メキシコ(9/4)その7 近代美術館/ルフィーノ・タマヨ博物館

前の晩寝たのが午前1時で、目が覚めたら9時40分。
疲れていて、眠い。
なんでだかわからないが、ニール・ヤングの夢を見た。
ライブアルバム8枚組が発売されることになり、その1枚目を聞く。
「Slipaway」「Sedan Delivery」などが収録されている・・・。
なぜゆえにニール・ヤング
確かに今、聞きたい気分ではある。メキシコでニール・ヤング
「After The Gold Rush」ではなく、「Weld」な気分。
"Hey, hey, my, my, Rock'n'Roll will never die ..."


身の回りのものをリュックサックに片付けて、部屋を出る。
今日は1日、チャペルテペック公園で過ごす予定。
公園とは言っても、
・国立人類学博物館
・チャプルテペック城
・近代美術館
・ルフィーノ・タマヨ博物館
・国立歴史博物館
などなどメキシコシティの見所が集まっていて、お得。
その分ものすごく広い。


ホテルの外に出る。
通りの角には新聞売りが立っている。
閑散とした裏通りをパトカーがゆっくりと巡回している。


ホテルからはすぐ近く、のはずであるがいかんせん東西南北がわからない。
とりあえず行き当たりばったりに歩いてみる。
レフォルマ通りという大通りに出ると上り車線下り斜線の間が
木々の植えられた遊歩道になっていて
1ブロックごとに記念塔や記念像の建つ円形の公園が造られている。
ちょっと歩くとそこに出るはずなのだが・・・。
少し歩いて恐らく90度違う、また歩いて180度違う、というのを繰り返して
ようやくレフォルマ大通りへ。
遊歩道に据え付けられたブランコに子供が乗っている。
その側に親が幸福そうに立っている。
ブランコには鐘が取り付けられていて、揺れるたびに鐘が鳴る。


方角が分かると後は楽。
5分もしないでチャペルテペック公園の門に到着する。
大通りだというのに日曜のまだ午前中だからだろうか、
レフォルマ大通りを歩いている人はほとんどいない。
ここは繁華街ではないということなのだろうか?そんなはずはないんだけど。
門をくぐってもそれほど人はいない。
空は曇っていて肌寒い。ネルシャツを上に羽織る。


緩やかな人の流れについていくと、大きな広場というか記念碑が見えてくる。
白い像が立っている。誰を現したものなのかは僕にはよく分からない。
その背後には白い壁、周りを白い柱が取り囲んでいる。
屋台が店を出す準備をしている。
タコスの店ばかりかと思えばそんなことはなく、一軒も見つからない。
その代わりにハンバーガーやホットドッグの店が多い。
タコスが牛肉などを挟んだものだとするとその生地のことはトルティージャと言い、
それだけを売っている屋台も多い。
だけど肝心のタコスがない・・・。
食べ物以外の屋台で見つかるのは、帽子の店、使い捨てカメラの店、お菓子や飲み物の店。
それとメキシコならではなのは、プロレス用のマスクを売っている店と、
子供に化粧をするという店。化粧後のイメージの絵を何枚も貼っていて、
どこかの国のお姫様やポップスターをかわいらしく、かつ、ごてごてとしたもの。
額や頬に青や赤に黄色の絵の具を塗った子供をその後公園の中で何度も見かけた。


近代美術館がすぐ先にあったので入ってみる。
日曜だからだろうか、入場無料。
入り口で荷物(Virgin の買い物袋に入れた各種ガイドブック)を預ける。
ルフィーノ・タマヨ、ホセ・シケイロスディエゴ・リベラフリーダ・カーロなどなど。
フリーダ・カーロは「2人のフリーダ」ではなくて、スイカとオレンジとココナッツを描いた静物画だった。
輪郭のはっきりとした絵を描く人が多い。色彩の感覚はどれも暗い。
濃いオレンジや黄色、茶色、緑、そして黒が基本となる色だろうか。
そしてなんというかシュールレアリスムが入っているというか。
南米の現代文学といえばマジックリアリズム。その挿絵にふさわしいような。
例えばシケイロスは宗教画を描くのであるが、現代的な視点からなされている。
メキシコがカトリックだからとはいえ、盲目的に神を、信仰の場を、美しく描こうとはしない。
民衆の魂が激情として溢れる、奇妙な空間として描かれる。
REMEDIOS VARO の中世を描こうとしてグロテスクになった、
何もかもが機械仕掛けの人形となったかのような絵。
JOSE CLEMENTE OROZO の肖像画。メモしていたのはこの辺りの名前。
興味を持ったからではなくて、たくさん飾ってあったから。
圧巻はルフィーノ・タマヨの描いたとてつもなく大きな作品。
「Homenaie a la raza india - 1952」
1階から地下にかけての吹き抜けを貫く。
黒と紫と赤で描かれていて、不吉な印象を受ける。
この作品はいったい何に対して警鐘を鳴らしているのか?


その次に入ったのはそのルフィーノ・タマヨの名前が付けられた博物館。
公園はレフォルマ大通りで2つに分けられていて、向こう側に渡る。
静かな林の中。子供たちの姿は皆無。
博物館というよりは美術館。ここも入場無料だった。
現代美術を集めていて、建物もまたそれっぽい雰囲気。
地球の歩き方」を見るとピカソやウォーホルの作品を所蔵しているとあったので
期待して行ってみると、常設展示ではないようで残念なことに見当たらず。
中国とインドの現代芸術作品の展示が行われていた。
なぜゆえにメキシコまで来て中国とインド・・・。
しかもメキシコの現代芸術の作品もなし。旅行者からするとちょっとがっかり。
でもメキシコシティの人からすれば
インド・中国のアートに触れる(恐らく)レアな機会なわけだから否定するわけにはいかない。
最初のうち企画展の趣旨に気がつかず、
「メキシコ現代美術ってアジアっぽいね」などとしょうもない感想を持つ。
描かれるモデルがアジア系−中国系ばっかりってのもあって。
写真の作品の中に漢字が映っていて初めて理解した。


何を描くか?そのために何をキャンバスとするか?
そういう観点で奇抜なものが多い。インドの方もそう。
どこかの民族のフォークカルチャーに基づく織物かと思いきや
近付いて見てみるとコカコーラの蓋をつなげて作られたものだったり。
移動式の屋台の中にぎっしりと詰められたお菓子たち。
その間にスクリーンがあって、MTV の独自のコマーシャルを放映する。
ビデオ作品も多い。
六本木ヒルズ森美術館がオープンしたときに「ハピネス」という企画展をやっていたが、
雰囲気がよく似ている。あれの中国・インド版といった趣。
印象に残ったのは:
WENG-PEIJUN 「On the Wall」という連作の写真。
DAYANITA SINGH のスナップショット。
K.G.SUBRAMANYAN のキュビズムシャガールの影響を独自に昇華した絵画。
N.S.HARMA 「For You My Dear Earth」緑色だけで、架空の巨大な植物の断面図を描いたもの。
なんじゃこりゃと思ったのは、
どこをどう見ても巨大なペニスとボールだろうというのが
ゴムボートみたいな素材で作られていて、空気を入れて膨らまされていて、中に入れるというもの。
懐中電灯をもって入っていくんだけど、
中に光を当ててみると小さく象の絵が描かれているぐらいでどうってことない。
ボールの方にも入れる。入ることに意味があるアートなのだろうか?


博物館の外に出る。居心地の良さそうなカフェがある。
コーヒーでも飲もうか、ホットドッグでも食べようかと思うが、
もう少ししてからにしようと国立人類学博物館へと向かう。