メイド喫茶

昨日の続き。
9月17日(土)は「タッチ」を見てからクリス君の家に行くまでの間で
秋葉原で途中降りてメイド喫茶に入ってみようということになった。
(ひょんなことから、ということにしておく)


秋葉原で下りて、電気街(今でもこういう呼び名なのだろうか)を歩く。
さっそく黒のふんわりとしたスカートに白のヒラヒラのメイドの姿の女の子たちが
店のチラシを配っているのに出くわす。冷静に考えると奇妙なことこの上ない。
外国人観光客向け観光スポットとしての意味合いの強い
各種パーツが闇市のように売られている小さな店の並ぶ一角を通り抜けて、
横断歩道を渡る。ここから先が秋葉原の中心地帯だろうか。
見るからにオタクらしき人たちが歩いている。
どこで買ったのか分からないようなデザインのTシャツに紙袋。小太り。
「すげー。本物だー!」と思ってしまう。
電車男」ってまだ読んでないが、こういう男たちにほんとに惚れるのかよ?
世の女性の一部分は。僕としては絶対信じない。
オタクのカップルらしき人たちが揃いの電脳系うちわで扇ぎながら歩いている。


案内してくれた後輩が「ここです」ととある背の低いビルの前で止まる。
よく見ると看板が出ていて、2階と3階が「メイド喫茶」となっているようだ。
それぞれ別の店。階段を上っていく。
2階の店は行列ができていて、3階の店も行列ができていた。
ものすごい人気。メイド恐るべし。
3階の店にとりあえず並ぶ。
僕らの前の集団は防衛大学の(恐らく海上自衛隊系の)白い制服を着た
純朴そうな若者たちで、久々の上陸に町に繰り出したという感じだった。
18歳か19歳でみんな童貞。メイド喫茶なるものに多大なる興奮を感じてる。
むせ返るような自意識を真夏のように暑い秋葉原に放射する。
並んでいるうちに彼らは諦めてワイワイ言いながら階段を下りていく。
その後すぐ僕らは入ることができた。彼らも黙って待ってればよかったのに。


内装は簡素。なんちゃってビクトリア朝の末裔の継子とでも言うべきか。
壁は上半分が白で下半分がチョコレート色。
メイドが忙しそうにテーブルの間を歩いている。
たぶん以前はなんか別の店だったのが不景気で空いてたのを
どっかの経営者が流行りだからってんで急遽メイド喫茶にしてみた感ありあり。
文化祭の模擬店のような完成度の佇まい。
メニューはまあ普通にコーヒーとか紅茶やケーキがあって、カレーやビールもあった。
カレーはレトルトなんだろうな。
他のみんなは普通の飲み物なのに、
僕は罰ゲームなのか「オカムラさんが一番行きたがってたから」
ということで「らぶらぶカフェモカ」をオーダーさせられることになる。
「メイドと2人で作ります」みたいなことが書かれている。
な、なにをさせられるのだろう?
手は握ってもいいのだろうか?(いいわけがない)
とりあえずメニューの該当箇所を指差して「らぶらぶカフェモカ」というときは
非常に恥ずかしかった。かつてない恥辱。
出てきたのは単なるカフェモカで、カップの中のクリームにメイドがコーヒーを注ぐとき、
僕がスプーンでかき混ぜるというだけのもの。
店内は写真撮影禁止だったんだけど、この瞬間の光景だけは撮っておきたかった。
たぶん僕はかなり微妙で複雑な表情をしていたものと思われる。
苦笑いして引きつってるのをむりやり冷静にしているような。
このときのメイドは非常にタイプから遠く外れていて、
店の一番かわいい子だったらよかったのに、と素直にそういうことを思う。
たぶん↑のような子はコスプレのイベントにたくさん出てるんだろうな。


こういう店で働いているこういう女の子たちの日常生活ってものは非常に興味がある。
プライベートでもこういう格好をしているのか?あるいは好きなのか?
キャバクラ嬢がああいうスケスケの格好をしているからといって
彼女たちがそういう格好が好きかというとそんなわけがなく、
というのと同じだとは思えなくて
好きでコスプレ系の衣装を着ているのだろうけど、どういう形で何を使い分けているのだろう。
そもそもコスプレとかアニメとかって何がいいわけ?
将来の夢とか希望ってどんなの?
どんなとき、「現実」に直面したと思う?


店の中の客はオタクそのものの人たちが半分と僕らみたいな冷やかしが半分ってとこか。
女性客だけの冷やかしってのもいたし、
コスプレ予備軍の女子中学生(フリルのついたなんか奇妙な衣装を着ていた)が
母親と一緒に来ていたりした。
あとオタクっぽくないけど普通にくつろいでいるような男性客たちもいた。


店に入るときメイドたちは、「お帰りなさいませ、ご主人様」と笑顔で挨拶。
(なりきってる人はほんとアニメ系の笑顔だし、仕事でやってるような人は適当な笑顔)
店を出るときは「行ってらっしゃいませ、ご主人様」となる。
入ると出るで普通と逆。屋敷に帰ってきてメイドが出迎えるという「設定」だからか。
「お帰りなさいませ」と言った後でメイドは
店内に向かって「ご主人様のご帰宅です」と大きな声で言う。
「ご主人様、4名様のご帰宅です!」
女性のお客さんのときは「お嬢様」となる。
「変なのー」と素で思って笑いたくなる。
入口で「ご主人様は何名様ですか?」と聞いてくるし。
知らない人を「ご主人様」と呼ぶのって、メイドじゃなくて、奴隷だよな・・・。


見てて面白いのはメイドたちってのは
同じ衣装を着ているからといって抽象的な存在で誰も彼も一緒ってことはなくて、
顔つきや背丈以外に異なる箇所はないってことはなくて、
現実社会の縮図ってのはどこにでも当てはまるようで
仕事ができてテキパキとした身のこなしのメイドと
(たぶんコスプレがたまたま好きなだけで、どこでどんな会社で働いてもつとまりそう)
なんか仕事できそうになくてほんとコスプレ以外にやることのなさそうなメイドとかいることだ。
結局のところ、ここは単なる特殊な喫茶店でしかない。
ブームが過ぎ去ったら、淘汰されて秋葉原でも1軒か2軒残るかどうかだろう。


ま、他の店に入ってみたりはしないと思う。
話を聞くと世の中にはメイド居酒屋やメイドキャバクラってもあるようで
どうせならそっちの方に行きたい。