12月23日、決行

大学の先輩の結婚が決まって、諸事情もあり、
来月の後半という年の瀬もかなり迫った時期に結婚式が行われることになった。
都内ではなく先輩の地元にて行う。羽田から飛行機に乗って、この日は泊まり。
今僕がいるPJでは「年末年始無し」という厳しい状況が生まれつつあるんだけど
上司と喧嘩してでもこれは行かなくてはならない。マジな話。
上の立場の人たちに「オカムラ、PJの事情分かってんのか?」とたしなめられたり、
やんわりと懇願されても、有無を言わさず全員出社となっても、
そしてそれがその人たちには大事な用件を全て断ってのことだとしても、
素知らぬ顔で当日は無視して羽田へ。
というかその前からずっと土日無しで疲れきってフラフラになっていても、
なんとか気力・体力を振り絞って朝早く起きて羽田へと向かう。


それぐらい僕にとっては大事な祝い事なわけである。
僕の人生に最も影響を与えた人を3人選べとなったら
なんの迷いも無くその名前を真っ先に挙げる。
僕が今ここでこうしてるのも、
映画を作り続けたり小説家を目指し続けているのも、
この人に負うところが非常に大きい。
先輩に出会わなかったら僕はそういうのの一切に興味を無くして
今ごろ普通の会社員になっていたかもしれない。
(まあ世間的には今の僕は「普通の会社員」ってことになるけど、
 内に秘めたものは全然違う)
僕の価値観の多くの部分を形作り、磨いていった人と言っていいだろう。


映画サークルの先輩にして寮の先輩でもあって、
いろんなことを教わり、喧嘩になったこともあり、
夜を徹してしょうもないことを話して、あれこれ相談に乗ってもらった。
上京してからの10何年間の思い出の数々が今、僕の中で走馬灯のように甦る。
無理やり酒を飲まされたこと、撮影に出かけたこと、
僕の撮影に来てもらったこと、終わって酒を飲んだこと、・・・などなど。
なんだか切ない気持ちになってくる。

    • -

前々から後輩たちから噂は聞いていたんだけど、
昨日正式に報告と結婚式への招待のメールが届いた。
正直、「ああ、これで時代が1つ終わるんだなあ」という思いで寂しくなった。
先輩は卒業後も映画への情熱を燃やし続け、映画団体を立ち上げて主宰していた。
それがみな30前後になってこれからどうしようかと
個人としても団体としても方向性に迷いが出てくる。
先輩の結婚(そして故郷に戻る)はその1つの答えのように思えた。
はっきりとした、後には戻ることのできない、答え。


僕らはこのまま過去を引きずって生きるのか、
それとも新しい時代に入っていくのか。
誰しもが過去にどっぷり浸かって生きていくことは無いものの、
新しい何かを求めつつ前を向いていくことになる、前を向いていかざるをえないものの、
何もかもがうまくいくわけではない。人によって引かされるくじはこの頃から千差万別になる。
そしてそのくじを引かされることのそもそもの徒労感で日々いっぱいになり、
これまでよりも僕らは、過去の思い出にすがって生きていくようになるのだろう。


少なくともそれぞれがもっともっと目の前の日々の生活に追われていくようになるのは確かだ。


これからの30年間は、これまでの30年間を食いつぶしていく。
僕らはこれから先、時々集まっては酒を飲みつつ
「あの時は楽しかった」「あの撮影でこんなことがあった」という思い出話を楽しむことになる。


先輩の門出にふさわしくない発言だということは重々承知しているが、
なんだかこの結婚式がその始まりとなりそうな気がする。


・・・なんて言ってたらいけないか。
後ろ向きなことを言ってても仕方がないので、この日は大いに飲むだけ。
そしてみんなと大いに笑うだけ。


映画は終わってしまったけど、そこから先も楽しかったよ。
何十年後かに、みんなでそう言い合えることを願う。