「ブロークバック・マウンテン」「シリアナ」

昨日、会社の映画部で月次鑑賞会ということで映画を見に行った。
ブロークバック・マウンテン」と「シリアナ」場所は新宿。


見る前に昼は、MYCITYの7階にて食べる。
寿司屋のランチで「小樽丼」ウニ、いくら、ほたて、イカ、・・・
なお、MYCITY は4月から LUNIME になるようだ。

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1本目アン・リー監督「ブロークバック・マウンテン
アカデミー賞では惜しくも作品賞を逃したけど、
これってやはり同性愛をテーマにしてるから?
アメリカの保守さ加減ってのは揺ぎ無いね。


でもなあ。これってたまたま主人公の2人が
同性愛に捕われていたというだけであって、
本質はシンプルで切ない恋愛映画だよね。
出会いがあって、甘い時間が流れて、別れがあって、
それぞれの生活が始まってそこから逃れられなくなって、
再会して、人目を忍ぶようにして会うようになって、そして・・・
「ゲイだ、ゲイだ」ってそれがまず先に出てくるのはおかしい。
というかそれが先入観を与えるようならものすごくもったいない。
「えーでも、だとしてもただの恋愛映画でしょ?」って言う人がいたら
その「ただの恋愛映画」をきちんと作ることの難しさをまずは問いかけたい。
お手軽なB級ラブコメディーならばいくらでも世の中に溢れてるけど、
ブロークバック・マウンテン」ぐらいの高い質で
ストレートに恋愛映画を成立させるってことのいかに難しいか。
これって「ただの西部劇」「ただのアクション」を
ストレートに成立させることの難しさと一緒。


何度も言うけど質は恐ろしく高い。
脚本も、撮影も役者の演技も、
それを束ねてそっと後ろに立つ監督の演出も、どれをとっても完璧。
正攻法でここまで完成度の高いアメリカ映画って
クリント・イーストウッドの最近の2作
ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」ぐらいしかなかったな。
僕の見た限りでは。


ブロークバック・マウンテンは夏の日差しの強さも雪に閉ざされたときも美しく、
(CINEMA RISE 製作のプログラムは最初の20ページを映画からのショットに当てている。
 キャプションはなく、写真だけが続く。普通こんなことしない)
役者たちの緊張感の高い演技が最初から最後まで途切れることはなく。
一部の隙もない。
その隙のなさが見る人によっては「疲れる」かもしれない。
僕自身もう一回見たいという気は今のところしない。
あまりにも完璧すぎて、
最初の一回だけで全てを把握したような気分になってしまうから。
そしてそこで自己完結してしまいそう。


いや、もうこの映画については語ることは何もないです。
つっこむポイントがない。
劇場は満席。こういう映画に客が入ってるのはいいことだ。


あ、1つだけ気になることがあった。
これってゲイの人たちが見たらどんなふうに思うのだろう?
劇場にも男2人で来てる人たちが何組かいて、
ガタイが良かったりすると「・・・ゲイ?」と思ってしまう僕は偏見に満ちているのか。
見た後、自分たちに照らし合わせてあれこれ考えるのだろうか?
主人公2人の愛を貫く姿をうらやましく思うのか、
それとも襲い掛かる悲劇に身を重ねるか。


もう1つ。ジャック・ツイスト役のジェイク・ギレンホールって
どこかで見たことあるなあと思っていたら
忘れることのできない佳作「ドニー・ダーコ」の主人公だった。
(映画としての出来は今ひとつなんだけど、この作品のこと好きでたまらない)

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2本目はスティーブン・ギャガン監督の「シリアナ
(このタイトルにどうしても下品な想像をしてしまうと巷で評判の。
 みんな発想が小学生レベルだよな・・・)


内容は、パンフレットのイントロダクションからそのまま引用するけど
「石油をめぐるCIAとアラブの王族と
 アメリカ司法省とイスラム過激派テロリストの本当の関係」
ってことで、これが2時間の間ひたすらたくさんの人が出てきて
テレビのチャンネルを変えるがごとく細かくシーンが切り替わって、
中東の石油を巡って縦に横に何重にも張り巡らされた
複雑極まりない利害関係に絡め取られていく様子が展開される。


難しい。はっきり言って難しい。
中東情勢とアメリカにとっての石油会社(オイル・メジャーってやつ?)の位置付けが
初歩ながらも頭に入ってないとなんのことやら・・・、
ってのもあるんだけど、そもそも日本人が見てると
中東系の登場人物が出てきたときに
「これって兄だっけ?弟だっけ?」ってわからなくなってくる(僕だけじゃないはず)。
白人のオヤジにも、同じことが言える。
似たような50代の男性が出てきて判事だの重役だのでみんな偉いと
身なりも似たようなものであって、やはり判別できなくなってくる。


寝た。さすがに寝てしまった。
話が分からないわけじゃないし、
編集のテンポがよく、映像もスタイリッシュで見てて飽きない。
それでもウトウトせずにはいられない何かが、この映画にはある。


ティーブン・ギャガンって「トラフィック」で脚本だったんですよね。
そんでスティーブン・ソダーバーグが監督。
見てて何よりも思ったのは
「やっぱあの時期のソダーバーグは神がかってたなあ」ということであって、
トラフィック」も同じぐらいストーリーが複雑で
登場人物もロケーションも入り組んでいたのに、すっきり見ることができた。
「パズルっぽいなあ」と思わせる以前に
そもそも普遍的な一本の映画として見せ切ってしまう。
これってものすごく大事なこと。
監督としてのソダーバーグのやはりこれは頂点だ。


結局話は「石油はどうせいつか枯渇してしまうし、アメリカとしては
採掘できる間、中東の王族はひたすら浪費してるのが好ましい」
ってことなのだろうか。
その後国家が破産しようがお構いなし。搾れるだけ搾り取る。
怖い国だ、アメリカは。そりゃテロの標的にもなるよ。

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見終わった後、せっかくの新宿なので中村屋でカレーを食べる。
コールマンカレー。おいしかった。