本を出した出版社が倒産した その6(その後のこと)

4/6(木)10時から12時までの
説明会が終わると僕は1人地下に下りて、レストランで食事を取った。


外に出ると昼休みの日比谷公園
暖かな春の午後、大勢の会社員が食事をしたり同僚と楽しそうに話していた。
日差しが素晴らしく、新緑が眩しかった。


そのとき僕は世の中の何たるかを知ったように思った。
弁護士会館の中で過ごした2時間は強烈なインパクトのある出来事だった。
それと同じぐらい、平和な日比谷公園が僕の心に焼きついて離れなかった。
この人たちには今回の事件はなんの関係もない。
そしてそれが正しいことであって、
世の中というものは何事もなかったかのように、いつも通り穏やかに緩やかに動いている。
世の中の巨大な仕組みのようなものの存在を、僕は肌で感じとった。

    • -

この問題について話し合うために
mixi に承認制のコミュニティが作られ、僕も参加した。
意見や情報が積極的に交換されている。僕も知ってることを書き込んだ。
トピックの内容を見ていると最初の方で混乱が生じて、
被害者の会を結成するかどうか訴訟を起こすかどうかで意見の対立が見られたりした。
たぶん、こういうときどこにでも見られることなんだろうと思う。
とりあえず情報だけは無数に飛び交っている。
建設的かつ前向きに物事が進んでいくことを期待する。


amazonにて在庫で残っていた2冊の本もこの件が関係するのか、週末に売れてしまった。
これで僕の本はほぼ公に入手不可能となった。
他の書店サイトで在庫持ってるとは思えないし。


碧天舎について実は僕としてはそんな悪い印象は持っていない。
担当していただいた2人の女性の方はきちんと応対してくれたし。
(他の出版社を知らないのでどうにも比較できないけど)
そのうちの1人、編集の方は昨年のどこかの時点で退職のはがきを頂いた。
これは倒産の件とは全然関係ないと思う。
もう1人、企画の方は年明け後も残られていたようだ。
そして解雇された。
会社の経営状況についてどこまで知ってたのだろう。聞かされていたのだろう。
うすうす噂では聞いていても、正式なことは聞かされてないまま
突然の業務停止と自宅待機となったのか。


社長の非はどこまであったのかもよくわからないまま。
結局のところ「詐欺」だったのかどうか。
会社を立て直せると信じて最後まで粘ったのか。
ずさんな経営はそれ自体が罪なのか。
(まあ罪なんだろうけど。資本主義社会では)


僕は僕の本を倉庫から取り出すべきなのか、
それはどうしたらいいのか、わからずにいる。
(相談相手と情報源は mixi だけ)
そりゃやっぱ本は取り戻したい。
でも部屋に200冊とか300冊とか在庫を抱えることになったらそれはそれで困る。
おおっぴらにただで配って歩いたら、お金出して買ってくれた人に申し訳ない。
ほんと、どうしていいかわからない。


これから先、この事件はいったいどうなっていくのだろう?


mixi のコミュニティに入っている人が50人ぐらい、
先日の債権者説明会には350人が出席。
(地方在住で出席できない人も多かっただろう)
一方で amazon で入手で扱っている碧天舎の本が種類にして1200冊だったか。
つまりそれぐらい関係者はいるってことだ。
これから先、どういうふうに連帯して物事が進んでいくのか。
誰も「被害者」の全体像を捉え切れてないないようだし。
一部の血気盛んな人たちが切り込んでいくのか。
それとも集団として大きくなることで社会的な存在感を求めるか。
裁判を起こすにしても社会的な制裁を与えるのが目的となるのか、
それとも多少なりとも出版費用を回収するのが目的となるのか。


※4月9日の東京新聞でこの件、取り上げられていた。
 もちろん僕のこれまでのメモ書き程度の文章よりもよくまとまっている。
 本当に興味のある人はこの記事を入手して読まれることをお薦めします。


最後に。この件、破産管財人にしても代理弁護人にしても
年に何万とある破産の単なる1ケースでしかないんでしょうね。
ドライというかクールというか。
まあそういうふうに割り切って進めていかないと
法律の仕事は成り立たないんでしょうけど。