昨日の続き。日曜に見た押井守の「立喰師列伝」
映画部の後輩と一緒に見る。渋谷のシネクイント。
押井守って映画界では割と有名で話題にもよく上るんだけど、
アニメってこともあってその作品を見てる人は実は少ないのではないか?
という印象を持っている。
ただ単に僕が見たことないから勝手にそう思ってるだけですが。
これまでパトレイバーのシリーズって見たことないし、
その劇場映画化であって海外でも高く評価を受けたという「Ghost in the Shell」や
その後の「アヴァロン」も「イノセンス」も見ていない。
フィルモグラフィーの初期、タツノコプロ時代の「ガッチャマン」や「ゼンダマン」
その後の「ニルスのふしぎな旅」「うる星やつら」「スプーンおばさん」は
もちろん見たことあるけど、どれが押井守の演出した回なのかはわからない。
結論から言って「立喰師列伝」は、こういう僕のような人が見るべき作品ではなかった。
立ち食い蕎麦屋にふらっと現れては、その独特の存在感で圧倒し、
あれこれ能書きを垂れて結局は無銭飲食を成し遂げる、
そんな「立喰師」ってのが昭和の時代に存在した、という話。荒唐無稽が基調。
列伝ってことで「月見の銀二」「ケツネコロッケのお銀」「冷やしタヌキの政」など
ユニークなキャラクターが次々に紹介される。
それと共に戦後の闇市、昭和オリンピックといった時代の変遷が語られる。
復興をとげ、バブルへと突入していく日本ってのが裏のテーマ。
それはそれでまあいいんだけど、というか面白い設定なんだけど、
映画そのものが面白いかどうかってのは、どうかねえ。
映像は「スーパーライブメーション」という手法で、つまるところ紙芝居。
背景の画像に、デジカメで撮った画像を加工してはめ込んで動かす。アニメではない。
動きのある映像にしたかったら、コマ撮りした写真を並べるというだけ。
これで2時間見せきっちゃうのはすごいとは思うが、
その分映像としての情報量が減ってしまうから台詞でカバーすることになる。
ひっきりなしにナレーターがしゃべり倒す。
時代の状況であるとか、「立喰師」の振る舞いであるとか、その能書きであるとか。
休む間もない。それが「ついていけない」ってことはなくて
割と絶妙な匙加減で「多いかなー」と思わせるのであるが、
こういうのってそもそもどうか。
「写真の連続+語り」という構造の映画って誰でも思いついて実際僕も作ってみたんだけど、
(FLASHで映像作品を作る人が増えた今、こういうのかなり多そうだ)
見た人の評判ってよくないよね。長いものだと。動きがなくて飽きるとかそういうことで。
早い話長いよ、これは。
押井守本人もプログラムの中で「実は映画は前半で終わってるんだよね」と語っている。
ミモフタモナイ。
高度経済成長の時代を語り終えて、70年代になり80年代になってくる後半は単なるドタバタ。
立喰師とファーストフード業界とのどうでもいい攻防戦。
だったら1時間ぐらいの作品にして、昭和へのノスタルジアで一本筋を通せばよかったのに。
あと、これら立喰師ってのが実はそれまでの押井作品に出てきたサブキャラたちであって、
それを再集合させて主役を張らせたってところがなんだかなあと。
見る人が見れば「おお!ケツネコロッケのお銀だ!!」ってことになるのか。
押井守の全作品をマニアックに見ていれば見ているほど、余禄が大きくなる。
言ってみればマニア向けのボーナス。
だったらDVDで発売すればいいのであって、劇場公開するべきではない。これ全国?
「なんか話題みたいだし、映画見るか」って人だと「・・・何これ?」ってなると思う。
そしてそういう一見さんにとっても間口の広い、面白いもの足りえてるかといえば
動きの乏しい写真を無理やり動かして語り倒しているのだから、まず何よりも見てて疲れる。
押井守にしてみれば今回ものすごいやりたかったことの実現であって、楽しかったんだろうけど、
これは自己満足だ。それ以上でもそれ以下でもない。
立喰師を演じた人たちも押井守の周りで一緒に仕事してた人たちだって言うし。
プログラムでは最期にこう語って締めくくっている。
「この仕事を30年弱やってきて出会った真に愛すべき人間たちに出演してもらった。
彼らと同時代に生きられたことが嬉しい。映画という形で彼らの記憶を留めたかった」
よほどのファンでもない限り、見に行くべきではない。
僕はこれ、忘れることにした。
「Ghost in the Shell」には興味持ったけど。