ニッポン小さな旅(鶴見線扇町編)1/2

Gazz ! で仲良くなった人たちと「大人の遠足」へと出かける。
横浜のキリンのビール工場見学とその後中華街に出てお食事。
そもそも言い出したのが僕だったこともあって、
見学の手配をしたり、中華街は「萬珍樓」の本店を予約した。
いつのまにかしっかり幹事。O型の宿命。


ビール工場見学は16時からで、
15時に京浜東北線の「新子安」駅に集合。
午前中は浜松町にて整形外科で首の牽引を受ける。
その間暇になるってことで、家に帰るのもなんだし、どっか行こうと思い立つ。
浜松町と新子安の間がいい。
昔常駐していた大森の、よく通っていたラーメン屋「一本槍」で味噌ラーメンを食べて
しながわ区民公園(しながわ水族館がある。仕事に行き詰るとよくここのベンチに座ってた)
でのんびりしようか。レコファンにも行って。
あるいは、川崎ってこれまで下りたことないので探索してみるか。
あれこれ考えてるうちにふっと思ったのは
JRの東京を中心とした路線図を山手線や中央線の車両の中で見上げてるときの
川崎辺りから右下に延びている黄色の用水路のようなあの路線、
いったいなんなのだろう?どんなとこなんだろう?
行ってみたくなる。
ものすごく寂れた、運河沿いの小さな港町を僕は想像する。
町工場と人のいない岸壁と、客のいない大衆食堂。
海が見れるなら、いいじゃないか。
あるいは超近代的な工業地帯か。普段人の立ち入らないような。


浜松町から京浜東北線に乗って鶴見へ。
箱根駅伝の中継所として名前はよく覚えている。
鶴見線という名前だけあって川崎からではなく鶴見から出ていた。
乗るにはいったん鶴見駅の中で自動改札を通らなくてはならない。
鶴見線の各駅は無人駅になるけれども「簡易SUICAを置いてあります」
みたいなことが注意事項として掲げられている。
なんだ?「簡易SUICA」って。SUICAじゃないの?
どっかで切符を買わなくちゃならないのだろうか?
見てるとみんな普通に手持ちの切符やSUICAで改札を通っていく。僕もそうする。


くぐり抜けた途端、単線・ローカル線的佇まいにいっきに包み込まれる。
僕がホームに入ったとき、ちょうど電車が入ってきたところだった。「扇町」行き。
僕は名前の雰囲気からして「海芝浦」ってとこに行ってみたかったんだけど、
ま、いいかと思う。扇町の方が目的地としては遠くみたいだったし。
鶴見線は終点が「扇町」と「大川」と「海芝浦」の3種類に分かれる。
中央線の終点が高尾や八王子や立川のように
同一線路上で「どこまで行くか」となっているのと違って、実際に行き先が異なる。
なので用水路のように路線が入り組んでいるわけだ。


時刻表を見てみると
10時台 00(扇町) 35(海芝浦)
11時台 00(扇町) 30(海芝浦)
となっていて、僕が鶴見に到着したのが10時45分頃。
ちょうど海芝浦行きが行ってしまった直後だった。
1時間に1本では仕方がない。諦める。
今何気なく「1時間に1本」と書いたけど、これってすごいよな。東京の近くとは思えない。
平日だと扇町行きは1時間に2本となって本数2倍。でもまだ、30分に1本。
なお、朝晩の行き帰りの時間帯は本数が増える。


周りをそれとなく見ると
カートに乳児を入れた若い奥さんがいたり、買い物帰りのようなおばさんがいたり、
バス代わりの市民の足といった感じだった。


時間が来て走り出す。
ものすごくゆっくり。さきほど乗った京浜東北線の半分以下?
扇町までの9駅を18分で走ることになっている。なのにこの遅さ。ほんとバスです。
国道、鶴見小野といった最初の駅でバラバラと降りていく。
この辺はまだ普通に町としての川崎の中。ヒップホップ系の落書きがあちこちにあったり。
でもそこから先、川(運河?)を渡ると風景が徐々にそれらしくなっていく。
ローカル線の田舎町、ベンチに座る高校生たちも第一ボタンを外して。
錆付いたような町工場と石油化学コンビナート。白い煙がたなびいている。
線路と平行して有刺鉄線やパイプが走る。
乗客も僕のような「旅行客」となる。
息子を連れたお父さんが何組か。あと、鉄道ファンか。
一駅過ぎるごとに風景はどんどん寂れていく。
人の住んでる気配がなくなって、
工場だけが取り残された町、という雰囲気になっていく。