オハイオ隊、遠征(その9)5/4シカゴのダウンタウンへ

シカゴの摩天楼(ジュンコのカメラから


駅の黒人の係員の人から親切な説明を聞いて、1 Day Pass を買う。5ドル。
(僕らがまごまごしていると近寄ってきて、ゆっくり説明してくれた)
地下鉄に乗り込む。
しばらく待ってると走り出す。
すぐにもブルーラインは地上に出る。ハイウェイに沿って、シカゴの街並みを走り抜ける。
まだ郊外を走ってるからか、シカゴの街は自然が多くて隙間が多いという印象を受けた。
理路整然と区画され、進化でもなく衰退でもない緩やかな生命活動が続いているような、
典型的なアメリカの都市。飾り気のないベッドタウン
一度地下に戻って潜り抜けると、ハイウェイから離れ、さらに都市っぽくなってきた。
というか恐らく貧困層が住むような崩れかけたアパートが連なっている区画に入った。
しかし殺気立ったりはしていない。
上半身裸の黒人がベランダで揺り椅子に揺られながらひなたぼっこをしているのを見かけた。
どこの家もレンガ造りで、地味な色をしている。それが道路の果てまで連なっている。


飛行機であまり眠っていないジュンコとタクは
電車の揺れが心地よいのか、すぐにも眠ってしまった。
僕はそのままダウンタウンまで行くことに決める。着いたら起こせばいい。
様々な人々が白人も黒人も乗り込んでくるが、みな普通の市民のようであって、怖くはない。
僕らのようなアジア人が乗っていても、好奇心の対象とはならない。
僕は窓の外の風景を眺める。


シカゴの地下鉄、バス、高架鉄道をひっくるめて「CTA」という。シカゴ交通局。
正しくは「Chicago Transit Authority」
この字面どこかで見たことあるなあと思っていて、帰国した今思い出した。
Chicago の1969年のファーストアルバムのタイトルだ。
「朝もやの2人」(If You leave Me Now)に代表される
AOR / バラードのグループとしてのChicago の姿はまだこの頃はなく、
若者的野心に満ちた、ギラギラとしたブラスロック。
現実を変えようという意識を持った、カウンターカルチャーとしてのロック。
そうだよ、シカゴって Chicago だよ。
その街を僕も歩いてみたんだなあと思うと、ものすごく感慨深い。
「ああ、この雰囲気に包まれた音楽だったのか」というのを実際に肌で感じることができて、
単なる洋楽のグループという位置づけを超えて、身近に感じられるようになった。
それにしてもすごい名前だよな。今思うと。
僕の知る限り、ニューヨークやロサンゼルス、あるいは東京や大阪という名前のバンドはない。
曲のタイトルの一部になることはまあよくあることだとしても、
よもやバンド名にまでしてしまうとは。
なんというかシカゴ独特の連帯感ってのがあるんだろうな。
シカゴって、同名の、有名なミュージカルもあるし。
不思議な街です。


ブルーラインダウンタウンの「Clark」駅に到着する。
下りてホームを歩き、人の流れに沿って階段を上って出口へ。
地上への階段があって、その先にはシカゴの繁華街。キター!!


まっすぐ南に何ブロックか下って行って、
Adams という通りに出たら西に歩いていけばシアーズ・タワーに到着する。
・・・のであるが、東西南北がわからない。
碁盤目状になっていてどっちにむかっていいものやら。
地図を広げていると親切なアメリカ人が近付いてきて、
シアーズタワーに行こうとしてるんだけど、どっちですか?」と聞いたら
方角を指差して、この通りをいくつ越えたら、曲がってさらに・・・、と詳しく説明してくれた。
親切な人に出会って、うれしい。


さっそく歩き出す。
様々な店が立ち並ぶ。洋服の店だったり、ダイナーだったり。
「Tokyo Lunch Box」という日本食のファーストフードの店があって気になった。
あんまりおいしそうではなかったけど・・・
珍しいところでは「Shoe Repair」を看板に掲げた店があって、
店の前半分のスペースはどうも靴磨きのためのものだった。
背の高い台が客の座るのを待っていた。


シカゴのダウンタウンを特徴づける高架鉄道
線路を軋ませながらすぐ頭上をゆっくりと通り過ぎる。
ダウンタウンを囲むようにして走るため「LOOP」略して「L」と呼ばれ、
今では逆にダウンタウンの中心部、囲まれた範囲のことを「LOOP」と呼ぶようだ。
この高架鉄道が絵になるんだよなあ。
線路も車体も古くて、かっこいい。交差した瞬間とか。
シカゴは高層建築が多く、このダウンタウンには数多くの、
モダンなデザインの高層ビルがあった。これもまたかっこいい。
その下を高架鉄道がかすめていくわけである。
大きくて新しいものと小さくて古いものとの対比ってとこか。


歩いていたらとある通りで通行人が倒れていて、
通りがかりの人だろうか、応急処置として人工呼吸を施していた。
僕らが通りを渡った頃、サイレンが鳴り響いて無茶苦茶大きな消防車が到着した。
救急車じゃなくて消防車。しかも日本で見かけるよりも倍の長さの。
そうか、救急車ってないのか、アメリカでは。
いや、違うぞ。テレビ番組で見たことあるぞ。
「とにかく緊急事態」ってことで通報した人が消防車を呼んでしまったのか。