「アレグリア2」

昨日の夜、「アレグリア2」を見に行った。日本最終公演らしい。
ものすごく見に行きたくて自分でチケットを買った、というのではない。
会社の秋の文化イベントが今年たまたまこれだったので
せっかくの機会なので見に行ってみることにした、というだけだったりする。
毎年毎年その年の社会一般的に言って無難に話題な公演を見てきたわけであるが、
「マンマ・ミーア」「ブラスト!」なんかよりははるかにいい出し物だった。


場所は代々木公園の中の特設テント。サーカスはテントじゃないとね。
中に入るとステージの上には様々な仕掛けが吊るされていて
もうそれだけで「すごそうだなー」「すごいんだろうなー」と思ってしまった。
サーカスに心奪われるってのは人として大事なことですよね。


サルティンバンコ」だの「アレグリア」だの「キダム」だの、
雑誌の広告や電車の中やあれこれで目にしていたのでもちろん知っていたものの、
見に行こうという気持ちにはこれまでならなかった。
名前が風変わりなんで何かしらアーティスティックなイベントなんだろうけど、
それ以前に「モー娘。が「応援」してんだよなー」とか
「有名企業をスポンサーにつけて大々的に宣伝したらそりゃ観客も入るよ」とか
そういうのが目に付くので(否定的な意味で)「どんなもんだろ」と思っていた。


ま、つまるところこれはサーカスなわけですよ。
衣装や演出からなんとなくストーリーっぽいものが感じ取れるけど
単なるイメージの群れでしかなくてはっきりとしたメッセージはないし、
(プログラムを見たら「愚か者が王様を失う」というコンセプトがあった「らしい」)
一夜開けて思い出すのは、感触として残っているのはあくまでサーカスとしての技の部分。


サーカスとしては悪くないよね。
もっともっと奇抜なことをするのかと思ってたけど、意外にオーソドックスだった。
ごく普通のサーカス。空中ブランコやトランポリンや綱渡り、などなど。
もったいぶって「アレグリア」なんていう分かりにくいタイトルはつけなくてもいいのではないか。
こういう書き方をすると否定的に思われてしまうけど、
そもそものサーカスとしては十分面白かった。
自らの肉体を使って繰り出す技を極限まで磨いていって披露する、それをライブで見る。
「すごいよなあ」といちいち唸って
気が付いたら何が出てきても「うわー」と拍手してしまっていた。
あのバランス感覚、あの柔らかさ、炎でジャグリングをする度胸。
スポーツの試合を見るのとあまり変わらない。


「すげー」「すげー」と思いつつも、目の前で繰り広げられているあれこれが
子供時代に見たサーカスの記憶をノスタルジア的に再現させるような回顧的なものではなくて
あくまでコンテンポラリーな「アレグリア」ワールドな上っ面が全面的に広がっていて、
ふと冷静になったときに自分でもどう捉えていいかわからなくなってくる。
アレグリア2」を見てシルク・ドゥ・ソレイユの他の演目を見たくなるかというと
僕としてはそうじゃなくて、どちらかと言うと古きよきサーカスを見てみたいというほうに心が傾く。
日本のでも海外のでもどちらでもいい。
小さいときに旧ソ連から来たボリショイバレエの公演(確か、ボリショイバレエのはず)を見たことがある。
あの日のときめいた気分をもう1度味わいたい。
とりあえずサーカスを、なんでもいいからまた見たい。