大名古屋旅行 その7(マウンテン)

7時か8時頃目を覚ます。
会社に顔を出さなくてはならないというヤンマが
キッチンやバスや寝室を行ったりきたりしているのを夢うつつの状態で聞く。
眠り足りなくて目を閉じる。次に目を覚ますと30分か1時間経過している。
それを何回か繰り返し、10時になって本格的に起きる。
起きてぶらぶらとその辺にあった本を読んでたりしたらオーヤマさんもタツジンさんも起きだす。
新聞には昨日の来場数23万人とあった。恐らくベスト5に入るのではないか?
僕がシャワーを浴びて出てきた頃、ヤンマが会社から戻ってくる。
「まさかついさっき起きたと言わないよね?」とあきれる。


大名古屋名物喫茶「マウンテン」へと出かける。
村上春樹都築響一、吉本 由美の3人による「地球のはぐれ方」がオーヤマさんの家にあったので読んでみたら
巻頭がいきなり名古屋で、しかもその一番最初に来るのが「マウンテン」だった。
ということはもう、日本全国的に名古屋といえば「マウンテン」である。
ここを訪れずして名古屋を語るなんてことをしたら関係する皆様に対して失礼に当たる。


今日もまたよく晴れている。
御器所」で鶴舞線に乗り換えて「いりなか」で下りる。
何の変哲もない住宅街。ときどきポツリポツリとおしゃれなカフェやレストランがあったりする。
もしかして「マウンテン」以外に何もないところなのではないかと思う。
右に曲がったり左に曲がったり坂道を歩いて行ったりした末に見つかる。
オーヤマさん・ヤンマはこれが2回目。以前行ったことのある人でないと見つけるのは難しいな。これは。
でっかい「マウンテン」の看板がある。広い駐車場には車はちらほらと。
山小屋っぽいつくり。しかも流行ってなくてつぶれかけのドライブインみたいな。
「サボテンスパ」用なのかサボテンが力無く生えている。
茶店ということで「ボンタインコーヒー」と書かれているが、
僕としてはそんなメーカー聞いたことが無い。名古屋を中心にしてるのか。
こういうところからしてマニアックな印象を受ける。


中に入る。思いっきり寂れている。あちこち古めかしい。
奇抜この上ないメニューと量がなかったら、とっくの昔にこの店は消えていたことだろう。
すっとぼけたメニューを出す、体育会系の学生の罰ゲーム用に常人には食えない量を出す、
味で勝負できないなら手っ取り早い解決策はこの2つとなる。
これを何の臆面も無くやってしまったのだからこの店は偉い。
全国の喫茶店よ見習うべし。近いうちにこの店はB級グルメの王者となるだろう。


席についてそれとなく周りを見回してみるとみんな、変な「モノ」を前にして
あるものは黙々と口に運び続け、あるもは感想を述べ合っている。
僕らの隣のテーブルに座っていたイケてない高校生たち4人組は
特大のカキ氷4人分を銀のたらいに入れられたのをせっせと食べていた。
(頼んで写真を撮らせてもらえばよかったと後悔する)
「やべー。味わかんなくなってきてしょっぱくなってきた」
「水流が、水流が、・・・」などと言ってる。
その前に座っていたこれまた4人組は昨日万博帰りのようで、僕らと行動というか考えることは一緒。
万博で初めて名古屋に来て「裏名所らしいから」と
次の日マウンテンに来た若者たちは数多くいるのではないかと思われる。
緑色のスパゲティーや土鍋に入ったスパゲティーを食べている。
別の席へと店員が運んでいる大皿には
湯気を立てたクリームがべっちょりと乗っかってしかもそれが大きな山を成している。
僕ら4人にもメニューが渡される。無茶苦茶な種類がある。


【一目見てゲテモノとわかるもの】
 ・サボテンスパ
 ・納豆サボテン玉子とじ
 ・おしるこスパ
 ・甘口メロンスパ ※キウイ、イチゴ、バナナもあり
 ・甘口抹茶小倉スパ
 ・みそ煮込みスパ
 ・みそ納豆ピラフ
 ・マンゴスペシャル(辛口) ※カキ氷


【名前だけではよくわからんもの】 ※上6つはスパゲティー
 ・アラビアン
 ・ヤングスパ
 ・オリエンタル
 ・カントリー
 ・コスモスパ  ※コスモセット(卵・ライス付き)ってのもある
 ・インディアン
 ・マカライスペスカド
 ・ニワトリピラフ ※どうしてチキンピラフではないのだろう?


これ以外にも「一見普通のメニュー」が山のようにあった。
ドリンクやパフェもある。だけどどれも死ぬほど量があったりするんだろうな。
偉いことにこれらみな、500円から最高でも800円という値段。
なんつうか、良心的?


さて、では我々は何を頼もう?
「ここで全部食えるのはオカムラだけだね」と言われる。
僕も「こりゃ絶対完食しないとあかん。気合い入れねば」と心の中で思う。
「小倉抹茶スパ」もネタとしては面白いしこれが一番面白いが、
それよりも完食こそが大事。これを果たしてこそ男。
他の3人は「ナスカレースパ」「サボテンスパ」「みそ納豆ピラフ」とする。
さあ、どうしよう。要するに大食いの名に恥じないものであって、まずくないもの。
「ミートスペシャル」ってのがあって、普通のミートスパゲティっぽいんだけど、
スペシャルってところがかなりの大盛りなのかもしれない。地味だけどこれにすべきか。
ってところに店員が来てオーダーを伺う。
そこに「コスモスパ」ってのが一瞬目に止まって「これ、なんですか?」と聞いてしまう。
高校生っぽいオドオドしたバイト君が「すき焼きのスパゲティーです」と答える。
何も考えず「じゃあ、それ」と言ってる僕。しかも「あ、卵・ライス付きで」
ここでライスも行っとかなきゃ大食いじゃないね。


その後あれこれ喋ってるうちにスパゲティーが出てくる。
サボテンスパやナスカレースパ。この辺は見た目は普通のスパゲティー
量が3人前ぐらいあって麺が「茹で過ぎじゃねえか?」って疑いたくなるほど太いって以外は。
なお、サボテンスパはいたって普通のトマトソースのスパゲティで、
サボテンも言われなきゃピーマンと間違えそう。
僕はサボテンの触感としてヘチマやハスのようなものを想像していた。
(もちろん食べたことあります)
ナスカレースパは油ごってり、カレー粉どっちゃりって感じだった。


そして遂にコスモスパと生卵、ごはんが運ばれてくる。
土鍋に入った渦を巻くスパゲティーとすきやきのタレ。
具材としては鶏肉、白菜、ネギ、シメジ、ニンジン、コンニャク。
今更ながらというかようやくというか
「アア、こういう材料でもスパゲティが作れるのだなあ」と感心してしまう。
食べてみる。「うまい!」ってほどでもないがそんな悪くも無い。
主観的な純粋な食べ物という基準ではちっともうまくないが、
状況とかいろんなものを考慮した相対的な基準では「悪くないじゃん?」ってとこか。
生卵を落として半熟に固まったところは何気にうまい。
さあ、勝負は始まった。
すき焼きスパを前にして無心になる僕。何も言わなくなる。ひたすら麺を口に運んでいく。
こりゃいけんじゃないの?と思ってるうちになんなくクリア。
途中何のドラマも無く。額に汗が滲むことも無い。ベルトを緩める気にもならない。
もっと劇的なことが言えたらいいんだけどね。
でも、自分が勝負してるときってそういうものなんだよね。
ご飯の上に残った具材を乗せて食べる。これは素直にうまかった。
完食。この店では全部食べきることを「登頂」と呼ぶらしく、
1人で成し遂げると「単独登頂」となる。
正に今、淡々と「単独登頂」達成。
これでもう名古屋に関して思い残すことは何もない。
今にして認めるが、これまで認めまいと心の中で思ってきたが、僕は大食いだ。


カキ氷の4人組はいまだに四苦八苦していて、
その前の4人組は4皿登頂してさらにカキ氷を頼んでいた。
僕らは「・・・さっぱりしたもの飲みたいね」と言って店を出る。
帰る頃には駐車場はいっぱいになっていて、入店待ちの行列ができていた。
近くの大学のサークルと思われる男女や遠くから来た人たち。
(ナンバープレートを見ると全国各地から来てるのに不覚にも忘れてしまった。
 横浜から来たバイクだけ覚えている)
最後に店の看板の前で記念撮影。


なお、このマウンテンはオリジナルのCDを出していて、店で買うことができる。
(一頃「日本ブレイク工業」社歌で話題になった萬Zが作成のもの)


東京に戻ってきてもう何日にもなるけど、「マウンテン」でまた食べたくなる。
メニューが掲載されたHPを見ては「ああ、これも食べてみたい」「あれも食べてみたい」
そればかり。「マウンテン」のためだけにまた名古屋に行きたい!
というか今後名古屋に来るときは絶対「マウンテン」は外せない。