メキシコ(9/6)その21 フリーダ・カーロとディエゴ・リベラの家

気を取り直して、気楽になって、フリーダ・カーロディエゴ・リベラの家へ。
この辺りは高級な商業地区なようで、
モダンな構えの店舗に商品がわずかにディスプレイされている、そんな店ばかりだった。ショールーム的。
Futon Tanoshii」という店も見つける。なんとなく経営者は日本人とは思えない。
そんな高級な地区の学校に通っている品のいいメキシコ人の子供たちが
品のいい制服を着てスクールバスを待っている。


陽射しが強くなる。なんかここ3日とも朝は曇っていて昼は快晴。
たまたまか。それともメキシコシティがそうなのか。


フリーダ・カーロディエゴ・リベラが晩年を過ごした家は思いっきり改修中だった。
思わず通り過ぎてしまった。
恐る恐る足を踏み入れると受け付けには人がいて、僕が近付くと入場券を取り出した。
10ペソ。安い。まあ、その分今日見てきた中では最もお手軽なミュージアムだった。
「家」はフリーダ・カーロの青い家とディエゴ・リベラの白と赤の家に分かれ、
屋上にて水平の梯子?が渡されている。
まずはディエゴ・リベラの方。2階に上がる。
2人にゆかりの写真や絵(2人が描いたとは思えないタッチのものもある)が飾られている部屋があって、
その次は白い壁だけの部屋。何色ものポスターカラーの入った小さなカゴが3個壁にくっついていて、
この家を訪れた人がメッセージを残している。
せっかくだから僕も書く。「岡村豊彦 Toyohiko Okamura 2005/9/6」
「岡村参上」としたくなるが、さすがにやめる。
見ると、漢字で何か書いているのは他に1つもなくて、日本人では僕が初めてだったりする。
(定期的に真っ白に戻しているのかもしれないが)
かなり恥ずかしくなってくる。でも、消さない。
その次は「型抜き」っぽいディエゴ・リベラのオブジェが並んでいる部屋で、
その次は四方が鏡になっている部屋。
これって何?・・・遊園地?


次の階はそれらしくなって、アトリエ。キャンバスと絵の具の瓶、チューブが棚の上で乱雑に転がる。
2人の蒐集したものなのだろう、古代の陶器や人形が飾られている。
3階は縦に広い。フリーダの製作したものなのだろうか、それともディエゴ・リベラ
骨をモチーフにした大きな人形が壁からぶら下げられている。
大きいものは3mぐらいあるのではないだろうか。
フリーダ・カーロのグロテスク趣味を思い起こす。
(そう、この家にあるものの多くがグロテスクな何かを秘めている)
4階は小さな屋根裏部屋。椅子に机があるだけ。机の上には週刊誌。
椅子には地味な灰色のジャケット、と茶色のマフラー、
そして地方の農民がかぶるような小さな麦わら帽子が掛けられている。
なんだかほっとする。


フリーダの家へ。やはり2階から。
フリーダのキッチン。茶色い籠にはオレンジ色のドライフラワーが詰められている。
PCがセッティングされている。
なんらかの検索かイメージ映像の上映ができるようになっていると思われる。
さらにその上には以前はアトリエだったのか、大きな空の絵が飾られている。
その隣の小さな部屋にはフリーダの作った
土と石と砂から作られた四角い平面のオブジェが壁に掛けられている。
僕はこのオブジェを見て思った。
フリーダ・カーロの根本にあったのはここにあるような「土」や「砂」だったのではないか?
メキシコの「土」や「砂」あるいは、この世ならぬどこかにある、土、大地。
根拠はない。土と人間、人間性との関係。
ただ単に情熱的にグロテスクな絵を描いていただけではない。
僕はフリーダ・カーロの描いたものではなく、描きたかったものに惹かれる。


飾られた写真を見るとディエゴ・リベラがカラフルに彩色された
洞窟のような場所で生活しているんだけど、それってこれら2つの家だったのだろうか?


先ほどお手軽と書いたが、ここの人たちがもっともやる気なかった。
観光客(僕)が来て初めてそれぞれの持ち場の階に移動する。
僕が離れるとまた下に戻って他の人たちとだべる。
むしろ僕は居心地のいい休憩時間をぶち壊した嫌なやつみたいに思えてきた。
こういう博物館って国営や市営なんだろか?それとも私営なんだろうか。
なんとなく思うに、警備が警官のところは国営や市営のような気がした。
そういうところは展示内容もしっかりはっきりしている。


「ソウマヤ美術館」というのが少し離れたところにあって
ドガルノアールの絵が展示されているようだが、
午後3時を過ぎて今日はもういいかという気分になる。
「Revolucion」という通りを北へとかなり歩く。
かなり歩かないと地下鉄の駅はない。


おしゃれな店が多い。洗練された佇まい。
バーのような店だったり酒屋だったり、
最初来たときはここでは酒は非合法なのかと思っていたのが、すぐ見つかるようになる。
メキシコシティの街並みがだいぶ馴染んできた。
歩いている途中で店に立ち寄ってコーラを買う。
これまで屋台で買ってると10ペソだったので10ペソ硬貨をカウンターに置いて
立ち去ろうとしたら、店の女の子が僕に何かを言って引き止める。
どうもお釣があるらしい。0.5ペソ硬貨がたくさん戻ってくる。
正規の値段は6.5ペソ。その後セブンイレブンでも確かめた。
これまではスペイン語が話せないのをいいことに
観光客レートでコーラを買わされてきたわけか。なんだか悔しい。
とりあえず飲む。メキシコで飲むコーラはいつだってうまい。


この頃になると僕は硬貨を財布にしまったりはせず、
カーゴパンツのポケットでジャラジャラさせるようになっている。
その方がはるかに楽。財布を人前に出すよりよっぽどいいし。