで、
海の家で借りたデッキチェアを並べて眠り込んでいる。
金髪にピアス。元からなのか焼いたのか、誰もが全身これでもか、というぐらいに真っ黒。
世界の何事にも関心がなさそうな同じく金髪で真っ黒な女性たちも何人か同行している。
そこが海であろうとなんだろうと自分が水着を着ていようとだるいことには変わりない、
そんな風情を漂わせていた。ひっきりなしに煙草を吸う。
(その後観察していたのだが、彼女たちは彼らと言葉を交わすことがなかった。
 同じ匂いを漂わせていたのに、全然違うグループだったのか)
彼らはどでかいラジカセを持ち込んでいて、ヒップホップやハウスをかけていた。
潮風がよくないのか、しきりに音飛びする。
「スクラッチ?」「んなわけないでしょ」と僕らは言い合う。